99話 幻の大地へ誘う者
「おまたせ、シイナ!」
「遅いってばあああぁアクアジェット!!」
「すばしっこく逃げやがって! げんしのちから!」
「リーフブレード、っと」
身軽さを活かして一気に距離を詰めると、エルファは光溢れる尻尾を薙ぐ。体重のほとんどを占めるような重い殻を持つオムスターはそれを避けきれない。避けきれないからこそ、硬い殻からなる高い防御力で身を守る。
「いくら草技っつっても物理技じゃあな!」
「あっそ。じゃ、グラスミキサー」
シイナが斜め後ろにいることを確認してから、エルファは前に手を伸ばす。幾千もの葉がオムスターを取り巻くが、向こうも錬成した飛礫でダメージを減らす。
エルファはグラスミキサーの下を身を低くして潜り抜ける。狙い、睥睨、尾を振るう。――殻に覆われていない顔の部分を狙って。
「こっちも忘れてもらっちゃあ困るぜ!」
「忘れてないって。せっかちだね?」
天井から降りかかってきたもう一匹のオムスターを紙一重でかわす。指で触れる程度の距離を中心として、重厚感のある着地音が響いた。エルファは相手の落下中に狙い損ねたリーフブレードの構えをいったん解除して、彼らとの距離を取る。
「わざわざ近くに来てくれてありがとうなぁ! きりさく!!」
「そういうつもりじゃないんだけど、あぁ揃ってせっかちなわけ?」
周囲確認、全ての参加者との距離を確認。たなびくスカーフを右手で攫って、エルファは出せる力を使い切るほどに強く地面を蹴る。浮き、駆け、瞬間身を翻し、かわす。
かわしたのは安全のためが一つ。相手に隙を作るためが一つ、だ。
「アクアジェット!! ――間に合った!?」
「相手にああいうこと言わせてる時点で間に合ってないよ」
「厳しい!!」
アクアジェットを解いたシイナは肩で息をしていた。先ほどから駆けまわっては敵の意識を自分に向け、かつ三か所からの技の全てに対応するというハードな役を全うしていた。傷も多くなっており、可能なら休憩をさせたいところであるが、状況はそれを許さない。エルファは攫ったスカーフをひらりと解放し、ため息をついた。
オムスターはともかくとして、カブトプスとの近接戦は厳しいものがある。一歩間違えれば腹を切り裂かれかねない。
(スイと同じかー……)
エルファは二重の意味で苦い顔をする。ひとつは単に彼への敵対心、もうひとつはエルファがわざわざ近接戦を選んでいる理由でもある。
単純な話だ。失敗が怖い、それだけの話。
(この前の、スイと戦った時みたく、ミスってシイナとか……あとは負傷済みのチャトさんに当てるリスクが、ね)
今まで当たり前のようにできていたことが、突然できなくなる。その喪失感とタイミングの悪さと。磯の洞窟への同行を諦めるべきだったかとさえ思うくらいだった。
後者はリズムが対処してくれる可能性もあるが、現在手当に専念してくれている彼に余計な手間をかけたくない。彼とチャトの方にカブトプスたちの矛先が向かないようにするのも、エルファとシイナの役目だった。
そして、シイナに当てた場合――これに関しては言うまでもない。
「ま、言ってても仕方ないんだけどさ。……行くよ」
エルファは手をぴんと上に伸ばす。光が彼の手元に収束し、一つの形を為して輝き弾ける。
リーフブレードのアレンジだった。カブトプスに対して尻尾で戦っては、いつ切り落とされるかわからない。そんな懸念から即興で編み出した手法なので、現れた剣はゆらりと不安げに揺れるけれども。
エルファが薙いだ剣を、カブトプスは右腕の鎌で受ける。余裕そうに受けた顔も、タイプ相性のせいか、じわりとにじむダメージにほどけていった。
「しっかし昔来た草蛇そっくりだなぁお前。アイツも種族はわかんねぇが、似たような体してやがったぜ」
「っ、お兄ちゃん……!?」
時間切れでしおれたリーフブレードを薙ぎ払って消し、エルファはカブトプスの顔を見上げた。が、向こうはこちらを見下ろして鼻で笑うばかりである。
「ハン、兄弟揃ってご侵入とはなぁ!」
「それは謝るけどさ……ねぇ、その話もう少し聞かせてくれない?」
「笑顔で草技ぶちかましてきたやべえやつとしか覚えてないぜ」
勝たないと教えない、かと思いきや、案外あっさりと回答してもらえた。エルファは口角を上げると、再び草の剣を呼び起こす。
「それだけで十分だよ。俺の自慢のお兄ちゃんって断定できたから、さ!」
(でも、お兄ちゃんもここには来ていた……? いつのことだろう、大分前だとは思うけど)
慣れない剣技の合間では考えることも、記憶をたどることもままならない。背後でシイナがオムスターの相手をしている音を耳から流し、剣を薙ぐ。受け止められる。想定内、空いている右手で葉の竜巻を呼び起こす。
「グラスミキ――っ!?」
