とある青年の物語 〜kizuna〜


























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§12 The new supporter
seventy-second
AM9:20 キンセツシティー

「ルビーさん、すみません!遅れてしまいました。」〈……ふぅー、やっと着いた……。〉

集合時間から遅れること20分、カエデがピジョットに乗って登場した。

「カエデくん、急に呼び出して悪いね。距離があったから仕方がないよ。」
「ルビーくん、この人が調査をしている考古学者なんだね?」

ミツルはカエデの方を見ながら言った。

「ルビーさん、この人が昨日言ってた協力者やな?」
「うん、そうだよ。」
「はじめましてだね。僕はミツル、ただの旅のトレーナーだよ。」
「よろしくな。俺は考古学者のカエデや。」
〈これで全員揃ったね。〉
《そうですね。 ミツル、人の少ない路地裏にでも行きましょうか。》
「そうだね。ルビーくん、カエデくん、ライトさん、皆さんで手を繋ぎあってください。」

ミツルは全員いることを確認してから左手をさしだした。

〈えっ?手を?〉
〈誰かの身体に触れるだけでも良いかしら?〉
〈はい。触れているだけで十分です。〉
〈わかったよ。なら、僕は蔓にするよ。〉

「これでいいのかな?」〈とりあえず、やってみよっかっ。〉

「そうだね。」
「皆さん、繋ぎあいましたね?」
「ああ!俺も、大丈夫やよ。」

ミツルは全員が触れあっていることを確認した。

《わたしが言うまで絶対に放さないでください。》
「放したら、安全は保証できないからね。」
「「〈〈???〉〉」」

ミツル、ミンク、ルビーを除く全員の頭上に疑問符が浮かんだ。

「皆さん、いいですね? ミンク、頼んだよ。」
《ええ。 [テレポート]!》
「「〈〈〈〈〈〈〈〈!!?〉〉〉〉〉〉〉〉」」

ミンクが技名を言った瞬間、全員は淡い光に包まれた。
一瞬強くなったかと思うと、すぐに発散した
光が消えたあとには誰もいなかった。

………

AM9:35 シダケタウン

《皆さん、もう放してもいいですよ。》
「? ここは?」
〈どこかの町?かな♪?〉
〈のどかな町だねっ。〉
「花がたくさん咲いてて、いい雰囲気だね。」
〈僕はこういう所が好きだよ。〉
〈リーフは自然豊かな場所がお気に入りだったわね。〉

ミンクの技によって、ユウキ達の見知らぬ土地にワープした。
町一面に花畑が広がり、空気が澄んでいる。

《ミツルさん、ここはどういう町なんですか?》
「ここはシダケタウンと言って、僕の生まれ故郷だよ。 ここなら人も少ないから、ちょうどいいかな、と思ったんです。」

ミツルは穏やかな表情で言った。

〈確かに、ここなら大丈夫そうだね。 シルク、ここで姿を変えるよ。伝えてくれる?〉
《ええ、わかったわ。 ミツルさん、ここなら大丈夫そうだから、さっき言ってた事を説明するわ。》
「君達のトレーナーの事だね? うん、話して。」
《私達のトレーナーは既にこの場にいるわ。》
「えっ!? でも、どう見ても僕とルビーくん、カエデくん、ライトさんの4人しかいないけど!?」

ミツルは耳を疑い、シルクの方を見た。

《それは、今は人間の姿でないからよ。 私達のトレーナーはイッシュの伝説に関わっている関係で、普通の人とは違って特殊なのよ。コルドがエスパータイプでないのにテレパシーが使えるのは、こういう理由だからよ。》
「伝説!? 伝説って……」
《話が逸れたわね。》

シルクはまごついているミツルに構わず話を進めた。

《本題に戻ると、私達のトレーナーはこのピカチュウよ。 ユウキ、説明は終わったわよ。》
「えっ!?このバンダナをしたピカチュウが!?ルビーくん、本当なの!?」
「わからないよ。本人から直接聞いていたけど、実際に見るのは初めてだよ。」
「俺も同じやよ。」
〈シルク、説明ありがとね〉
《これから起こることは、たぶん非現実的な事だから、心して下さい。 ユウキさん、お願いします。》
〈うん。〉

