sixty-third
AM8:00 ポケモンセンター 202号室
「………よし。みんなは準備できた?」
〈ええ、大丈夫よ。〉
「何か昨日の朝の事がずいぶん昔のように感じるよ。」
〈色々あったからな。〉
長い1日が終わり、空はユウキ達の気分を表したかのように晴れ渡っていた。
〈そうだね♪ ユウキ、今日はユウカとのバトルから始めるんだよね♪?〉
「うん。そうだったね。」
〈だから姉さん、カイナシティーに行くのは少し遅くなるけど、いい?〉
リーフは傍にいたモミジに聞いた。
〈ええ。私は連れてってもらうだけだから。〉
〈なら、決まりですね。 ……どこで待ち合わせでしたっけ?〉
〈ええっと、確か街の入り口だったと思うよっ。〉
「そうだったね。あと、時間は8時45分だよね?」
「うん。 たぶんユウカとは3対3になると思うけど………ライトの他に誰がいく?」
ユウキは全員に意見を求めた。
〈僕はしばらく安静で、闘えないからなー……。〉
〈私は、どれだけ強くなったか確認するためにフライがいいと思うわ。〉
〈確かに、そうだな。〉
〈うん、そうだねっ。ボクももう少し自分の身体を慣らしたいと思っていたから、ボクがいくよっ!〉
〈あとひとりですね。 僕は昨日十分戦ったので、遠慮しておきます。〉
「誰もいかないなら、ユウキくんはどう?」
ライトが聞いた。
〈確かにそうね。ユウキ(お兄ちゃん)は私達に指示を出さないといけないから、闘う機会が少ないからね。だから、気分を変えて思う存分楽しんだらいいと思うわ。〉
「……うん、そうだね。たまには、良いかもね。みんなもそれでいい?」
〈はい!〉
〈コルドと同じく、俺は構わないぞ。〉
〈うん♪ウチも賛成だよ♪〉
〈僕もそれでいいと思うよ。〉
〈皆さん、本当に仲がいいんですね。〉
満場一致で闘うメンバーが決定した。
………
AM8:40 フエンタウン 入り口
「ごめん、待たせたね。」
「ううん、私もまだ来たばかりだら、全然待ってないですよ。」
ユウキ達が待ち合わせ場所に着くと、既にユウカはそこにいた。
《来たばかりなら、大丈夫そうね。》
「うん。 何でジャローダがふたりもいるのかわからないけど、さっそく始めよ!」
〈私も早く始めたいよ!〉
ジュプトルも目を輝かせている。
「ちょっと訳ありでね。さあ、始めようか。」
「はい!」
晴れ渡る空の下、2人のバトルが幕をあけた。
「じゃあ僕は、フライ、行ってくれる?」「イーブイ、いくよ!」
〈うんっ!もちろんっ!〉〈ジム戦も勝てたんだから、いけるね!〉
イーブイは自信満々に飛びだした。
「ユウキさん、ニックネーム付けたんですか?」
「ううん、これはそれぞれに元からある固有の名前だよ! ユウカ、先行は譲るよ。」
「ポケモンにもそれぞれ名前があるんだー。じゃあ、イーブイ、[電光石火]!」
〈うん!いくよ!!〉
イーブイはフライに向けて走りだした。
〈[電光石火]!〉「[騙し討ち]!」
〈うんっ![騙し討ち]!〉
〈えっ!?〉
イーブイは高速で迫ったが、フライは接触する寸前でイーブイの視界から外れた。
フライは攻撃を当てずに背後に回り込んだ。
「外れた!?[シャドーボール]!」「飛び上がって距離をとって!」
〈うん!ぼくのきりふだ、[シャドーボール]!〉〈体勢を立て直すんだねっ?〉
イーブイは口元に漆黒のエネルギーを溜め始めた。
フライはそのまま高度を高くした。
「[シャドーボール]を使えるんだね!?なら、[岩雪崩]!」
〈任せてっ![岩雪崩]! っ!〉
