とある青年の物語 〜kizuna〜


























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§10 match in volcano
fifty-ninth
PM5:20 山頂 sideコルド

〈では、始めますか。〉
〈うん♪〉〈気づかれないように、ね。〉

コルドの号令と共に、ジャローダ解放作戦が幕をあけた。

〈じゃあ、スーナ、私達は空からいくよ!〉
〈うん♪リーフのためにも、絶対に成功させよ♪!〉
〈お二人共、先にお願いしますね。〉

ライトとスーナは飛び立った。

〈エネルギー切れで[サイコキネンシス]は使えないけど、直接手で運べばなんとかなるよね?〉
〈うん♪ウチは翼が塞がったら飛べないから、頼んだよ♪〉〈ライトさん達も向かったので、僕だけ遅れをとる訳にはいかないですね。〉

コルドも自分に言い聞かせてから走りだした。

〈ライト、ウチは気づかれないようにするためにも加速しないといけないから、あとはよろしくね♪〉
〈うん。スーナも、頑張ってね。〉

先ほどいたところからちょうど中間地点、スーナは速度を上げるために高度を上げ、ライトはモミジに近づくために、背中の翼を巧みに動かし、高度を下げた。

〈うん。ここまでは気づかれないかな。 あなたはリーフのお姉さんであってるよね?〉
〈!? えっ!?私?〉

モミジは突然呼ばれ、はっとした。

〈うん。鳴き声を聞かれるといけないから、トーンを落として話してくれる?〉

ライトは聞こえるか聞こえないか、際どいぐらいの声で話しかけた。

〈うん。わかったけど………あなたは?〉
〈私はラティアスのライトと言って、リーフの旅仲間です。〉
〈リーフの………旅仲間? リーフ、あの後全く消息がわからないと思ったら、旅、してたのね………。〉
〈うん。 そんなことより、モミジさん、あなたをあの冷酷なトレーナーから助けに来ました。〉
〈えっ?でも、私、ボールに入っているんですけど………。〉

モミジは少し顔を曇らせた。

〈そこは大丈夫です。私のもう1人の仲間があなたのボールを奪ってくることになってるので、心配しないで下さい。〉〈ライトさん、お待たせしました。〉

遅れてコルドもモミジの元に辿り着いた。

〈僕はコバルオンのコルドと言います。ライトさんから話は聞いてますね?〉
〈はい。 えっ!?コバルオンって、あの、伝説の!?〉
〈はい。ここにいる経緯は後ほど話しますので、まずは僕の背中に乗ってください。一緒に逃げましょう。〉

コルドは声をひそめながらも、力強く言った。

〈でも、逃げだしたら………その後どうなるか………。想像しただけでも………。〉

モミジはさらに表情を曇らせた。

〈あなたの悲しみ、苦しみは先ほどの様子で痛いほど伝わりました。 モミジさん!あの苦難から逃れるためにも、逃げましょう!![絆]の名に賭けて、絶対に!!リーフさんも、絶対にそう望んでいるはずです!!〉
〈…………〉

コルドは、一言ずつ、力強く言った。

〈リーフは戦い始める前にも長い時間闘っていて、もう倒れてもおかしくない状態なのに、モミジさん、あなたのために戦っているんです!どうか、リーフのリーフの切実な願いを聞いてあげて下さい!!〉
〈リーフ…………そんな状態なのに……私のために…………。〉

ライトは最後に強く感情を込めて、リーフの代わりに言うかのように言った。

〈リーフ………。〉

モミジの目は優しい、暖かいもので満たされた。その後、一筋の光が流れた。

〈………お願い………します。〉

モミジは嗚咽(おえつ)混じりに言った。

〈うん。 1人で乗れますか?〉
〈はい。  なんとか……。でも、手伝ってもらえますか?〉
〈うん。わかりました!〉

ライトはモミジの長い胴体の中ほどを抱え、コルドに乗るのを手伝った。

〈乗ると不安定なので、巻きついてもいいですか?〉
〈はい。安全第一ですから。 準備が出来たら言って下さい。〉
〈はい。〉

モミジはそう言い、コルドに巻きついた。

〈準備できました。〉
〈じゃあ、行きますよ。〉

コルドは、巻きついたモミジを乗せ、走りだした。

sideスーナ

スーナは上空でライトと別れた後、加速を続けていた。

(やっぱり、疲れているから効率が悪いなー♪)

スーナは加速しながら下に目をやった。

(ライト達、無事に着いたみたいだね♪  ウチもそろそろかな♪よし!)

