0-while(1)
Re step 00-while(1)
「……はーあ」
口の端から溢れた声は、目の前のヤツが半分くらい吸い取った。
まぁ案の定の無反応。聞いてくれてるなら何か言ってくれてもいいのにね、なんて頬を膨らませていた自分は、果たして何日何月何ヶ年前にいるんだか。
俺はすっと目を細めると、握ったままだった冷たい物体を中空へと置いた。
「何戦何敗無引き分け。あなたは強いよ、本当に」
無機質な音を立て、それは仲間で出来た山に突き刺さる。
何十何百何千本、俺の戦友は増え増えて。そしてその度に俺は、裏切り切り捨て横目で流す。
「勝率ゼロパーセント。……あぁもう無意味だって? そうだろうね、数字のセカイじゃさ」
いつからかずっと対局し続けている相手を見上げて、それでもソイツは何も言わない。
ただ厳かに、俺に立ちはだかって。
俺はソイツに手をかざすと、そっと嘆息して、ひとり呟く。
「それでも俺は挑み続ける。何回負けようと、何回あしらわれようと、一回勝てば俺の勝ちだからさ」
こういうのも何回めだか、とぼやきつつ、俺は踵を返して体を伸ばす。最後に一度だけ、振り返ってみたところで、やっぱりソイツは変わらない。
俺は額を押さえて、錆び付いた金属の匂いのする山を蹴り上げた。
古鍵が一つ、中空を泳いだ。そしてそれは何も開かないまま、また山の中に埋もれて姿を消した。