イーブイが放った漆黒の弾丸が攻撃の動作を行っていたフライに命中した。
フライはそのまま集中を切らさずにいくつもの岩石を出現させた。
すぐにイーブイに降り注ぐ。
「!?[電光石火]でかわして!!」「[騙し討ち]から[超音波]!」
〈えっ!?当たったのに、効いてない!?[電光石火]!〉
〈効いてない訳ではないよっ!〉
イーブイは技を発動させて降り注ぐ岩石をかわした。
フライは攻撃の射程範囲に入るため、急降下した。
「そのまま攻撃して!!」
〈うん!くらえ!!〉
〈流石に[電光石火]は早いねっ!っ!〉
フライはイーブイの突進を自身の長い尻尾で受けとめた。
〈[騙し……]〉「[噛みつく]!」
〈[噛みつく]!」
ユウカは状況を判断し、速攻で指示を出した。
〈くっ! これは流石に効いたよっ![超音波]!〉「ユウカ、流石に僕も油断したよ。かなり実力上がってるね。フライ、そのまま[ドラゴンクロー]!」
〈うわっ!この音、何!?〉
イーブイは身の危険を感じ、すぐにフライの尻尾を放したが、音波をまともに受けた。
「えっ!?混乱!?兎に角下がって!!」
〈!!?見えない!?〉〈退かせないよっ![ドラゴンクロー]っ!〉
イーブイはぼやけた視界だけを頼りになんとか距離をとろうとした。
それをフライが右手に暗青色のオーラを纏い、追撃した。
「!!よけて!!」
〈!!?〉
斬撃が命中し、イーブイは倒れた。
「やっぱり、ユウキさん達は強いですよ。」
「ユウカも強くなってるよ。あれは僕でも予測出来なかったよ。じゃあ次は……。」
「次は私がいってもいい?」
ユウカがイーブイをボールに戻している間にライトが前に出た。
「うん。全部ライトに任せるよ。」
「次はライトちゃん!?なら、ジュプトル、お願い!」
〈わかったわ。どのくらいの実力かわからないけど、全力でいくわよ!!〉「ユウキくん、わかったよ!っ!」
後ろに控えていたジュプトルが前にでた。
ライトは眩い光を纏い、本来の姿に戻った。
「《じゃあ、いくよ!!》」
「[宿り木の種]!」《[神秘の守り]!》
〈保険ね![宿り木の種]!〉
ライトは光のベールを纏った。
ジュプトルは小さな種を幾つか飛ばした。
〈!?何これ!? [竜の波動]!〉
ライトにいくつかついた。
ライトはそれに構わず青黒いブレスを接近しながら放った。
「ライトちゃん、速い!?[リーフブレード]!」
〈!?っ! 掠った!?[リーフブレード]!〉
ジュプトルはかわしたが、僅かに掠った。
すぐに体勢を立て直し、腕に鋭利な草の刃を出現させた。
〈!?[サイコキネンシス]!っ!〉
ライトに草の刃が命中した。
攻撃をうけてから、超能力でジュプトルを拘束した。
〈!?動けない!?〉《私もそろそろ本気でいくよ!! !?体力が……!?》
「ライトちゃん、私が始めに何を指示したかわかる?」
《えっ!? …あっ![宿り木の種]って………。》
「そう。気づいていると思うけど、相手から少しずつ体力を奪う技だよ。」
《やっぱり………。でも、私が有利なのにはかわりはないよ!!》
〈!!?ヤバい!?〉
ライトは上空にジュプトルを飛ばし、技を解除した。
「ジュプトル!!」《私も切り札をだすよ!![ミストボール]!!》
ライトは手元に純白の弾を形成し、ジュプトルに向けて放った。
〈かわせない!?〉〈[竜の…波動]!!〉
徐々にライトの体力が削られていく。
〈くっ! 連続…で!?〉
空中に投げ出されたジュプトルは為す術がなく、まともに攻撃をうけた。
