とある青年の物語 〜kizuna〜


























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§13 A thick forest
seventy-sixth
PM3:30 ヒマワキシティー

「…………何はともあれ、良さそうな情報を教えてもらえてよかっね。」
〈リーフ達が見つけてなかったら未だに雨の中をさまよっていただろうな。〉
〈そうね。〉

ユウキ達はあの後、情報を整理しながら降りしきる小雨の中を歩き、10分程前に町に到着していた。

「……それにしても、ここはツリーハウスが多いんだね。」
「ほんとだね。 お兄ちゃんの家を思いだすよ。」 
〈造りは違うけど、そうだね♪久しぶりに会いたいなー♪〉
〈優しいひとだったからね。〉

ある街での出来事を思い出した。

〈そうですね。 あの時はまライトさんとはここまで仲良くなるとは思いませんでしたよ。〉
「そうだね。 あの時、私達があの森で出逢ってなかったらこんなに楽しくなかっただろうなー。」
「あの出逢いが今回の旅の始まりだったのかもしれないね。」
〈そうね。〉

ユウキ達はライトとの出逢いを回想していた。

10分後

〈ユウキくん、この建物ってジムじゃないかなっ?〉

町の木々を抜け、ユウキ達は見覚えのある建物の前に来ていた。

〈この町にもあったのね。〉
〈ユウキ、さっそく挑戦しない♪?〉
〈俺も賛成だ。〉
〈うん。フライ、今回はフライが闘うのはどうかな?〉

リーフはフライのほうを見て提案した。

〈うんっ、やってみるよっ!〉
〈フライは今回がデビュー戦ね。〉
「そうなるね。 じゃあ、次のメンバーはどうする?」

今度はユウキが全員のほうを見て言った。

〈何タイプのジムかわからないから、ユウキの判断に任せるよ。〉
〈ウチらは色んなタイプの技を使えるから、よっぽどの事がない限り大丈夫だね♪〉
〈そうですね。〉
「うん。わかったよ。」
〈だからユウキ、俺達はもういつでも闘えるから、ボールに戻してくれるか?〉

〈うんっ!準備できてるよっ!〉〈フライ、張りきってるね。〉

「特訓の成果が試せる良い機会だもんね! みんな、頑張ってね!」

ライトは志気を高めている全員にエールを送った。

………

PM3:45 ヒマワキシティー ジム

「すみません、ジム戦お願いします!」

ユウキは建物の奥にいるであろうジムリーダーに聞こえるように声を張り上げた。

「あっ、はい。まだ終わったばかりなので、正規のメンバーではないですが、いいですか?」
「はい。 お願いします。」

コルドに負けないぐらいの敬語を使った、落ちついた女の人が姿を現した。

「メンバーが足りないので、使用ポケモンは2体でいいですか?」
「はい、大丈夫です。」

ユウキはジムリーダーの要件を承諾した。

「なら、ヒマワキシティージムリーダー、ナギが全力でお相手します!」
「こちらこそ、お願いします!」

両者共に一番手を出し、ユウキの14回目のジム戦が幕をあけた。

「[絆]の名に賭けて、フライ、いくよ!!」「オオスバメ、全力でいきますよ!!」
〈うんっ!もちろんっ!〉〈久しぶりの実戦、いきますよ!!〉
「飛行タイプかー。なら、まずは[超音波]!」「フライゴンですか。[高速移動]!」
〈いつもの先方だねっ?〉〈はい![高速移動]!〉

