とある青年の物語 〜kizuna〜


























小説トップ
§14 In the rain
eighty-fourth
AM9:30 ジム前 sideシルク

シルク《そうよ。 私達はトレーナーのポケモン なのよ。》

ユウキ達の登場によって、3対3の戦闘が幕を閉じた。

ユウキ、来たって事は全てが片付いたのね?

ライト「シルク達はさんにんで闘ってたんだね?」
フライ〈うん、お陰でいい運動になったよ。〉
スーナ〈目覚ましには丁度よかったよ♪〉

少年A・オルト「ユウキさん!? ユウキさんって考古学者の!?」〈客観的にみると、さんにんともいい感じだったな。〉

オルトの言う通りね。

スーナの動きはキレがあったし、フライは死角に上手く潜り込めていたわ。

ただ、私は空が曇ってるせいか、集中しきれていなかったわ……。

ユウキ「うん、確かに僕がそうだよ。」
少年B「どうりで俺達では全く歯が立たない訳だ……。」

少年達が納得って感じて頷いたわ。

リーフ〈僕達は2年以上旅をして、ユウキは一つ星のトレーナーだからね。〉
コルド《ユウキさんは一つ星のトレーナーですから。》

コルドがリーフの代弁をした。

少年達「「「一つ星ですか!?」」」
ライト「うん!それに、ここのジムもあと2箇所で制覇するんだって!」
シルク《もちろん、あなた達のスクールのジムも攻略済みよ。》

確か、カナズミシティーは2番目だったわね。

ライトと知り合ったのもこの頃ね。

……懐かしいわ。

ユウキ「………という事だから、僕達はそろそろ失礼するよ。」
リーフ〈調査もしないといけないからね。〉
フライ〈もう行くって事は、出発するの?〉
ユウキ「うん。まだ早いしね。」
シルク《だから、行くわね。 あと、勉強、頑張ってね。》

