とある青年の物語 〜kizuna〜


























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§13 A thick forest
eighty-second
AM9:20 ヒマワキシティー sideシルク

シルク・オルト〈ええ、わかったわ!〉〈任せろ!!〉

ユウキ、わかったわ!

こっちは任せて!

生徒達の誘導はコルドがいるから問題ないわね。

シルク〈スカイさん、リーフとライトが戦ってくれている間に安全な場所に行きましょ!〉
スカイ〈いや、でも……〉

私達の誘導にスカイさんは戸惑う。

ライトが心配な気持ちはわかるけど、あなたの身も危ないわ。

オルト〈ライトなら大丈夫だ。 それにリーフにユウキもいるからな。〉
シルク〈それに、スカイさんが思っている以上にライトは強くなってるから心配いらないわよ。〉

私は彼を安心させるため、笑顔で語りかけた。

スカイ〈………〉
オルト〈とにかく、行くぞ!〉
シルク〈スカイさん、早く!………仕方ないわ……、[サイコキネンシス]。〉

スカイさんはこの場を離れようとしない……。

私はやむを得ず立ち尽くすスカイさんに技をかけた。

スカイ〈!?〉

突然私に技をかけられ、彼は驚きで声をあげた。

シルク〈少しだから我慢して!!行くわよ!〉
オルト〈ああ。〉

私達はこの場をユウキ達に任せ、とりあえず走りだした。

リーフ、ユウキ、ライトの事は頼んだわよ!

………

五分後 sideシルク

オルト〈このあたりなら良さそうだな。〉

少し走って、私達は町の外れにたどり着いた。

………ここなら、大丈夫ね。

私は彼にかけていた技を解除した。

シルク〈そうね。人通りも少ないからね。 スカイさん、とりあえずあなたは姿を変えて!〉
スカイ〈……!あっ、はい。〉

放心状態だったスカイさんは、私の言葉でようやく我に返った。

オルト〈一応、野生の扱いなんだろ?だがら人間の姿に変えた方がいいと思うが……。〉
シルク〈バトルを挑まれたら厄介だからね。〉
スカイ〈……言われてみれば、そうですね。〉

私達に諭され、スカイさんは慌てて意識を集中させた。

たちまち[ラティオス]は光に包まれ、人の姿となった。

スカイ「自分は誰のポケモンでもないですからね。」
オルト〈まあな。〉

オルトは頷いた。

スカイ「…………ですが、今後の自分はどうなるんでしょうか……。」

スカイさんは思いつめた様子で呟いた。

……確かに、そうね。

正体もバレた訳だから…………。

シルク〈……もし私がスカイさんの立場なら正直にうち明けると思うわ。〉
スカイ〈ですが……、そうなると自分の教師としての人生が終わる気がするのですが……。」

スカイさんは神妙な様子で言葉を濁した。

私は彼を真っ直ぐ見つめる。

シルク〈私の考えだけど、人にしか出来ない事があるように、ポケモンでしか出来ない事もあると思うのよ。言葉がわかるから、生徒達のポケモンの質問にも答えられるはずよ。〉

私は持論を展開し始めた。

スカイ「自分達は別ですが、ポケモンに学問は高度だと………」
シルク〈いいえ、本人に学びたい意識が有るなら可能よ。〉

スカイさんの言葉を遮り、私は彼の意見に反論した。

オルト〈俺とシルクがその証拠だ。 俺はユウキから教わって文字の読み書きが出来るようになった。〉
シルク〈私は幼い頃にユウキと学んだから、化学の知識は誰にも負けないわ。……だから、少なからず学問に興味を持ってるひとはいるはずよ。………私達みたいに……。〉
スカイ「興味、ですが………。」

スカイさんは腕を組んで、私達の言葉を黙って聞いていた。

風が吹き抜け、辺りの木々がざわめいた。

……実際、私は質問したくても出来なかったから………。

当時は読み書きが出来なかったし……、当然といえば当然だけど……。

スカイ「………わかりました。自分に出来る事をするべきですよね。」

一度頷くと、暗かった彼の表情がかかっていた雲が晴れるように明るくなった。

スカイさん、その通りよ!

オルト〈だから、今出来るのは奴らから逃げる事だ。〉
シルク〈そうよ!〉

私達は大きく頷いた。

………

AM9:40 sideユウキ

ライト《だから、わたしは捕まらないよ!!》
ユウキ「僕達が護るからね。」

ふたりが頑張ってくれたお陰で、アルファとガンマの猛攻を退けれた。

ふたりとも、お疲れ様。

ガンマ「戻れ……。……何故お前はいつも俺達の邪魔ばがり……」
ユウキ「[絆]を壊される訳にはいかないからね。 [絆]といえば、“グリース”……特にアルファ、あなたの行為は許せません!」
リーフ〈そうだよ!姉さんをあんな目に遭わせるなんて……、僕は絶対許さないからね!!〉

彼らには伝わらないけど、リーフは怒りの感情顕わにした。

鳴き声で、感情だけはわかるはず………。

アルファ「[絆]? そんなの知った事か! 周りを蹴落としてきた私にとって、自分さえ良ければそれで十分。」
リーフ・ユウキ〈っ!! よくもそんな事を……。[リーフストーム]!〉「!!」

この人、絶対に他人(ひと)を思いやる心がないよ!

