とある青年の物語 〜kizuna〜


























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§10 match in volcano
fifty-second
PM 2:00 デコボコ山道 中腹

先ほどまで戦っていた少年は下山していった。

〈ビブラーバ、動き、良かったわよ。〉
〈相手の影響があったからかもしれないが、隙がなかったな。〉
〈本当にっ?〉
「うん。昨日私と戦った時より背後に回り込むのが速かったと思うよ!」
〈動きが軽かったしね♪〉
〈でも、どうしてボクの戦い方がこんなに短時間でわかったのっ?〉
「トレーナーとしての勘、かな?」
〈あと、ユウキさん自身が戦った経験からですね。〉
「それもあるかな。 昨日のライトとの戦いから、ある程度ビブラーバの戦法を考察させてもらったよ。ビブラーバの場合、相手の死角から不意打ちを狙う戦法が一番いいかな。」
〈瞬発力、良かったわ。〉

それぞれが評価した。

「あと、ビブラーバは、スピード寄りの物理タイプかな。」
〈攻撃パターンはウチと逆だね♪ ウチはスピード特化型と言ったほうがいいけど……火力が弱いから、手数で勝負してるからね♪〉
〈スワンナはそういうタイプなんだねっ? みんなはどんな感じなの?〉

自分の戦闘パターンを知ったビブラーバは、他のメンバーのタイプも気になり、聞いてみた。

〈私は典型的な特殊特化型よ。〉
〈俺はエーフィーとは逆で物理特化型だ。〉
〈僕は物理技も特殊技もどっちもいけるから、バランス型かな〜。スピードもみんなの中では平均ぐらいだから〜。〉
〈僕はスピードは劣りますが、タイプの関係もあって物理寄りの守備型です。〉
〈へぇーっ。2人は?〉
「ライトにはまだ言ってないけど、ライトはスピード寄りの特殊型だと思うよ。」
〈ウチのスピードにある程度ついてこれたからね♪〉「私って、そんな感じなんだー。」
〈ええ。 ユウキはきっと物理寄りの特殊型ね。〉
「エーフィーとコジョンドには負けるけどね。」〈特殊技の威力も高いけど、[気合いパンチ]の威力も凄かったもんね〜。〉
「そのかわりに、守りはみんなの中では一番弱いけど。」
〈みんなはそんな感じなんだねっ?〉
「うん。」

ユウキ達は再び山頂に向けて登りはじめた。

 30分後 山頂付近

あの後、2、3人のトレーナーと戦い、ビブラーバスは白星を飾っていた。

〈あれ?ユウキくん、こんな所に洞窟があるよっ。〉
〈本当だ〜。〉

ビブラーバは登山道を4/5程登った所で土壁に開く黒い穴を発見した。

〈ここは何かありそうね。〉
〈他の場所とは雰囲気が違うな。〉
「確かに、そうだね。」
〈山頂のほうも気になるから、二班に別れて調査しない♪?〉
〈一カ所ずつ廻っていると、時間がかかりますからね。〉
「うん。そのほうがいいね。」
〈ということは、僕はいつも通りユウキさんとは別行動ですね。〉
〈コバルオンなら[絆]の力で意思伝達が出来るからな。〉
「そうだね。 僕はこの洞窟を調査しようと思ってるけど、みんなはどうする?」

ユウキは全員に意見を求めた。

〈僕は万が一の時のために、光を溜めやすい山頂にいくよ〜。〉
〈私はユウキと洞窟に行くわ。〉
〈たぶん炎タイプが多くなるから、ウチはジャローダの援護をするために山頂に行けばいいね♪〉
〈相性を考えると、そうなるな。 俺は洞窟にするか。〉
「エーフィーが洞窟なら、私は山頂にするよ。不意にされた攻撃を止めれるでしょ?」
〈ライトちゃんが山頂なら、にんずう的にボクは洞窟にいくよっ。ユウキくんにもっと技を教わりたいからね。〉
「よし。みんな決まったね。もし何かあったら、コバルオンを通じて僕に連絡して。」
「〈〈うん!わかった」♪/よ〜。〉〉

ユウキ達は二班に別れて、本格的に調査を開始した。

………

PM2:40 フエンの洞窟(旧マグマ団アジト) sideユウキ

〈洞窟だから大丈夫と思っていたけど、案外温度が高いわね。〉
〈ボクは平気だけど、ユウキくんは大丈夫なのっ?〉
「ちょっとキツいかな……熱がこもるのは体質的に弱いみたいだから……。」

ユウキは体中から汗を滝のように流していた。

〈姿、変えてみたらどうだ?〉
〈確かにそうね。今思い出したけど、砂漠も相当気温が高かったのにユウキは平気そうだったわね。〉
「そうだね。」
〈元の姿で技を受けると一発で倒れてしまうから、ポケモンのほうが体が丈夫ってことだね。〉

