sixty-sixth
AM10:55 カイナシティー 市場
「ユウキくん、やっぱりいつ来ても混んでるね。」
「観光都市だから、自然と人が集まるからだろうね。」
昼前にも関わらず、港の問屋街は賑わっていた。
〈港町だから、各地の物資が安く買えるからじゃなしかしら?〉
〈経由している業者が少ないからな。〉
〈経済とかよくわからないけど、安くなっているんだね♪?〉
〈低価格ほど良いことはないからね。〉
〈確かに、そうだよねっ! ユウカちゃんはとりあえず[水の石]だけど、ユウキくんは何を買いに来たのっ?〉
フライが少し高い位置から聞いた。
「僕は最近消費した回復アイテム一式と、メモ用のノートとか、ちょっとした食糧かな。」
〈調査していると、書き込む事が多いですからね。〉
《ユウカさんも色々と買い揃えたらどうですか?》
「うん。せっかくだから、そうしようかな。バトルで沢山賞金稼いだから、少しは贅沢出来るかな。」
《自分へのご褒美に何か買うのもいいと思うわ。》
「そうだね。 一軒ずつ見ていこうか。」
「そうだね。」
〈カイナシティーがここまで賑やかな街だったなんて、気づかなかったわ……。〉
3人はショッピングを始めた。
15分後
「ここっていろんな物が揃っているんだね。」
「値段も安いし、良いことづくしだね!」
「本当にそうですね。でも、ユウキさん、さすがに買いすぎじゃないですか?」
《ユウキは昔からこうだから。 ユウキはこう見えて消耗品を買いだめする癖があるのよね…。この悪癖で何度も助けられたらこともあるけど……。》
《<備えあれば憂いなし>と言いますからね。》
「でも、肝心な時に火傷を治す道具が無かったのは痛手だったよ。そのせいで今も少し痛いよ。」
ユウキは右頬の痣(あざ)をさすりながら言った。
「そういえばその傷、どうしたんですか?昨日は無かったけど………」
〈確かに、気になるよ。〉
「昨日は忙しくて話す暇が無かったからね。 簡単に言うと、手強い炎タイプのポケモンと闘った時にできた火傷の痕だよ。……きっとこれはずっと残るだろうね。」
〈その相手って、[鋼の封印石]を守ってるって言ってた、キュウコンのこと♪?〉
〈ユウキさんでも圧されたって言ってましたからね。〉
〈なら、僕は絶対に闘わないほうがいいね。〉
〈リーフは草タイプだからねっ。〉
「たぶんシルクと互角だと思うよ。 きっとアオイさん程の炎技の使い手はいないだろうなー。会いたかったなー。」
「そんなに強いのなら、私は全く歯が立たないんだろうなー。 すみません、[水の石]、売ってますか?」
ユウカは適当な出店を見つけて聞いた。
「お嬢ちゃん、悪いね。おじちゃんの店は技マシン専門なんだ。よかったら見ていくかい?そこのにいちゃんもどうだい?」
商人気質のおじさんが異様なテンションでユウカ達に聞き返した。
「えっ?あっ、はい。」「ついでだから、見ていこうかな?」〈この人の威勢についていけないわ。〉〈ちょっと引くかも♪……。〉
〈確かにそうですけど……モミジさん、スーナさん、ちょっと言い過ぎかと……。〉「兄ちゃん達、見たところトレーナーだねー。」
〈でも、これはこれで活気があっていいんじゃないか?〉「はい。 水タイプの技マシンってありますか?」
〈そうね。スーナ達のこともオルトのことも、言えてると思うわ。〉「水タイプかい。なら、[水の波動]はどうだい?」
〈そうだねっ。〉「[水の波動]?」
〈うん。 ひとそれぞれ価値観が違うから、どっちのことも否定はできないね。〉「[水の波動]は、水流を撃ちだして相手にダメージを与える特殊技だよ。追加効果として、一定確率で相手を混乱状態にできる、使い勝手のいい技だよ。あと、[地震]の技マシンはありますか?」
「兄ちゃん、よく知ってるなー。あたりだよ。」
「じゃあ、それにします。」
「それと[地震]だな?兄ちゃん達はまだ若いが、お金は足りるのかい?技マシンは1万円以上するのが相場だが……。」
「はい、大丈夫です。 2つ分、僕が払います。」
ユウキは懐のポケットから財布を取り出した。
「えっ?ユウキさん、いいんですか?」
「うん。ニトルの進化祝いだと思って受けとって。」
《私達からの気持ちよ。》
「うん。ありがとうございます!」
ユウカはこの日の天気に負けないぐらいの笑顔で答えた。
「 6万円ですね。」
「はい!毎度ありー!」
ユウキは2人分の料金を手渡した。
5分後
「ここなら売ってるかな。すみませーん!」
ユウカは店員に聞こえるように声を張り上げた。
「あら、いらっしゃい!」
「[水の石]はありますか?」
「ええ。うちは進化用の道具専門よ。」
「本当ですか!? じゃあ、[水の石]を1つください!!」
ユウカは間髪を入れずに注文した。
「進化させるのね?料金は1500円よ。」
「はい!ありがとうございます!」
ユウカは料金を支払い、目的の品を受けとった。
《ユウカさん、見つかって良かったですね。》
「うん!」
「最初は売ってるか心配だったけど、ユウカちゃん、良かったね。」
《そうね。 ここだと、場所が狭いから、ビーチに行きましょ!》
〈記念すべき日は全員揃ってないとね♪〉
「じゃあ、さっそく行こうよ!」
「うん!」
ライトはユウカの手を引いて浜辺へとかけていった。