sixty-fifth
AM10:10 111番道路付近 上空
「風を切るって、こんな感じなんだね!」
《うん!私、こうやって空を飛びながら遠くの景色を眺めるのが好きなんだよね。》
ユウカは眼下に望む絶景に目を輝かせていた。
〈ウチも好きだよ♪この景色と、風を切る爽快感がクセになるんだよね♪〉
《ユウカ、空の旅はどう?》
「うん!凄く楽しいよ。シルク達はいつも移動する時はこうやって飛んでるの?」
「ううん。 よっぽどの事がない限り飛ばないよ。僕達もゆっくり旅を楽しみたいからね。」
《街から街へ行く時はそうだけど、街に着いて観光する時は、スーナに乗せてもらって空から景色を眺めたりしているわ。》
「へぇー。」
ユウキ達は空の旅を満喫した。
5分後 キンセツシティー上空
「凄い!もうキンセツシティー!?」
ユウカは到達する速さに圧倒されていた。
〈カイナシティーまで、あと10分ぐらいかな♪〉
〈スーナ、カイナシティーって、どんな街なのっ?〉
飛びながらフライは、スーナに聞いた。
〈一度来た時は全く余裕が無かったので、私も知りたいです。〉
〈モミジさんもですね♪ 一言で言うと、観光都市かな♪?〉
〈観光都市かーっ。楽しみだなぁ。〉
〈市場とか海水浴場、博物館とかがあって、凄く賑やかな街なんだよ。〉
〈そうなんだー。ライトちゃんは来たことがあるんだねっ?〉
〈うん。ユウキくん達と来たのを含めて、今日で3回目だよ。〉
陽光が降りそそぐ夏の空で会話の華が咲き乱れた。
「カイナシティーが見えてきましたね。 あれ?何か飛んでくるけど、何だろう?ユウキさん、あの黒い物、何だろう……」
ユウカは300Mほど離れた場所に何かが飛んでいるのを発見した。
「たぶんポケモンだね。 でも、あのシルエット、どこかで見たような……。」
ユウキは記憶を辿りはじめた。
〈シルク、たぶんあのポケモンは[ゼクロム]だよね♪?〉
〈きっとそうよね。 ゼクロムってことは、きっとNも一緒ね。〉〈えっ!?ゼクロムって、[英雄伝説]の!?〉
「ゼクロムは世界中に一体しかいないから、確実だね。 この距離なら……」
「ユウキクン、久しぶり!」
〈ユウキ殿、しばらくぶりですな。〉
「うん。 ムロタウン以来だね。」〈ゼクロムも、久しぶりね。〉
黒いポケモンの正体は、自分探しの旅をしているNとゼクロムだった。
「えっ!?ユウキさん、この人と知りあいなんですか!?」〈Nさん、久しぶりだね。〉
「うん。紹介するよ。彼はNと言って、ホウエンに来る前からの友達だよ。「キミは確か、ライトちゃんだったね。久しぶり。」
「Nさんって言うんですね。私はユウカと言って、トレーナーです。」〈ユウキ、この人もトレーナーなのっ?〉
「ユウカちゃんだね。覚えておくよ。 うん。ジムは巡ってないけど、ボクもトレーナーだよ。ユウキくんを乗せているキミははじめましてだね。あと、エーフィーの[サイコキネンシス]で浮いてるキミもね。」〈汝はユウキ殿のジャローダではないな。〉
〈はじめましてだねっ。ボクはフライゴンのフライっていうんだっ。よろしくねっ!………って、〉〈ユウキさんの……、リーフのことね。私はリーフの姉です。………えっ!?〉
〈〈ボク/私の言葉がわかるのっ!?/んですか!?〉〉
「!?」
フライはあまりの事に驚き、背中に乗っているユウキを落としそうになった。
《言い忘れたけど、Nも私達の言葉がわかるのよ。》
「〈〈えっ!?そうなの!?〉〉ユウキさん達以外にもいたの!?」
《うん。私も初めて知った時は驚いたよ。ユウカちゃん、Nさんを乗せているポケモン、[ゼクロム]って言うんだけど、伝説のポケモンなんだって。》
「えっ!?そうなの!?」
ユウカは衝撃が大きく、ライトから落ちそうになった。
《いかにも。拙者は[理想の使者]のゼクロムだ。以後、よろしくお願いする。》
「!?テレパシー!? はい。よろしくお願いします。」(ライトちゃんと同じで伝説のポケモン!?Nさんって、一体何者!?)
「こちらこそ、よろしくね。 ユウキくんはカイナシティーに行くんだね?」
「うん。ちょっと用事があってね。Nは?」
「ボクはここから東のほうに行くつもりだよ。」
〈東ってことは、トクサネシティーに行くんだね♪?〉
「うん。 ユウキクン、調査ははかどってる?」
「お陰様で、順調だよ。Nは?」
「ボクもゼクロム達と楽しんでいるよ。」
2人は互いに近況報告をした。
「だから、ユウキクン、頑張ってね。」
「うん。」
「ゼクロム、頼んだよ!」
《御意。》
世間話を終え、Nを乗せてゼクロムは飛び去った。
………
AM10:40 110番道路 カイナシティー入り口
「よし、着いたね。」
〈うん。 とりあえず、私は姿を変えるね。〉
〈ふぅ、そうね。〉
ライトはユウカを降ろすと、眩い光を纏った。
その間にシルクは、モミジにかけていた技を解除した。
「よし。やっぱり飛ぶと速いね。」〈シルクさん、30分ぐらい技を使いっぱなしだったけど、大丈夫ですか?〉
モミジは心配そうにシルクに聞いた。
〈ええ、平気よ。私は戦う時は常に継続してるから、慣れているのよ。〉
〈モミジさん、シルクは同時に2つの技を出せるんです♪〉「着いたから、みんな、お待たせ!」
〈技を同時に!?〉
〈ええ、そうよ。〉
モミジはシルクに聞き返した。
その間にユウキは3つのボールを手に取り、残りのメンバーをだした。
〈着いたな。〉
〈うん。ユウキ、まずは市場に行くんだよね?〉〈ここは何回来てもいい街ですね。〉
「そうだよ。 僕も不足している道具を買い揃えたいから、さっそく行こっか。」
「〈〈はい!〉〉」「〈〈〈うん!〉〉〉」〈ああ、そうだな。〉〈回復アイテムとか、雑貨ね。〉
ユウキの号令で、一行は行楽シーズンで賑わう娯楽都市に足を踏み入れた。