とある青年の物語 〜kizuna〜


























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§11 after the battle
sixty-second
PM9:00 202号室

〈ねぇユウキ、一段落したから、改めて自己紹介しない♪?〉
〈そういえば、皆さんの名前を知ったものの、揃ってませんでしたからね。〉

要件が全て解決し、スーナが話を持ち出した。

「そうだね。二班に別れていたからね。」
「じゃあ、まずはスーナからいく?」
〈うん♪ウチが話を始めたからね♪ こうやって改まるとちょっと恥ずかしいけど、ウチはスワンナのスーナ、よろしくね♪〉

ライトに指名されたスーナが最初に手短に自己紹介した。

〈よろしくな。 俺はコジョンドのオルトだ。よろしく。〉
〈うん。そして、僕はジャローダのリーフ。改めてよろしく。〉

オルト、リーフの順で紹介した。

〈リーフさん、話し方、変わりましたね。 ご存知の通り、僕はコバルオンのコルドです。〉
〈確かに、そんな気がするよっ。 進化して姿が変わったけど、ボクはフライゴン、元ビブラーバのフライ、よろしくねっ。〉

コルドは律儀に一礼し、フライは軽く会釈した。

〈せっかくの機会だから、私の自己紹介も踏まえて、私がみんなと出逢う前の事を話すわ。〉
〈えっ!?シルク、突然どうしたの♪?〉
〈リーフは自分の事について話してくれたからよ。 今までに何回か話そうと思ってたけど、タイミングを逃してね。だから、聴いてくれるかしら?〉

シルクは明るく表情のまま言った。

〈はい。そういえば、シルクさんの過去をきいたことがありませんでしたね。〉
〈じゃあ、話すわよ。  私はユウキと出逢う前、私は物心ついた頃に、父親を事故で無くし、母親を病気で無くしたわ。だから、私には固有の名前も無かったわ。
幼くして両親を失ったから、どんなひとだったか記憶が残ってないわ。〉
〈シルクにそんな過去があったなんて♪………。〉
〈身よりもなかったから、いわゆる極限の孤独を幼いうちに味わったわ。 私に残る最も古い記憶は、食糧を求めて大都会をさまよっていた事だわ。 だから、当時の私は[家族]の温もりを知らなかった……。ある時、食糧が見つからずに空腹で衰弱しきっていた時に、偶然まだ7才だったユウキに拾われたのよ。 今思うと、その時ユウキに拾われてなかったら、私は今この世に存在していなかったと思うわ。 それくらい衰弱していたのよ。〉
「うん。あの出会いは今でも忘れないよ。本当に弱っていて、今にも倒れそうだったから。」

ユウキが補足を加えた。

〈私はユウキとユウキの両親に保護されて、[死]を免れることができたのよ。 回復した後も私は面倒を見てもらえて、その時初めて[家族]の温もりを知ったわ。 確かユウキに心を開いたのはその頃かしら……。〉

シルクは懐かしむように言った。

〈……ユウキには兄弟がいなかったから、ユウキは私に実の妹のように接してくれたわ。〉
「うん。だから僕は、スクールにいる時も、寝る時も、いつでもシルクと一緒だったよ。 シルクの言う通り、僕は一人っ子だったから、シルクが来て、本当に僕に妹ができたようだったよ。 もちろん、今でもそう思ってるよ。」
〈ユウキ、ありがとう。 当時私達はジョウト地方の[コガネシティー]って言う街に住んでたのよ。  出会ってから五年後、ユウキのお父さんの仕事の関係でイッシュ地方に移住する事になったのよ。確かその頃に自分の進化について考えはじめたわ。 この頃には、言葉が通じなくても、なんとなく感情だけは伝えれていたわ。〉
「苦楽を共にして僕にとっても、シルクにとってもかけがえのない存在、本当に兄妹のような関係になっていたから、自然と言えば自然かな。」

ここで一度言葉を区切った。

〈その時、ユウキは[イーブイ]の進化系についていろいろ話してくれたわ。どの種族も良くて、本当に悩んだわ。〉
「そんな時、転校先のスクールでバトル大会があったんだ。二回戦を突破したんだけど、三回戦で敗れた……。」
〈相手は毒タイプで、ノーマル技しか覚えてなかった私は惨敗だったわ。 それが凄く悔しくて、絶対に勝つって胸に誓ったわ。 その時、進化希望は2つまで絞れていて、この事がきっかけで、私は[エーフィー]になることに決めたわ。〉
〈そうなんだー。ねぇ、シルク、2つまで絞ったって言ってたけど、もう一方の種族は何だったの?〉

ここでリーフが聞いた。

「そういえば、もう一方を聞いたことがなかったね。」
〈言葉が通じなかったからね……。私は悪タイプの[ブラッキー]と迷っていたわ。話に戻るけど、私は必死にバトルの練習をして、ユウキがスクールを卒業する直前に[念力]を習得して、それと同時に[エーフィー]に進化したわ。 卒業式の前日にバトル大会で惨敗した相手にリベンジを申し込んで、なんとか勝つ事ができたわ。〉
「僕もその時は惨敗した相手に勝てて凄く嬉しかったよ。 それから、シルクは凄いスピードで強くなっていったよ。」
〈私はその一回のバトルで感覚を掴んで、自分に相応しい戦い方がわかったのよ。〉
「卒業してからは、2年間は化学の専門学校に通っていたよ。でも、バトルの楽しさが忘れられなくて、中退したよ。」
〈スーナは知っていると思うけど、私達が化学分野に詳しいのはそういう理由よ。〉
〈そうだったんだね♪〉
〈ここでのジム戦のことですね?〉
〈ええ。そうよ。中退してから私達はすぐに放浪の旅に出て、オルトと出会って、後は皆が知っている通りよ。〉
「これで、シルクと僕の過去については全部だよ。」

一時間続いたユウキとシルクの歩んできた軌跡が一段落した。

〈だから、今日ユウキから名前をもらった時は本当に嬉しかったわ。 だから、このエーフィーのシルクをこれからも宜しくお願いするわ。〉

シルクは自分の言葉で締めた。

■筆者メッセージ
今まで語られなかったユウキとシルクの過去について書きました。
語られていない他のメンバーも、機会があれば執筆します。
@ ( 2013/06/26(水) 00:35 )