eightieth
AM8:55 ヒマワキシティー ポケモンセンター前
「そろそろ来る頃だね。」
ユウキ達は約束の場所に来ていた。
「自由行動が始まるのが9時かららしいからね。」
〈そうだな。〉
〈ねぇ、今からするバトルが終わったら、それぞれ別行動にしない♪?〉
空に広がる雲の下、スーナが提案した。
〈それ、いいわね。〉
〈僕たちはここにはいない種族だから、たくさん闘えそうだね。〉
〈目立ちますからね。〉
〈ふたり組にしたほうがいいんじゃないかなっ?〉
フライは長い尻尾を動かしながら言った。
「そうだね。終わってから決めよっか。」
ライトがそれに続いた。
「うん。 あっ、説明が終わったらしいね。」
ユウキ達が話しているところに、沢山の少年、少女がセンターの入り口から続々と出てきた。
〈いよいよだねっ。〉
「あっ、ユウキさん、お待たせしました!」
「ショウが頼んだ人って、ユウキさんだったんだな!?」
何人かに混ざって、2人組の少年がユウキ達の方に歩み寄ってきた。
「大丈夫だよ。 君も相手しよっか?」
ユウキは昨日いなかった少年の方を見て言った。
「俺もいいんですか?」
「もちろんだよ。ダブルバトルでいいよ。」
〈2人相手なら、それがいいね♪〉
「「ありがとうございます!!」」
2人の少年は声を揃えた。
「じゃあ、リョウタ、俺達の連携プレー、見せてやろうぜ!」
「もちろんだ!」
2人は互いの[絆]を確かめ合った。
「アブソル、いくぞ!」「アメモース、頼んだ!」
〈任せろ!〉〈よし、いくで!〉
2人はそれぞれのポケモンを出した。
(アブソルと、こっちはおそらく虫タイプか……。)
「2人とも、君達が選んだポケモンで相手するよ。」
ユウキは実力の差を考え、こう提案した。
「なら、オレはこっちの大きいポケモンでお願いします。」
〈僕ですね。〉
ショウと呼ばれた少年はコルドを指名した。
「俺は白いポケモンの方で!」
〈俺だな。〉
リョウタと呼ばれた少年はオルトを指名した。
指名され、コルドとオルトは一歩前に出た。
「なるほどね。知っててかは知らないけど、タイプを偏らせる作戦かー。 先手は2人に譲るよ。」
「ありがとうございます。アブソル、[爪研ぎ]!」「アメモースは[シグナルビーム]!」
〈いくか!〉〈任せな![シグナルビーム]!〉
アブソルは自身の爪を研ぎすませ、アメモースは虹色に輝くエネルギーを溜め始めた。
「コルドは[神秘の守り]から[奮いたてる]! オルトは[波動弾]でコルドをサポートして!」
〈はい![神秘の守り]!〉〈了解した!コルド、ここは任せろ![波動弾]!〉
コルドの技により、オルトも光のベールに包まれた。
オルトは、手元に青いエネルギーを溜めて何発かうちだした。
その間にも虹色のエネルギーが凝縮、コルドに向けて放たれた。
〈オルトさん、お願いします![奮いたてる]!〉
〈わかってる!連射!〉「[噛み砕く]!」「[超音波]!」
〈ここから攻勢か!〉〈[超音波]!〉
〈[噛み砕く]ですか。ここは任せて下さい!〉「コルド、オルト、必要な時だけ指示するから、あとは任せたよ!」
コルドは志気を高め、アブソルはオルトとの間合いを詰めた。
オルトは技を中断しユウキの言葉に耳を傾け、アメモースは周波数の高い音波を発生させた。
〈技の効果を知らないと、っ! 勝てませんよ!〉
コルドは、オルトを飛び越して代わりに2つの技を受けた。
「狙いは外れたけど、ダメージを与えれた!そのまま[悪の波動]!」
「ショウ、ナイス!一気にいくぞ![虫のさざめき]!」〈コルド、背中を貸してくれ!俺達も攻めるぞ!〉〈アメモース!〉
〈了解したで! アブソルも! [虫のさざめき]!〉〈いいですよ!オルトさん、僕はもう一度強化してから参戦しますね!〉
両者共に、戦友と言葉を交わしあった。
アブソルは暗黒の波動を、アメモースは続けて不快な音波を発生させた。
コルドは暗黒の波動の前に走っていき、オルトはそのコルドを踏み台にして跳びあがった。
〈っ!よし!いきますよ![正義の剣]!〉「跳んだ!?[虫のさざめき]!」〈予備動作無しの[跳び跳ねる]!〉〈効いてない!?〉
コルドは接近していたアブソルに、何倍にも強化された角で切りかかった。
オルトは重力に身を任せてアメモースに突っ込んだ。
〈〈!!?〉〉
ふたりの物理攻撃は命中した。
「えっ!?一体何が!?」
リョウタは驚いたように言った。
「解説をすると、オルト……種族はコジョンドって言うんだけど……は、空中に跳んで[跳び跳ねる]を、コルド……種族はコバルオン……は格闘タイプの技、[正義の剣]で攻撃したんだよ。」
事の終始を見守っていたユウキがようやく口を開いた。
「[正義の剣]? ショウ、聞いたことある?」
「いや、初めて聞いたよ。」
2人は互いに顔を見合わせた。
「[正義の剣]は一部のポケモンにしか使えない専用技、僕が知る限り3種類のポケモンしか使えない技だよ。」
ユウキはこう解説した。
「「専用技?」」
疑問符が2つ浮かんだ。
「そうだよ。」
《種明かしをすると、僕の種族は今のところ僕しかいません。だから、僕は準伝説に位置します。 余談ですが、伝説のポケモンとそれに準ずる種族はそれぞれにしか使えない技を持ってるんです。 わかっていただけましたか?》
コルドはテレパシーで2人に語りかけた。
「「ポケモンが、喋った!?」」
「正確には、喋っているんじゃなくて、脳内に直接語りかけているんだよ。[テレパシー]は習ったかな?」
「えっ?はい。生物の授業で……。」
《これが、その[テレパシー]です。 あなた達は僕を選んで下さったので、ついてますよ。》
「伝説クラスのポケモンと会うのはほぼ不可能だからね。」
2人の少年は頬に痣のある青年の方をほぼ同じタイミングで見た。
「伝説……。でも、どうしてユウキさんが伝説のポケモンを連れているんですか?」
少年は核心に迫った。
「ちょっとした事情があってね。ここからは話せないよ。ごめんね。」
ユウキは2人に謝った。