スーナは十分に加速し、戦いに気をとられているアルファの背後に向けて飛び、急激に高度を落とした。

(確か、ここからだと左の手前だったよね♪)

スーナは降下した勢いをそのままに、翼を折りたたんでアルファの左側をすり抜けた。
すり抜けざまに、腰に付けたボールの1つを自身の嘴(くちばし)でくわえた。

「ん?何か通ったような……まあいい。今はそれどころではない!」

アルファは自分のボールが盗まれた事に気づかなかったようだ。

(………ふぅ。気づかれなかったみたいだし、ウチの作戦は成功、かな♪)

スーナはボールをくわえたまま、元の場所目指して再び高度を上げた。

同刻 sideフライ

〈ふぅ。 オルト、私は終わったわ!〉
〈シルク、俺もだ。〉

シルク、オルトは7体ずつ倒し終え、合流した。

〈あとはフライだけだな。〉
〈ええ。そうね。 まだ進化したばかりだから、体に慣れてないと思うわ。〉
〈そうだな。進化して大幅に体格が変わったからな。〉〈[ドラゴンクロー]!〉

先ほど進化したフライは、長い尻尾を靡(なび)かせ、最後の一体を切り裂いた。

「クソっ。さつきのヤツといい、こいつらといい、強すぎだろ!?」
「こいつら、本当に野生なのか!?」

団員は悲鳴に近い声で叫んだ。

《残念ながら、私達はトレーナーのポケモンよ。》
「「!!?今のは何だ!?」」

団員全員の頭の中にシルクの声が響いた。

《悪いけど、あんなのを見せられたらタダで帰す訳にはいかないわ!!》
〈[目覚めるパワー]、[サイコキネンシス]!!〉

シルクは頭上に5つの暗青色の弾を放ち、そのうちの1つを跳びながら足下に向けて発散させた。
途端に凄まじい上昇気流が発生し、上空に投げ出された。

「!?」《捕らえられたらポケモン達の分まで技を受けてもらうわ!!》

すぐに放ち、二つずつ衝突させた。
刹那、核分裂の要領でおびただしい数に弾け、団員に雨のように降り注いだ。

「「「!!?」」」

悲鳴をあげる間もなく、団員全員が気絶した。

〈ふぅ。 スッキリしたわ! 無事に片付いたから、ユウキ達のところに行きましょ。〉
〈………ああ、そうだな。〉〈………うんっ、そうだねっ。〉

オルト、フライはシルクの行動に言葉を失っていた。

sideリーフ 合流

〈!? くっ!〉

リーフの猛攻により、ヒヒダルマは既に気絶寸前だ。

「クソっ、ジャローダ相手にここまで追い込まれるとは………ん?何か通ったような………。 今はそれどころではない!」

指示を出そうとしていたアルファの左側を一筋の白い風が駆け抜けた。

〈これで………これで……最後だ!![リーフストーム]!!〉

特性、[深緑]により強化された緑の嵐がボロボロのヒヒダルマに襲い……


かからなかった。

「!? あの技は、……もしかして………。」「〈!!?〉」

代わりに、ヒヒダルマとアルファの足下から突然極太のイバラが生え始め、捕らえた相手を締めつけた。

「草タイプ、最強の技、[ハードプラント]………?」
「くっ! 私に………まで………。」

ユウキはその技の名前を口にした。
拘束されたアルファとヒヒダルマは気を失った。

〈ユウキーこっちは片付いたわよ!!〉
〈僕達も、救出できました!!〉
〈ウチも成功したよ♪〉

戦いが幕を下ろしたタイミングで、別行動をしていたメンバー全員が合流した。

〈ん?コジョ………じゃなかった。オルト、このポケモンは?〉

ライトは、見慣れないポケモンがいることに気づき、オルトに聞いた。

〈ライト、彼はフライだ。〉
〈さっき戦っている最中に進化したんだよっ!〉
〈進化、したんだ♪!?〉
〈見違える程カッコ良くなりましたね!〉
「フライ、特訓の成果がでたね。」
〈うんっ!これもユウキくん達のおかげだよ〉
「僕も戦い方を教えた甲斐があったよ。」
〈ユウキ、話している最中に悪いけど、まだ終わってない事が1つあるよ♪〉

スーナが話を切り換えた。

「あっ、そうだね。」〈!!?姉さん!〉
〈リーフ!!〉

リーフは気が済んだのか、大分怒りが収まっていた。

〈姉さん、無事でよかったよ!〉
〈リーフも。しばらく見ないうちに強くなったのね!〉

両者の目から涙がこぼれ落ちた。

〈本当に、無事で良かった!姉さん、ずっと会いたかったよ!!〉
〈私こそ!!〉

二匹のジャローダが駆け寄り、お互いが目前に迫った時、

〈!!つ!〉
「〈〈〈〈〈〈〈リーフ!!〉〉〉〉〉〉」さん!!〉

疲労が限界を越えていたため、リーフは崩れ落ち、意識を手放した。


 §10 End. To be continued...

@ ( 2013/06/23(日) 02:10 )