3人の視線が一斉にピカチュウに向けられた。

突然ピカチュウの姿がレンズの焦点がずれたように歪みはじめた。

「「「〈〈えっ!?〉〉」」」

3人はあまりの光景に開いた口が塞がらない。
ミンク、ピジョットも同様に目を見開いていた。

歪は収まったが、そこにピカチュウはいなかった。
代わりに、左腕に同じ青のバンダナをして右頬に火傷の痕がある青年がそこにいた。

「やっぱり、驚きますよね。 僕は考古学者のユウキです。一応、これでも1つ星のトレーナーです。」

ユウキは驚いている3人に、簡単に自己紹介した。

《単刀直入に言うと、こういう事よ。》
「ユウキくん、君って一体……。」
「これも[絆の証]の効果なんやな!?」
「うん、そういうこと。 あと、ピカチュウの姿でなくてもポケモンの言葉がわかるので……」
「ユウキ、ピカチュウになれるってことは、戦ったことは、あるんやな?」

カエデは子供のように目を輝かせてユウキに質問した。

「えっ!?うん。」
《ユウキさんは僕達に負けないぐらい強いんです。》
〈油断すると僕でも負けるからね。〉
〈ユウキは3種類のタイプの技を使えるからね♪ウチもそうだけど。〉
「そうなんやー。 どんな技を使えるんや?」
「…[10万ボルト]、[目覚めるパワー]、[気合いパンチ]、[エレキボール]だけど………。」
「「「〈〈〈〈〈〈〈〈…………〉〉〉〉〉〉〉〉」」」

カエデの迫力に全員言葉を失っていた。

5分後

「………なる程な。」
「………気が済んだ?」

あれから、ユウキはカエデの質問攻撃の被害を被っていた。

「………終わった?」
《そのようね。》
〈長かった……。カエデ、好奇心が……。〉
〈カエデの悪い癖だから、仕方がないよ。〉

ピジョットが大きな独り言を言った。

「カエデの気が済んだみたいだし、本題に入りましょうか。」
「そうだね。 カエデくん、あの後の調査でわかった事はある?」

ルビーは落ち着きを取り戻しつつあるカエデに聞いた。

「俺は、[岩の封印石]の場所やよ。[石の洞窟]で見つけたんやけど、一歩遅くて[グリース]の幹部に奪われた……。確かイータとか言っていて、カントーのポケモンを使っとったよ。」
「なるほどね。ユウキ君のほうは?」
「僕は[封印の鍵]と[鋼の封印石]です。[封印の鍵]の場所は110番道路の水中にある[キンセツ]の洞窟]という場所で、[鋼の封印石]は[デコボコ山道]にある洞窟の奥地にありました。どっちも守っているポケモンがいたので、盗まれる心配はないと思います。」
「ユウキ君の方はかなりの収穫があったらしいね。」
「はい。どっちも極端な気候で、常人では近づく事もできないと思います。ポケモンは別だと思いますが……。あと、僕も[グリース]の一団に遭遇しました。1人はベータと言って、ジョウトのポケモンを1人はガンマと言って、ホウエンのポケモンを、もう1人はアルファと言って、イッシュのポケモンを使ってました。 3人共幹部です。」
「ユウキも組織の人間に会ってたんやな。」
「うん。 ルビーさんはどうですか?」
「僕はトクサネシティーの近くの[浅瀬の洞穴]って言う場所の奥地、干潮の時にしか行けない場所で[氷の封印石]を発見したよ。 僕は幹部クラスの人に会わなかったよ。 ユウキ君の方みたいに、守っているポケモンはいなかったよ。」
《…………だいたいわかったわ。》
〈幹部は各地方のポケモンを連れていたってことは、もう1人いる可能性があるな。〉
〈その可能性は高いねっ。〉
〈残りは……シンオウ地方だね♪〉
「オルトの言う通りだね。たぶん。」
〈ライト、オルトの勘は80%ぐらいの確率で当たるから、ほぼ確実だと思うよ。〉
〈リーフ、そんなに当たるのっ?〉
〈うん。〉
《みんなの考えをまとめると、幹部は5人いて、もう1人はシンオウのポケモンを連れている可能性があるって言っているわ。》
「なるほどね。 万が一全員と戦闘になったら、1人足りないね。」

シルクの発言を聞き、ミツルは心配そうに言った。

「そうやな。 でも、俺を含めて全員星を持ってるから大丈夫やと思うよ。」
「確かに、そうだね。」
《ミツルさんは2つ星なので、尚更ですね。》
「うん。」
《これで持っている情報は全部ね。》

シルクがこの場をまとめ、情報交換が終了した。

@ ( 2013/07/04(木) 18:07 )