とある青年の物語 〜kizuna〜


























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§11 after the battle
sixtieth
PM5:50 山頂

「〈〈〈〈〈〈〈リーフ!!〉〉〉〉〉〉」さん!!〉

実の姉に駆け寄ったリーフは、疲労とダメージにより崩れ落ちた。

〈リーフ!!せっかく、やっと会えたのに!!〉

目の前で弟が倒れ、モミジは泣き崩れた。

〈ユウキ!!早く、リーフをポケモンセンターに連れて行かないと、リーフが……。〉
「僕もそうしたいよ!!でも、ここからだと20分以上かかるし……」
〈くっ、一体どうすればいいんだ!?〉

ユウキ達全員が為す術が無く、途方に暮れている。

〈………そうだっ!ユウキくんっ!ボクに乗って!!〉
〈えっ!?でも、フライも戦って疲れているはずじ………〉
〈リーフやライトちゃん達に比べたら、ボクなんて全然戦ってないよっ!だから、飛ぶなら、ボクの方がっ……。〉

フライはユウキ達に必死に訴えた。

〈………確かにな。地道に下山するのは時間がかかる。〉
〈かといって、いつもどうりスーナにも頼めないわね。スーナも長時間戦っていて、ユウキもエネルギー切れ、おまけに火傷状態……。ユウキも今は相当辛いはず………。〉
「そういえば僕って、火傷状態だったっけ?すっかり忘れてたよ。 状態を回復する道具は全部置いてきたから……。」
〈つまり、今出来る最善の方法は、フライ以外の全員はボールに戻って、ユウキはフライに乗って、大至急向かう事ね。〉

いくつか出ていた案をシルクがまとめた。

〈……それが、一番早く解決出来るね♪。〉
「そうだね。僕の身長は大体170cm、フライは見たところ僕より少し高いぐらい……。うん。確かに、それが一番いいね!みんなも、いいね?」

〈ええ。もちろんよ!!〉〈ああ、今は非常時だ。それが一番いい。〉〈うん♪フライ、頼んだよ♪〉〈はい!! モミジさん、一緒に来て下さい!〉〈うん!私はボールに入ってないから、自力で飛んでいくよ!!〉〈うんっ!任せてっ!!〉

〈えっ!?私も!?でも、私、あなたのポケモンでないから……。〉

モミジは困ったように言った。

「大丈夫。これが君のボールでしょ?」

ユウキはフライ以外のメンバーを戻してから、予めスーナから受けとっていたボールを取り出した。

〈えっ!?いつの間に!?私の……ボールを……。〉
「実は、指示したのは僕だから。 君は怪我して倒れていた事にするから。 リーフに付き添っていたいでしよ!?」
〈…はい!!せっかく会えたのに、お別れだなんて、私には耐えられないわ!!だから、お願いします!!〉

