forty-third
PM3:00 砂漠 南部 祭壇前
〈……この砂漠一帯には遥か昔にとても栄えていた国がありました。〉
ノクタスが砂漠の祭壇について語り始めた。
〈その国は有能な王を筆頭とした議会を中心に統治されていた。そのため、周辺の国とも争いがなかった。〉
〈治安がよかったんだね?〉
〈はい。当時、その国の人達は[砂漠遺跡]に祀られていたポケモンを崇め、崇拝していた。〉
〈いわゆる、宗教だな。〉
〈そんな平和な国はある時、正体不明の何者かによって一夜にして滅ぼされた。〉
〈たった一晩でっ!?〉
それぞれが反応するが、構わず話を続ける。
〈その影響で遺跡の壁は崩れ、入り口は塞がれてしまった。〉
〈瓦礫に埋もれてしまったというわけね。〉
〈しばらくして、遠方から2人の若者がやってきて、国の無念さ、襲撃の悲惨さに涙し、後世にその事を伝えることにした。〉
〈伝承だね〜。〉
〈そこで、こんな伝承を残した。<石碑の障壁の破れし時、古の守り失せし事あらば、無常の理崩れるなり。>〉
〈何か意味がありそうな伝承だね。調べる必要があるかも。〉
〈そうですね。 ユウキさん、一応記録に残しておいたらどうですか?〉
〈そうだね。コジョンド、僕のバッグからノートとペンを出してくれる?〉
〈ああ。メモ用のノートだな。〉
コジョンドはユウキの代わりに持っていたバッグからノートとペンを取り出した。
〈今のところ、ウチらの調べている伝説と関連性はないみたいだけど、念のため記録に残しておいたほうがいいかもしれないもんね♪〉
〈どこかで繋がるかもしれないからね〜。〉
〈<襲撃された>っていう部分が無視出来ないわね。〉
〈うん。 これでよし、と。〉
ユウキはさっき聴いたことをノートにまとめ終えた。
〈さっきまで何を書いていたのっ? 読めないけど……。〉
ビブラーバがきいた。
〈ユウキくんは伝説とかを調べている学者なんだよ。〉
ライトが答えた。
〈学者っ?〉
〈そうよ。さっきユウキは元々人間だって言ったわよね。〉
〈そういえばそう言ってたようなっ………まだ信じられないけど……。〉
〈信用出来ないのも無理ないですね。ライトさん以外の僕達は、ビブラーバさんとは初対面ですからね。〉
〈そのうち証明するよ。〉〈ユウキくんは私が最も信頼している人のうちの1人だから。凄く強いし、しっかり者だから!〉
〈ライトがそう言うなら、そうかもしれないねっ。実際、ライトは前に戦った時より凄く強くなってたし。〉
〈そのひとは信頼出来るひとらしいですね。〉〈ノクタスさん、伝承を聞かせていただいて、ありがとうございました。〉
〈僕も聞けてよかったよっ。〉
〈こちらこそ。また、よかったら寄ってください。〉
〈うん。じゃあ、僕達はそろそろ行きますね。〉
〈なら、ボクが砂漠の入り口まで送っていくよっ。〉
〈うん♪お願いね♪〉〈うん。お願いね〜。〉
ユウキは軽く一礼し、[砂漠遺跡]をあとにした。
………
PM3:30 111番道路 砂漠 入り口
〈ビブラーバさん、ありがとうございました。〉
〈こちらこそっ。ライトちゃんにも会えて、友達も増えたからっ。〉
〈私達も伝承について聴けたから、とても助かったわ。〉
〈うん。 約束だから、僕も元の姿に戻るよ。〉
〈一応私も変えておこうかな。〉
ユウキは姿を歪ませ、ライトは眩い光を纏った。
〈本当に……人間だったんだっ………。〉
「本当だって言ったでしょ?」
「これが僕の本当の姿だよ。」
ビブラーバはピカチュウの変化に唖然とした。
〈人間の姿でも、私達の言葉が解るのよ。〉
〈ユウキは伝説に関わっていて、普通の人とは違って特殊だからな。〉
「うん。」
「ユウキくん、今度はフエンタウンに行くんだよね?」
「うん。そうだよ。」
〈温泉街で有名な町だな。〉「そういえば、ビブラーバって、前に旅がしたいって言ってたよね?」
〈えっ、うん。僕の夢のうちの1つだよっ。いつかこの砂漠から出て、色んな所を見て廻りたいんだよねー。〉
〈ユウキの手持ちの枠もひとり分空いてるし、もしよかったらウチらとくる♪?〉
〈旅がしたいなら、僕達で叶えられそうだからね〜。実際にビブラーバと話していて楽しかったし、ユウキ〜、いいよね〜?〉〈えっ!?〉
「私も賛成だよ!」〈俺は構わないぞ。〉〈ビブラーバも加わったら、ますます楽しくなるわね。〉〈僕も賛成です。〉
「ライトの友達みたいだし、ビブラーバに僕達と苦楽を共にする意志、決して切れない[絆]をを築き上げれるなら、歓迎するよ。」
〈俺達も大歓迎だ。〉
「みんなもこう言ってるし、ビブラーバ、どうする?」
〈うーん……〉
ビブラーバはしばらく考えた。
〈………うんっ、お願いしますっ!〉
〈決まったわね。〉
ビブラーバは肯定の意を示した。
「一応、ボールに入ることになるけど、それでもいい?ほとんど入る事はないと思うけど。」
〈うんっ!一度決めたら、もう揺るがないよ!〉〈僕達は回復とか、ジム戦の時ぐらいしか入ってないからね〜。〉
「よし!じゃあ、いくよ!」
〈はいっ!〉
ユウキはバッグから、空のモンスターボールを取り出し、ビブラーバに向けて投げた。
コツッ、という音と共にビブラーバは赤い光に包まれ、ボールの中に収まった。
一回、二回、三回揺れ、おさまった。
ユウキ達は黙ってそれを見守った。
「………よし、ビブラーバ、これからもよろしく!」
ユウキはすぐにビブラーバをボールから出した。
〈はいっ!よろしくお願いしますっ!〉
〈あっ、言い忘れたけど、ユウキを含めて、私達にはタメ口でいいわよ。〉
〈コバルオンはどうしてもって言うから、もう気にしてないけど、堅苦しい言葉使っているとできるはずの[絆]が深まらないでしょ♪?〉
〈気軽でいいしな。〉
「私もいつもタメ口だしね。」
〈<親しき仲にも礼儀あり>が僕の座右の銘ですから。〉
「ということだから、よろしくね!」
〈うんっ!よろしくっ!〉
ユウキ達にまた新たな仲間が加わった。
§8 End. To be continued...