フライは接近を開始した。
オオスバメは身軽に動き、素早さを高めた。

「これは厄介だな………。フライ、出す前に[岩雪崩]!」

〈!? うんっ![岩雪崩]!〉「[岩雪崩]!?オオスバメ、かわして!!」

〈岩!?〉

ナギはとっさに指示をだした。
ユウキは急に技を変更した。
オオスバメの頭上にいくつもの岩が出現し、雨のように降りそそいだ。


〈一度でもあたったらマズいですね……。〉
(完全に気がそれてる。………いまだっ!)
〈[超音波]っ!〉

オオスバメは斜め上に飛びながら岩石の雨をかわした。
フライはそれとは正反対に、低空飛行でオオスバメの背後に回りこんだ。

〈しまった!?〉

フライの作戦が成功し、オオスバメは混乱状態となった。

「まさか、[岩雪崩]は気を逸らすために?? オオスバメ、距離をとって!!」

〈見えない!? はい!〉「退かせませんよ!フライ、ここからは任せるから追撃して!」

〈ボクが好きにしてもいいんだねっ?なら、[目覚めるパワー]!〉

オオスバメは空中で体勢を崩しながらも後退した。
フライは手元に群青色のエネルギーを溜めながら接近した。

「一か八か、[ツバメ返し]!」〈いくよ!!〉
〈…よし!治った!っ![ツバメ返し]!〉

フライは手元の群青色の弾を放ち、命中させた。
オオスバメは混乱から復帰し、技を受けながらも急速に加速した。

〈えっ!? くっ![ドラゴンクロー]!〉

フライは不意をつかれ、急所に技を受けた。
高い威力の攻撃に耐え、青暗色のオーラを纏った両手でオオスバメを切り裂いた。

〈急所に当たったのに、っ! 倒れ……ない!?〉

〈さすがに…急所に当たると…厳しいよっ……。でも、……[ドラゴンクロー]!〉
「ドラゴンタイプ、一筋縄ではいかないですね…。[鋼の翼]!!」

〈はい……。[鋼の翼]!〉

オオスバメは自身の翼を硬質化させて接近した。
フライも構えて正面から迫った。

〈…………と見せかけて、〉
〈えっ!?〉

フライは突然高度を落として、オオスバメの視界から消えた。
すぐに背後にまわり、

〈[超音波]!〉

高周波の音波を発生させた。

「〈不意打ち!?〉」「フライ、ナイス!」〈形勢逆転だねっ![岩雪崩]!!〉

オオスバメは再び混乱状態となった。
フライはすぐに岩を出現させた。

〈また!? !!!〉

視覚からの情報を奪われたオオスバメに岩石が直撃した。

「オオスバメー!?」

相手は耐えきれずに墜落した。
砂煙が上がり、晴れるとオオスバメは目を回していた。

「あなた……」
「名乗るの忘れてましたね。僕はユウキと言います。」
「ユウキさん、殆ど指示してなかったのに……」

ナギは戦略の見事さに言葉を失っていた。

「これが[絆]の力です。フライ、お疲れ様。下がってて。」
〈うんっ。 [ツバメ返し]が急所に当たったのは…誤算だったよ……。〉

フライは飛び上がり、ユウキの後ろについた。

「[絆]……ね。 次、いきますよ!!」
「はい!」

「トロピウス、お願いします!」「スーナ、今回は最初から任せるよ!!」

〈もう僕が出るしかないなー。よし!〉〈うん♪なら、最初から全力でいくよ♪!〉

互いに二番手をだした。

「[成長]!」〈ウチのスピードについてこれるかな♪?[アクアリング]!〉

トロピウスは意識を高めた。
スーナは高度を上げながら水のベールを纏った。

「ユウキさん、珍しいポケモン持っているんですね。[エナジーボール]」
「僕は元々イッシュで活動してましたから。」
〈うん。〉

トロピウスは口元に翠のエネルギーを蓄え始めた。
その間にスーナは速度を上げていく。

〈[エネルギーボール]!〉([エナジーボール]……なら…)

〈[ハイドロポンプ]!〉

相手は翠の弾を放ち、対して少量の高圧水流を放った。

([アクアリング]をしてるから、大丈夫かな♪?)
〈よし♪!〉

翠の弾はコーティングされ、黄緑色に変色した。
スーナは速度を維持したままそれに接近した。

〈っ! やった♪打ち返せた♪!〉

タイプの相性により、反応が始まった弾丸をスーナは翼で打ち返した。

「「〈えっ!?〉」打ち返した!?」〈今のうちに、[ハイドロポンプ]!〉

弾は二色に別れ、水滴を中心に翠弾は螺旋運動を始めた。

〈[ブレイブバード]!〉

スーナは、相性が見とれている間に自身が放った水流に、淡い光を纏いながら突入した。

「はっ、[突し……]」〈草タイプなら、これで最後のはず……〉

〈!?目の前に!? っ!! 見とれていなかったら………こうならなかった……はず………。〉〈くっ!〉

トロピスは技を受けて体勢を大きく崩した。

〈あっ! 退かないと♪!〉

スーナは慌ててその場から退いた。

〈!!そうだった!?〉

スーナが飛び上がると、螺旋運動をする翠をが目前に迫っていた。

〈かわせない!?っ!……〉

トロピウスは崩れ落ちた。

「………負けた……。手も足も出なかった……。」「スーナ、お疲れ様。」

スーナの時間差攻撃により、バトルは幕を閉じた。

「……これも規則なので、バッチを渡しますね。」
「はい。ありがとうございます。」

ユウキはバッチを受けとった。

@ ( 2013/07/08(月) 00:05 )