「ライトちゃん、強いよ![種マシンガン]!!」
《ユウカちゃんと……ジュプトルも…。[サイコキネンシス]…!》
ライトは飛ばされた種を受け止めた。
《これで……最後!!》
〈撃ち返された……!?〉
ライトは落下を続けるジュプトルに向けて撃ち返した。
〈っ! くっ!〉
命中し、地面に叩きつけられた。
「ジュプトル!?」《くっ!?……流石に……体力を奪われると……キツいかも……》
ジュプトルは戦闘不能となり、ライトも地についた。
《ユウカちゃん、ギリギリだったよ………。ユウキくん、あとはよろしくね。》
「うん。お疲れ。どっちも強くなってたよ。」
「ありがとうございます。次で私は最後です。コドラ、いくよ!!」
〈うん。まだ眠りけど、頑張るよ。〉
ユウカは三体目のポケモン、コドラを出した。
「ユウキさんは誰でいくんですか?」
「……よし、[絆]の名に賭けて…………」
〈…いくよ!!〉
ユウキは姿を歪ませた。
「〈えっ!?ユウキさんが!?〉でも、[ピカチュウ]って電気タイプですよね!?」
《ユウカ、相性ではユウキが不利だけど、ユウキは人間だからといって見くびらないほうがいいわよ!》
《ユウカちゃん、ユウキくんは私以上に強いから、全力でいったほうがいいよ!》
「えっ!?うん。 コドラ、[メタルクロー]!」
〈うん!〉
コドラはユウキに向けて走りだした。
〈さあ、楽しもうかな。〉〈[メタルクロー]!〉
コドラは鋼の爪でユウキに切りかかった。
〈なるほどね。〉
ユウキは自身の尻尾を地面に打ちつけ、その反動でかわした。
「落ちたところに[突進]!」
〈落下してるなら、かわせないよね。〉
コドラは攻撃のため、身構えた。
〈[突進]!〉(コドラの能力を見せてもらおうかな。)
〈っ!〉
「えっ!?当たった!?」
ユウキはかわすことなく、技をくらった。
〈コドラ、君の能力を見させてもらったよ。〉
ユウキは言いながら後ろに下がった。
「もう一度[突進]!」〈じゃあ、そろそろ攻めようかな。実戦では初めてだけど、[エレキボール]!〉
〈わかったよ!〉
コドラは再び接近を始めた。
ユウキは両手で黄色いエネルギーを、目覚めるパワーと同じ要領で溜めて放った。
「えっ!?ユウキさん、コドラには殆ど効かないけど!?」〈[目覚めるパワー]!!〉
すぐに紅蓮の弾を黄色の弾に向けて放った。
二色の弾は衝突し、混ざり合った。
橙色となり、コドラに向けて飛んでいった。
「〈混ざった!?〉」〈よし、これなら上手くいくかな。………っ!〉
〈!?〉
コドラの目前で弾丸が小爆破発を起こして、縦方向に弾けた。
その間にユウキは力を溜めながら接近する。
〈くっ! 爆発……!?〉
爆発をうけたコドラは足下がふらつきはじめた。
「たった一回の攻撃で!? あんな技、初めて見た!?」〈この距離なら……、[気合いパンチ]!!〉
ユウキは溜めていた力を解放し、コドラに向けて振りかざした。
〈っ!!?〉
〈よし。〉
まともにうけたコドラは崩れ落ちた。
「ユウキさん、本当に強い……。」
「………ふぅ、改良は成功かな。」
ユウキは姿を歪ませながら言った。
「ライトちゃんだけでなくて、ユウキさんも強いんですね。」
「これでも経験を積んでるからね。」
《たぶんユウキさんは1人でジム戦を勝ち抜く実力を持っていると思います。僕達でも全力で闘わないと負けてしまいますから。》
〈確かに………全く………歯が立たなかったよ……。〉
2人のバトルは幕を閉じた。