sixty-eighth
PM0:05 カイナシティー ビーチ 水中 sideスーナ
〈凄い!!水の中でも息ができる!〉
〈でしょ♪!あと、水の中でも会話ができるはずだよ♪〉
〈あっ、そういえば、できてる!?海の中なのに!?〉
〈ニトル、これが俗に言う[水タイプの恩恵]だよ♪ウチの場合、純粋な水タイプでも、水中で生活する種族でもないから10分が限界かな♪ たぶんニトルは練習すれば、1時間ぐらい行動できるようになると思うよ♪〉
何一つ音のない空間で、スーナとニトルは自由に泳ぎまわっている。
〈そうなんだー。 なんか本当の自分にやっと出逢えた気分だよ。今までは重くのしかかるような感じだったけど、今は水が命の源になっているような感じ、凄く気持ちがいいよ!〉
〈ニトル、もう完全に水タイプになれてるよ♪〉
〈本当に!?〉
〈うん♪ ニトル、一度水面に上がろっか♪(正直、ちょっと苦しくなってきたからね…。)〉
〈そうだね。〉
スーナとニトルは、浮力に身を任せて浮上していった。
1分後 ビーチ
〈スーナさん、ぼく、水タイプにして良かったよ。〉
〈でしょ! 水タイプだと、行動の幅が広がるでしょ♪?〉
〈うん!〉
〈とりあえず、みんなの所に戻ろっか♪〉
〈そうだね。〉
ふたりは波打ち際まで泳ぎ始めた。
〈ニトル、どうだったっ?〉
そこにフライが飛んできた。
〈凄く楽しいよ!! 何か解き放たれた感じだよ!〉
〈その感じ、わかるよっ!ボクも進化して飛べるようになった時は、世界が変わったようなきがしたよっ!〉
〈やっぱりそうなんだね! あっ、足がついた。〉
〈ニトル、水の世界はどう?〉
戻ってきたところで、ライトが聞いた。
〈今まで味わった事がない、不思議な感じだったよ!! もう大感動だよ!〉
ニトルは目を輝かせている。
〈楽しんできたみたいだな。〉
〈今では完全に水タイプですね。〉
「ニトル、おかえり。」
〈ただいま。ユウカ、ぼく、水タイプにして正解だったよ!〉
《水タイプにして良かった、と言っています。ユウカさん、ニトルさんも戻ってきましたので、さっそく技マシンを使ってみたらどうですか?》
「うん。せっかくだからね。ニトル、どうする?」〈えっ?技マシン?いつ買ったの?〉
ニトルは驚いたようにユウカのほうを見た。
コルドはテレパシーを使って、ユウカに提案した。
〈ユウキさんに買ってもらったの。〉
〈そうなんだー。ツバキ、どんな技なの?〉
〈リーフさんに聞いたんだけど、[水の波動]らしいよ。〉
〈水タイプの技だね? うん!お願い!〉
ニトルはユウカの方を見て大きく頷いた。
「使って欲しいんだね?うん、わかったよ。ちょっと待ってて。」
ユウカは自分の荷物の中から先ほど買ってもらったディスクを探し始めた。
同刻 sideユウキ
「時間的にそろそろかな?」
ユウキは左腕の腕時計に目をやった。
長針が<3>を指していた。
「あっ、いたいた。ユウキくん、お待たせ!」「ベル、置いていかないでくれー!」
「ベル、来たね。」
街の方から、ベルが走ってやってきた。
その後ろから、ベルの両親と思われる人物が走ってきた。
「あれ?ユウキくん1人だけ?」
「ううん、みんなは波打ち際で楽しんでいるよ。 あっ、ベルの御両親ですね。はじめまして、考古学者のユウキといいます。元は同じ町なので、ご存知ですよね?」
ユウキは律儀に一礼した。
「半年前は娘が世話になったみたいだね。 君の事はベルから聞いているよ。サイン、貰ってもいいかな?」
「お父さん、サインだなんて……」
「いや、構わないですよ。色紙がないので、ノートの切れ端でいいですか?あと、あまり大声を出さないでいただけますか?騒がれると厄介なので……。」
「………はい。」
ユウキに言われ、子供のようにはしゃいでいたベルの父親は、少し小さくなった。
「……そんなに気を落とさないでください。 はい。サイン、できました。」
ユウキはノートの1ページに書き込み、そこを破り、手渡した。
「お父さん、もういいね? ユウキくん、案内してくれる?」
「うん。みんな揃ってるから、ついてきて。」
「うん!」
ユウキはベル一行を引き連れて、シルク達のもとに戻った。
………
PM0:35 ビーチ
「みんな、お待たせ。」
〈ベル、待ってたわ。〉
「うん。お待たせ!」
ユウキは全員と合流した。
「あっ、ユウキさん、この人がさっき言ってた人ですか?」
「そうだよ。 言ってなかったけど、ベルも僕と同じ[三賢者]だよ。」「ユウキくん、この子は?」