ユウキは姿を歪ませながら言った。

〈そうなるな。〉
〈ユウキの汗も止まったから、奥にすすみましょ。〉

エーフィーが言い、4匹は歩みを進めた。

………

同刻 デコボコ山道 山頂付近

〈ライト〜、汗が止まらないけど、大丈夫〜?〉
「ちょっと暑いかな。 汗が鬱陶(うっとう)しいから、元の姿に戻るよ。」

ライトも暑さに耐えかねてラティアスの姿に戻った。

〈やっぱり人間の姿だと、極端な気候に弱いからなー。〉
〈姿が違うと耐えれる温度がかわるんだね♪?〉
〈うん。 そういえば、みんなは私みたいに固有の名前とかあったりするの?〉

ライトはふと思い、他のメンバーに聞いてみた。

〈みんなには種族の名前で呼ばれてるけど、野生の時は別の名前で呼ばれてたっけ♪?〉
〈そういえば、僕もそうだったな〜。僕には兄弟がいたからね〜。〉
〈種族が被ってないので、固有の名前で呼ぶ必要がありませんでしたからね。 提案ですが、これからは今まで以上に[絆]を深めるために、固有の名前で呼び合いませんか?〉
〈うん、賛成だよ〜。〉
〈そういえば、ウチらはみんなの本当の名前を聞いてなかったね♪〉
〈せっかくの機会だから、良いかもしれないね。〉
〈そうだね〜。僕は野生の時は[リーフ]って呼ばれてたよ〜。〉
〈ジャローダは[リーフ]って言う名前なんだね♪?ウチは[スーナ]って呼ばれてたよ♪〉
〈みなさんいい名前ですね。僕は[コルド]という名前です。先代からそう呼ばれてました。〉
〈カッコイい名前だね。 後でエーフィー達にも聞いてみよっか。〉
〈そうだね〜。〉
〈うん♪ジャロ……リーフとコルドみたいに固有の名前があるはずだからね♪〉
〈もし、すぐに知りたいなら、ユウキさん経由で聞いてみましょうか?〉
〈うん。コルド、お願いね〜。〉
〈ウチも知りたいなー♪〉〈みんなはどんな名前なんだろうね。〉
〈なら、聞いてみますね。〉
(ユウキさん、そっちはどうですか?)

コバルオン改め、コルドは[絆]の力を使ってユウキに話しかけた。

………

PM3:00 フエンの洞窟 sideユウキ

《ユウキさん、そっちはどうですか?》
〈ん?〉
(コバルオン、どうしたの?)
《僕達は今のところ何も発見はありませんが、エーフィーさん達に聞いてもらいたい事があるんですが、いいですか?》

コルドは[絆]の力を使ってユウキに質問した。

(うん。何が聞きたいの?)
《はい。エーフィーさん達に固有の名前があるか聞いていただけますか?僕達のほうでこういう話が出たので。 ちなみに、僕は[コルド]という名前です。》
(えっ?名前?そういえば聞いたことなかったね。うん。コルド、だったよね?聞いてみるよ。)
〈エーフィー、コジョンド、ビブラーバ、ちょっといい?〉
〈ああ。しばらく黙っていたが、コバルオンから何か連絡があったのか?〉
〈うん。みんなには固有の名前があるのか聞いてほしいって頼まれたからね。〉
〈でも、なんでだろうねっ。〉
〈………〉〈聞いてみるよ。〉
(でも、どうして?)
《本当の名前で呼び合ったほうが今まで以上に[絆]を深められると思うんです。あと、スワンナさんは[スーナ]という名前で、ジャローダさんは[リーフ]という名前と言ってました。》
(確かにそうかもしれないね。うん、コルド、聞いてみるよ。)
〈本当の名前で呼び合ったほうが、[絆]をさらに深められるかもしれないからだって。〉
〈なるほどな。〉
〈やっぱりみんなにもあるんだねっ。〉〈確かに、そう………よね……。〉

エーフィーだけ表情が冴えない。

〈俺は [オルト]と呼ばれてた。ハーデリアと出会う前からな。〉
〈へぇー。ボクは同じ種族のひとがたくさんいたから、[フライ]って呼ばれてたよっ。エーフィーはっ?〉
〈私は……物心ついた時には……既に孤児(みなしご)だったから……固有の名前はないのよね………。私、幼いうちにユウキに拾われたから………〉
〈そんな過去があったなんて……。〉
〈俺も初めて聞いたな。〉

エーフィーは辛い過去をうち明けた。

〈だから、ユウキ、私の、名付け親に、なって、くれるかしら?〉

エーフィーは一言ずつ噛み締めながら言った。

〈うん。…………[シルク]はどう?〉
〈[シルク]………[シルク]ね……気に入ったわ!ユウキ、本当にありがとう!〉

エーフィー、シルクの頬に光るものが一筋流れた。

〈シルク、改めてよろしくな!〉〈シルク、よろしくねっ!〉
〈ええ。ユウキ、オルト、フライ、こちらこそ、よろしくお願いするわ!〉

こうして、エーフィーに新たな名前がつけられた。


■筆者メッセージ
今更ながら、エーフィー達に名前をつけました。

エーフィー→シルク
コジョンド→オルト
ジャローダ→リーフ
スワンナ→スーナ
コバルオン→コルド
ビブラーバ→フライ  

今回以降、メンバーの呼び名がこのように変わります。
@ ( 2013/06/16(日) 02:56 )