sixty-first
PM7:20 フエンタウンポケモンセンター 202号室
〈姉さん、兄さん達はどうなったの?〉
ある程度おちついてから、リーフはモミジに聞いた。
〈兄さんは、確かシンオウ地方にいるときに買い取られたわ。 父さんと母さんは檻が違ったから、襲われてからの行方はわからないわ。〉
〈そうなんだ………兄さん達、大丈夫かな……。〉
リーフは不安そうに呟いた。
〈兄さんを買い取った人、子供を連れていたから、私みたいにはなってないと思うわ。〉
〈よかった。〉
〈リーフはあの後、どうなったの?〉
今度はモミジが聞いた。
〈僕は姉さん達が運ばれてから、ユウキ達に助けてもらったんだ……。だから、僕は売られる事はなかったんだ。〉
〈だから、探してもいなかったのね。〉
〈うん。その後僕は、捕らえられたら姉さん達を捜すために、助けてもらったユウキ達の旅に加わったんだ。〉
リーフはここで一度言葉を区切った。
〈初めは捜す事だけで全く余裕が無かったけど、シルク達と話しているうちに旅とバトルを楽しめるようになったんだ……。それ以来、重くのしかかっていた負の感情が緩和されていった……。〉
〈リーフ、出逢った時はそう思っていたんだな。〉
〈うん。だから、僕はシルク達に二度、助けられたら事になるかな。〉
〈確かに、私達が励ましてからリーフは変わったわね。〉
〈うん。 全てを失った僕にとってはシルク、オルト、ユウキ、そして仲間のみんなは僕にとってかけがえのない存在、もちろん今もそうだよ。だから、もう何も失いたくなかった………。 今思うと、僕が我を忘れて戦ったのは、これが要因だったのかな。〉
リーフは自分の想いを淡々と話した。
「リーフ、そんな風に思ってたんだ………。」
ユウキ達も黙って聞いていた。
〈リーフ、かけがえのない仲間に出会えたのね……。あの後、リーフが無事で安心したわ。〉
〈姉さんも、生きててよかったよ。…………これで僕について全部話したよ。〉
暫くの沈黙。時計が時を刻む音だけが部屋に響いた。
〈…………ごめんね………、重い空気になったね……。〉
「そんなことないよ!」
「辛いはずなのに、話してくれただけで十分だよ。」
〈だからリーフ、もう苦しむ事はないんだよ♪〉
〈困ったり、不安な事があったらいつでもボク達がきくからっ!〉
〈俺達には誰にも負けない強い[絆]があるだろ?〉
〈だから、遠慮せずにいつでも話してください。〉
〈私にとっても同じよ。だから…………。〉
「辛い事があったら、聴くよ。僕達はこうして出逢った以上、[運命]を共にしているんだから。」
「そう。気軽に、とは言わないけど、いつでも聴くから!」
全員が暖かい言の葉でリーフを迎えた。
〈みんな………本当に………ありがとう………。本当に………。うわあああぁぁぁ!〉
リーフは声を上げて泣き崩れた。
………
PM8:00 202号室
〈リーフ………一応旅の目的が果たされたけど………この後はどうするの♪?〉
スーナはおそるおそるリーフに聞いた。
〈………、姉さんと無事に会えて、事実上僕の目的が達成されたけど………やっぱり、みんなのもとから離れたくないよ。………だから、これからも、今まで通り、一緒に、旅をしてもいい?〉
〈ええ、もちろんよ!!〉
〈誰かひとりでも欠けたら意味がないって、ホウエンにくる前に話しただろ?〉
〈それに、抜けたら凄く寂しいよ♪〉
〈そうです。全員揃ってこその旅ですから!〉
〈だから、絶対に拒否はしないよっ!〉
「むしろ私達から一緒に旅がしたいって頼みたいよ!!」
「だから、大歓迎、ぜひそうしてほしいよ!!」
〈みんな、ありがとう!〉
リーフは何かが吹っ切れたように前を向いた。
〈だから、これからも宜しくね!!〉
心の奥底からの笑顔で答えた。
20分後
〈僕は決まったけど、姉さんはこの後はどうするの?〉
リーフは一時間前とは全く別人のように明るくなっていた。
〈せっかく解放されたから、故郷に帰りたいわ。〉
「故郷……[ホワイトフォレスト]だね?」
〈はい。でも、帰り方が分からなくて……。〉
モミジは困ったように言った。
〈帰る方法ね……私達はまだ調査が終わってないから……。〉
〈………なら、ベルに頼むのはどうだ?〉
「そういえばベルさん、一週間ぐらいホウエンにいるって言ってたね。」
〈確かに、その方法が確実、かつ迅速にいくかもしれないですね。〉
〈名案だねっ!〉
「そうだね。モミジさん、聞いていた通り、近くにイッシュ出身の知り合いが旅行で来ているんだけど、その人に送ってもらうのはどうかな?」
〈知り合いが来ているんですね?では、それでお願いします。〉
モミジはオルトの案に賛成した。
「そう決まったなら、連絡をとってみるよ。」
〈ユウキ、頼んだわ!〉
ユウキは隅に置いてある荷物から自分のライブキャスターを取り出した。
(そこそこ遅い時間だけど……出るかな………)
《はい?ユウキくん、こんな時間にどうしたの?》
「ベル、1つ頼みたい事があるんだけど、いいかな?」
《え?うん、私は何をすればいいの?》
「ええっと、フエンタウンの近くでジャローダを保護したんだけど、本人の希望で、帰る時に一緒に連れてってくれる?」
《うん、わかったよ!で、どこまで連れていけばいいの?》
「[ホワイトフォレスト]までお願い。」
《[ホワイトフォレスト]だね?うん、わかったよ!なら、明日の昼ぐらいにカイナシティーって言う街に来てくれる?私達、そこからイッシュに帰る予定だから。》
「カイナシティーだね?わかったよ!じゃあ、そこで。」
《うん、待ってるよ!》
ユウキは通話を遮断した。
「よし、頼んでおいたよ。」
〈重ね重ねありがとうございます!〉
モミジは感謝の気持ちでいっぱいになった。