「ベルさんもですか!? 確かに、ユウキさんと色違いのスカーフをしてるから……そうなのかな?」〈彼女はユウカと言って、私達が時々バトルの指導をしている新人のトレーナーよ。〉
「ベル!?その[三賢者]ってなんだ!?」〈ユウカはもう4つのバッチを持っていて、でもそれ以上の実力を持っているんだよ。〉
「そういえばいってなかったね。船の中で話すから、後にして。 ジャローダ、話し方変わったね。」
〈あの後、いろいろあったあら、ちょっと説明が難しいかな?〉
「何かあったんだね? で、こっちが保護したって言ってたジャローダだね?」
〈うん。僕の姉さんだよ。ちょっと訳があってね……。〉「会話、成り立ってるのかな?リーフ達の鳴き声に応えてるから…。」「ベル、独りで呟いて、一体誰と話しているんだ?」
「うん、そうだよ。イッシュに戻る時に連れてってくれる? あと、今は一応<野生>の状態だから。」
「[ホワイトフォレスト]だよね? ここが最後の目的地だから、その時にするよ。」
「うん。」
「ベルさん、あなたもトレーナーですよね?」
「うん。そうだよ。」《あっ、ベルさん、来てたんですね?》
「ベルさんのポケモン、見せてくれますか?」「!? ライトさん、今はポケモンの姿なんですね?」
「もちろんだよ!みんな、お待たせ!」
ベルは3つのボールを手に取った。
〈待ちに待った海だ!水タイプとして、一度来てみたかったんだよねー。〉
〈私もです!〉
〈海、初めてだなー………。広い……。〉
「ツバキ、クロム、ニトル、ちょっと来て!」「!?ビリジオン!!?」
ユウカは遊んでいる自分のメンバーを呼んだ。
ベル父はというと、自分の娘が出したポケモンに驚き、腰を抜かした。
〈?わかったよ。〉〈ユウカ、どうしたの?〉〈呼んだ?〉
ユウカに呼ばれ、三匹はユウカの元に走ってきた。
「私のメンバーはこのさんにんです。左からジュプトルのツバキ、コドラのクロム、シャワーズのニトルです。」
〈私はユウカの最初のメンバーのツバキです。〉
〈コドラのクロムって言うんだ。よろしく。〉
〈ぼくはニトルです。よろしくね!〉
「私のメンバーは右からダイゲンキ、ビリジオン、リーフィアだよ。 あと、年近いと思うから、タメ口でいいよ。」
〈俺は、最初のメンバーだよ。よろしく。〉
《私の種族はビリジオン、準伝説です。コバルオンと同じ位置付けと言えばわかりますね?あなた達の名前はニックネームかしら?》
〈……よろしく…。〉
〈私達のは固有の名前です。〉
ダイゲンキは堂々と、ビリジオンは丁重に、リーフィアはベルの後ろに隠れて挨拶した。
「[リーフィア]って、[イーブイ]の進化系だよね?」
「うん。[シャワーズ]もそうだね?」
「そうだよ!」
「さっそく2人とも打ち解けたみたいだね。」
〈年も近いから、自然な流れよね。〉
〈そうだね。〉
この後、2〜3時間ほど交流会が続いた。
………
PM4:00 ビーチ
「……もう4時、早いなー。」
〈船が出航する時間は4時半だから、そろそろ行かないといけませんね。〉
ベルは腕時計を見ながら言った。
〈……うん。〉
〈リーフ、しばらくお別れね。〉
確認している間に、モミジは話題をだした。
〈うん。姉さん、会えて良かったよ。調査が終わったらユウキ達と会いに行くから。〉
〈そうね。まだ話したいことが山ほどあるけど、その時までお預けね。〉
〈その時まで、元気でね。〉
〈リーフも。昨日みたいに無理しないようにね。〉
〈姉さんも。〉
リーフ、モミジは互いの尻尾で身を寄せ合った。
〈……ベルさん、お願いします。〉
モミジはベルに目で合図を送った。
「挨拶は済んだんだね。なら、いくよ!」
ベルは空のモンスターボールを取り出し、モミジに向けて投げた。
コツン、と音がして、モミジは赤い光と共にすいこまれた。
三回揺れ、収まるとそれを手に取った。
〈………うん。ベル、姉さんをお願いね。〉
「うん。私がちゃんと送り届けるから、安心して!」
〈ベルなら任せられるわね。〉
〈そうですね。〉
〈ベルさん、ユウキくんと同じぐらい優しかったしっ!〉
《ベルさんも、元気でね。》
「ライトさんも。 ユウキくん、調査、頑張ってね。もちろんシルク達もね!」
〈ああ。ベルも、頑張れよ。〉〈ウチらも応援してるから♪!〉
「うん。」
「じゃあ、船の時間が近いから、そろそろ行くね!」
ベルは手を振りながら夏の浜辺を後にした。
§11 End. To be continued...