私は三人に振り向き際に微笑んで、ユウキ達と共にツリーの犇めく(ひしめく)熱帯雨林の町を後にしたわ。

………

AM9:35 天気研究所付近 sideスカイ

スカイ「……自分に出きること……か……。」

自分はさっきシルクさんに言われた事を考えながら曇天の空の下を歩いた。

自分に出来る事ね………。

一応自分は一般クラスの第2学年副担任で理科の担当……。

理科教師として教壇にっているけど、自分は[ラティオス]であって人間ではない。

自分達の種族は人間に姿を変える事で自らの身を守る。

でもその事で、一部の生徒に自分の正体がバレてしまった……。

こうなったら自分の事がスクール中に知れ渡るのも時間の問題………。

………他の人に暴かれるよりは自分でうち明けたほうがマシ……。

スカイ「………よし、こうなったら腹をくくるしかない。」

自分は決心し、空を仰ぎ見た。

自分にしか出来ない事……、それは生徒とそのポケモン達の仲を更に良いものにすること。

教師として………、ポケモンとして………。

これは人間に片足をつっこんでいる自分にしか出来ない事。

ショウ「………スカイ……先生?」
リョウタ「やっと見つけましたよ……。」
スカイ「? ショウ君にリョウタ君…、そんなに慌ててどうかしましたか?」

天気研究所に続く橋の真ん中で、自分が受け持つクラスの生徒に呼ばれて振り返った。

………自分の正体を知る2人、そして成績も優秀だ。

リョウタ「先生……、俺達、絶対に先生の秘密を話しませんよ!」
ショウ「だから、教師を辞めたりしないでください!」

可愛い教え子がまっすぐな瞳で訴えかける。

………そんなに心配しなくても、自分は辞めませんよ。

スカイ「その事ですが、心配しないでください。自分はまだ新米教師、君達にさえ、教えきれてませんから。」

自分は2人に心配をかけないように笑顔をつくった。

辺りに湿った空気が吹き抜ける……。

ショウ「よかったー。 なら、いろいろと聞いてもいいですか?」

自分の言葉を聞くと、2人はパッと明るくなった。

………無邪気な笑顔を見るとこっちも安心しますよ。

スカイ「構わないですよ。 ……ただ、一般の方に聞かれる訳にはいかないので、ついて来てください。そこで話しましょう。」

盗み聞きされると、本当に教師としての自分が終わりを迎えますからね。

ショウ・リョウタ「「あっ、はい。」」

2人も正直に頷き、歩き始めた自分に続いた。

………

数分後 sideスカイ

ショウ「………あっ、雨」

怪しかった空から、とうとう大粒の雨が降り始めた。

……いわゆる、スコールですね。

リョウタ「しかも強くなってきましたよ!!」
スカイ「………この木なら良さそうですね…。」

慌てふためく彼らをよそに、自分は一本の木の前で立ち止まった。

周りに人気(ひとけ)はないから、大丈夫そうですね。

ショウ「良さそうって、何がですが!?」
スカイ「見ていてください。」

慌てふためく2人を制して、自分は優しく語りかける。

そして目を瞑り、意識を集中させた。

光を纏い、姿が変化する……。

ショウ・リョウタ「「!?」」

そして光が収まり、本来の姿で浮遊する。

直後、正面の木に向かって、

スカイ《[秘密の力]!》

群がる枝の一部に、自分の爪で斬撃を当てた。

すると、広い空間につながる入り口が姿を現した。

リョウタ「[秘密の力]、ですか?」
スカイ《そうです。》
ショウ「でもどうやってあそこに入るんですか?」

2人は不思議そうに首を傾げる。

スカイ《こうするんです。[サイコキネンシス]!》
ショウ・リョウタ「「!!?」」

自分は超能力で2人を拘束し、浮かせた。

スカイ《安心してください。自分は知識はありますが、バトルは苦手なので威力は高くないですから。》

浮かせた彼らと共に、自分は大木の穴の中に入った。



ショウ「木の中って、案外広いんですね。」
リョウタ「それに、雨も振り込んでませんね。 ところで先生?先生って何タイプを持ってるんですか?」

大木の空間で、2人は感嘆の声を漏らした。

スカイ《自分はエスパーとドラゴンです。》

ここで、2人にかけていた技を解除した。

リョウタ「ドラゴンタイプを持ってるんですか?」
ショウ「ドラゴンタイプって、ユウキさんの[フライゴン]と同じタイプですよね?」
スカイ《正解です。》

2人は目を輝かせて自分に質問する。

………それもそうですよね。

ポケモンと会話する事自体、ほぼ不可能ですから。

伝説に準じた存在となると、尚更ですね。

…………このままいくと、2人のための課外授業になりますね。

スカイ《あと、今自分が使っている伝達方法もわかりますよね?》

自分は2人を見下ろして問いかけた。

………授業で教えた復習のつもりで。

ショウ「伝説のポケモンが使う[テレパシー]ですよね?」
スカイ《正解。 流石、ふたりですね。  ……復習はこのくらいにして、自分の事について話しましょうか。》

自分はすぐに話題を切り替えた。

リョウタ「はい。 先生はどうして姿を変えれるんですか?」
スカイ《自分の種族、[ラティオス]と、その♀の[ラティアス]の特殊能力です。 あと、自分の種族は♂、[ラティアス]は♀しかいません。》
ショウ「特殊能力、ですか……。なら、どうして先生は教師になろうと思ったのですか?」

矢継ぎ早に質問が飛び交う。

自分はそれに言葉を発せず、直接脳内に語りかけて答える。

喋っても鳴き声しか聞こえないですからね。

スカイ《単純に、教える事が好きだからですね……。 自分達の種族は姿を変えて人々の生活にとけ込むことで自らの身を守っているんです。》
リョウタ「でも、今後は大丈夫なんですか? 俺達以外にもその姿を見られていますよね…。」
スカイ《自分は、自分に出来る事をするだけです。 自分は一匹のポケモンであり、1人の理科教師でもありますから……。》

だから、自分は教師を辞めませんよ!

再び、光を纏う。

スカイ「なので、自分は教師を続けます。 自分がいれば、君達のパートナーとも会話ができます。 これが自分のすべき事だと思ってます。」

教師として、自分の決意を表明した。

リョウタ「………って事は、人の姿でもポケモンの言葉がわかるんですか?」
スカイ「はい。自分は元々ポケモンですからね。 ……ほんの一握りですが、ポケモンでなくても言葉がわかる人もいますけどね。」

ショウ・リョウタ「「えっ!?ポケモンでなくてもですか!?」」

2人は驚きで声が揃った。

スカイ「伝説に直接関わっている人ならわかるそうです。」

ユウキさんも、そのうちの1人ですからね。

その中でも、彼は更に特殊能力ですね…。

ショウ「伝説に………?」
リョウタ「という事は、伝説のポケモンを連れていたユウキさんは……。」

………流石、勘が鋭いですね…。

スカイ「……想像した通りです。 ユウキさんは伝説の当事者です。 だから、ポケモンの言葉もわかります。」
リョウタ「…………言われてみれば、闘ってたもらった時、ユウキさんのポケモンの鳴き声に答えていましたよ!」
ショウ「やっぱり、気のせいじゃなかったんですね!?」
スカイ「はい。……あと、この事は誰にも言わないようにしてください。 ユウキさんは有名人、おまけに考古学界の期待の新生ですから。」

自分はまっすぐ、2人を見て言った。

おそらくユウキさんも、この事はばれてほしくないはず………、言ってしまったけど………。

ショウ・リョウタ「「はい!もちろんです!!」」

2人はまっすぐな眼差しで答えた。

■筆者メッセージ
今回は、ユウキ達以外をメインにしてみました。
@ ( 2013/10/21(月) 00:44 )