リーフは彼女の言葉にキレて深緑の嵐を発生させた。

アルファ・ガンマ「「!!?」」

二人は突然の事に対応出来ず、攻撃をまともに受けた。

ライト〈リーフ………。〉

あまりの事にライトは言葉を失った。

リーフ〈我慢できなくて……。〉
ユウキ「リーフが怒るのも無理ないよ……。リーフがキレてなかったら僕が姿を変えて[気合いパンチ]を使ってた……。」

[絆の賢者]として、許せないね、絶対に……。

ユウキ「でも、お陰でスカッとしたよ。」

僕は苦笑いで答えた。

リーフ〈………とりあえず、ここは片付いたからみんなと合流したほうがいいよね?〉

怒りが収まり、リーフは落ち着いた様子で提案した。

……そうだね。

ユウキ「うん。なら、リーフ、連絡頼んだよ。」
リーフ〈OK!〉

唖然としているライトの側で、リーフは蔓でマイクの電源を入れた。

………

同刻 sideスーナ

スーナ〈このあたりなら、大丈夫そうだね♪〉

ポケモンセンターから100mぐらいは離れたかな?

ウチらはユウキに頼まれて、センターの近くにたまっていた少年達を避難させた。

ウチとフライでは伝えられないから、先頭はコルドに頼んだよ。

コルドは[テレパシー]を使えるからね。

フライ・コルド〈うん!〉《みなさん、ご協力ありがとうございます。》

コルドは丁寧に頭を下げた。

やっぱり、[テレパシー]って便利だね!!

人とコミュニケーションできるから!

誘導された人達は散り散りになった。

ショウ「………先生は……どうして……。」
リョウタ「俺にも分からないよ………。どうしてですか………?」

少年2人は呆然とたたずんでいる。

何か言葉をかけてあげたいけど、伝わらないから………。

ウチは優しく翼で彼らの背中をたたいた。

スーナ・リョウタ〈コルド、頼んだよ♪〉「…? 励まして、くれてるのかな?」

コルド《はい、スーナさん。 事情を説明しますね。》

ウチとフライでは無理だから、たのんだよ♪

ショウ「事情……?」
リョウタ「事情って?」

2人は不思議そうに首を傾げた。

コルド《まず、襲ってきた二人組ですが、あの2人は簡単に言うと密猟者です。》
ショウ・リョウタ「「密猟者!?」」
コルド《はい、僕達、ポケモンを無差別に捕獲、密売する、冷酷な集団です。彼らは目的を果たす為には手段を選びません。》

コルドは一言ずつ区切って、丁寧に説明した。

ショウ「でも、どうしてスカイ先生が?」
コルド《彼に了承を得ていませんが、話しますね。さっき見た通り、スカイさんは[ラティオス]というポケモンなんです。一緒にいた彼女も、ポケモンです。》

今回は、仕方ないよね。

スカイさん、本来の姿を見られちゃったし、もう隠し通せないからね……。

リョウタ「本当、なんですね……。」
コルド《はい。2人は兄妹で、どちらも珍しい種族なんです。………僕と同様で。………彼らの種族は他に3匹ずつしかいないそうです。》
ショウ「珍しいって事は………、伝説の種族なんですか?先生、[テレパシー]使ってたから……。」

ここまで言ったら、もうわかるよね。

コルド《その通りです。 狙われた理由はそれです。》

2人はへぇーっていう感じで頷いた。

フライ〈…………とりあえず、説明した。は終わったね。〉
スーナ〈うん。 フライ?そろそろシルク達に連絡とってみない♪?〉
フライ〈うん、そうだね。 もう30分ぐらい経つし、決着がついているはずだからね。〉

シルク達がいるから、もう終わってるね!

リーフ『みんな、どこにいるの?』
シルク『あっ、リーフ?その様子だと終わったのね?』

ウチがマイクの電源を入れようとした時に、イヤホンからふたりの声が聞こえた。

リーフ『うん。相性は悪かったけど、何とかなったよ!』
オルト『ということは、あの[グラエナ]と[ヒヒダルマ]だったという事だな?』
スーナ〈確かに、リーフにとっては不利だよね♪ でも、シルク達も一緒じゃなかったの♪?〉

シルクとオルトって、ライト達の所に残ってるはずだよね?

シルク『スカイさんを安全な場所に連れていくように頼まれたのよ。』
フライ〈スカイさんって、確かライトちゃんのお兄さんだったよね?〉
スーナ〈うん、そうだよ♪ ちなみに、ウチらは町の西側にいるよ♪〉

昨日来た道をそのまま引き返すように誘導したからね。

……そっか、シルク達はスカイさんを……。

オルト『俺達は東だ。』
コルド〈結構離れてますね。〉
リーフ『………なら、ジムが丁度中間じゃないかな?』

ジム………?

ええっと、確か、そうだね。

シルク『なら、そこで落ち合いましょ!』
フライ〈じゃあボク達もすぐに行くよ!〉
リーフ『うん、僕達も!』

ここで、回線が切断された。

ジムだね!

スーナ〈……じゃあ、ウチらも行こっか!〉
フライ〈うんっ!〉
コルド《はい! あっ、さっきの事は極秘でお願いしますね。》
ショウ・リョウタ「「………あっ、はい。」」

コルドがぼーっとしている2人に一言伝えてから、ウチらはそこに向けて移動を開始した。



§13  End To be continued...

@ ( 2013/10/18(金) 23:18 )