モミジはユウキの言葉を聞き、それに応じた。

「じゃあ、いくよ!」

モミジは赤い光に包まれ、ボールに収まった。

「よし、フライ、頼んだよ!!」
〈うんっ!〉

進化して少し低くなった声で答えた。
ユウキはフライの背中に乗り、飛びたった。
それにラティアスも続いた。

10分後 フエンタウン 

「よし、フライ、ありがとう。とにかく急ごう!!」
〈うんっ!〉〈ユウキくん、私は姿を変えてから行くから、先に行ってて!〉
「うん!」

ライトは浮遊して脇の草むらに入っていき、ユウキとフライは街のポケモンセンターに急いだ。

さらに2分後 ポケモンセンター

「フライ、一旦戻って!」
〈うんっ!ユウキくん、あとは頼んだよっ!〉

フライもボールに戻った。

「すみません!大至急ポケモンの回復をお願いします!!」
「!? かしこまりました。」

センターの受付係はユウキの迫力に圧倒された。

「あと、僕のポケモンではないんですが、このポケモンもお願いします!怪我をして倒れていたので、お願いします!」
「あっ、はい!」

ユウキから7つのボールを受けとった。

「ふぅ、とりあえず、一安心かな。」「ハア、ハア、ユウキくん、お待たせ!」

ライトが少し遅れて到着した。

「着いたね。」
「うん。 そういえばユウキくん、火傷したって言ってたけど大丈夫?ホッペが赤く腫れてるけど………。」

ライトのいう通り、ユウキの右頬は赤く腫れていた。

「長い時間戦ってくれたライト達に比べたら、こんなの、掠り傷だよ。」

ユウキはリーフの事が心配だが、無理やり笑顔をつくった。

「とにかく、部屋に戻らずに、ここでまっていようよ。」
「うん。」

ユウキ、ライトは近くの椅子に腰掛けた。

………

PM6:40 ポケモンセンター 廊下

「ユウキくん、リーフ、大事にいたらなくてよかったね。」
「うん。命に関わらなくて、よかったよ。」

リーフの診断結果は、急激に襲った過大なストレスによる精神疲労だった。

〈………本当に、リーフが無事で良かったわ。〉

今、ライト、ユウキの隣には、救出されたモミジも続いている。
ボールを受けとった後、モミジをボールの登録から解除、実質[逃がし]たのだ。
つまり、モミジは[冷酷な豪炎]から自由の身になったのだ。

「…………ユウキくん、ちょっと手段が粗暴だったけど、無事に解放出来て良かったね。」
「うん。あとはリーフの回復を待つだけだね。」
「うん。 きっと明日はみんな筋肉痛に襲われるだろうね…………。」

ユウキは自分の部屋の扉を開けながら言った。

「……。みんな、お待たせ。」

扉をしめるとすぐにメンバー全員を出した。

〈リーフ、大丈夫かしら………。〉
〈心配だな……。〉
〈ユウキ、どうだったの♪?〉

スーナはいてもたってもいられず、ユウキに聞いた。

「命に別状はないって。 ただ、精神的な疲労が激しいから、しばらくは安静だって。」
〈よかったー♪〉〈リーフさん、無事で良かったですね。〉
〈うんっ、本当によかったよっ。〉

ユウキの言葉を聞き、全員肩の荷が下りた気がした。

〈…………あっ、そういえば、彼女は誰ですか!?〉

突然、モミジは思い出したように聞いた。

「今は姿が違うけど、ラティアスのライトだよ。声と目の色でわかるでしょ?」
〈………確かに、声が同じね……。〉
〈ライトの種族はちょっと特殊なのよ。〉
〈そうなのね………。あと、人間のあなたはどうして私達の言葉がわかるんですか?〉

続けて聞いた。

〈ユウキは他の人とは違って、特殊だからな。〉
〈そうだよ♪モミジさんはイッシュの出身なら、イッシュの伝説は知ってるよね♪?〉
〈……一応、知ってます。〉
〈僕がいることから察しがつくと思いますが、ユウキさんは僕を含めて、伝説の当事者なんです。〉
〈何ですって!?〉

モミジは耳を疑った。

「その証拠、見せようか?」
〈証拠? 証拠って?〉

モミジの頭上に疑問符が浮かんだ。

〈ユウキくんも姿を変えれるんだよっ。〉
〈えっ!?〉

モミジがユウキの方を見ると、ちょうど姿を歪ませている最中だった。
歪みが収まると、そこには左腕に青いバンダナを結び付けたピカチュウが立っていた。

〈こういうこと。 火傷の痕、残りそうだな………。〉

ユウキは姿を変え、部屋の隅に置いてあった荷物から[火傷治し]を取り出しながら言った。

〈道具はポケモンにしか効果がないからね……〉

ユウキは独り言のように呟いた。

〈……………ううっ。………ここは?〉

ユウキが道具を使っている最中にリーフが目を覚ました。

〈リーフ、起きたのね。ここはポケモンセンターの部屋よ。〉
〈部屋………。そうだ!!姉さんは!?〉

リーフは慌てて辺りを見渡した。

〈モミジさんなら、無事だよっ。〉
〈よかったー。でも、どうしてここに?アイツは?〉
〈リーフ、覚えてないの♪!?〉
〈うん………。姉さんが蹴られたのを見たあたりから………。〉
〈リーフは完全に自我を失っていたからな。〉
〈コジョンド……いや、オルトだったっけ?あの後どうなったか、話してくれる?〉
〈リーフ、事の終始を聞く前に、話したい相手がいるんじゃないかしら?〉

シルクは右前脚でモミジを指して言った。

〈リーフ、……本当に、無事で良かったわ!!〉
〈!? 姉さん!! 会いたかったよ!!〉
〈リーフ、私もよ!!〉

リーフ、モミジは互いに寄り添い、泣き崩れた。

@ ( 2013/06/23(日) 23:59 )