突如、全身を駆け巡るは鮮烈なる痛覚。カブトプスは「ハン」と鼻で笑ってこそいるが、今の一瞬で動いた様子はない。
そして一刻ごとに奪われていく体温と、色の変わった自分の下の地面を見て察する。
「しおみず使われた、かな」
「お前最初っから傷だらけだったもんなぁ! 草タイプ相手でもこんなに効くんじゃ面白いぜ」
「うわぁ性格悪いね?」
シイナはもう一匹のオムスターとの相手をしつつ顔をしかめていた。たぶん、彼女で対応しきれなくなってきたのだろう。
仕方ない。相手の力量もやわではないし、それを複数体相手にしていたら、当然疲弊はする。むしろここまでよくやってくれた方だ。
(複数相手に戦うってなると、やっぱり俺の特殊技が最適なんだけどね)
頭ではわかっていても、攻撃範囲を広げるのも、そもそも技を使うことさえもためらわれてしまう。
だから今劣勢なのだとわかりつつ、やはり、行動に移しきれない。
「――エールくんっ。こんな相手に苦戦するの、らしくないねぇ」
そんな声とともに周囲が黒煙に包まれて、エルファは手を引かれて煙の範囲外へと退避する。させられる。
「リズム……。参戦してきたってことは、そっちはもう大丈夫なの?」
「うん。だって」
リズムが振り返るのに合わせて、エルファもそちらに目をやり、胸をなでおろす。
「なるほどね?」
そこには、目にいっぱいの涙を抱えてチャトに声をかける桃色の姿があった。
もちろん我らがギルドの長、マルスである。
「最低限の手当てはして、あとは親方様に頼んじゃった〜。その方が適切だって思ったしぃ、……こっちが大変そうだったから、ねぇ」
微力だけどね。そう寂しそうに笑うリズムが、エルファにとっては何よりも頼もしかった。
「リズム。少しだけシイナと頑張ってもらってていい?」
「うん。そう言うと思ったよ。任せて、って言いたいけどさすがになぁ……早く戻ってきてね〜」
リズムは薄くなってきた煙幕の中を身をかがめて走り抜ける。黒煙を切る音が頭上を掠め、視界を晴らす。
「そこか――」
「もう一回、煙幕! ……ごめんねぇ、僕は戦いたくないんだよ」
行ってもなお、四方から水流だの岩だの飛んでくる。視界が悪いという状況はリズムも同じだから、一足違うだけで大ダメージを受けかねない。耳を立てる気持ちで音の発生源を判別、軌道予測。それを前も見えないまま繰り返す。
やがて黒煙に光が差した。リズムはひょいと飛び出すと、そこにいたポケモンに手を振った。
「やっほ〜、シイちゃん。そろそろ考えてた作戦やりたいんだけど、いけそう?」
「いいけど敵次第!」
「じゃあいけるねぇ〜。えっと」
「いける!? エルファじゃないんだから余裕ぶんなくていいよ!」
無意識に声を出せば、それは視界が遮られた相手にとってはヒントになる。リズムは目の前に身長ほどの渦を生むと、黒煙の中にえいやっと投げ込んだ。「ほのおのうず」である。
一旦立ち位置を変えつつ、ふたりはその「作戦」の概要を今一度確認する。
『リズム、……とシイナも。申し訳ないんだけどさ、遠距離技スランプ気味。うまく使えないんだよね』
『ダンジョン入ってから言う!?』
『ていうか言わないと怒るでしょ、シイナそういうの嫌いって自分で言ったじゃん? ……ま、一応練習はするけどさ、もし強敵さんと戦うようなことがあれば』
口角を上げる。華々しいまでの笑顔で、その場に舞う。
「――シイナもリズムも離れて、俺一人で戦わせて!!」
エルファは手を前にかざし、全神経を集中させる。散りそうなものもかき集めて、自身の眼前に身長以上の竜巻を呼ぶ。溢れ流れた風が煙幕を勢いよく散らしていった。
ひとつの指を弾くと、グラスミキサーはぴょんと上に跳ねる。そのまま腕を横に払えば、竜巻は意思を持ってオムスターを追う。
「エナジーボール!」
それに続くは草木の生命力を表現したかのような萌黄色。放物線を描きながらもう一匹のオムスターに狙いを定めていた。
(あー、でもかすってるだけだな、相手動いてないのに)
口元を手の甲で拭いつつ、突進してきた大鎌を右に二歩飛んで避ける。そちらに一度手をかざせば、生まれた二つの散弾は白く見えるほどの後光をなびかせて飛ぶ。
相手が切り裂くまでは想定内だ。だからこそ複数個放ったのだから。振り落とされる大鎌を横目にエルファは塩粒でざらついた地面を蹴って、オムスターの背後を狙う。
「固定砲台とか厄介だから先に倒させてもらうよ、グラスミキサー!」
巻き起こした葉は、しかし渦状ではなく、散弾として雨のように降りしきる。リィが葉っぱカッターをグラスミキサーのように扱う、「リーフスパイラル」を扱うのであれば、エルファはその逆だ。
オムスターたちは相殺では対処しきれないと踏んだか、揃って顔を殻に隠す。
「エナジーボール!」
「――スピードスター!」
いざ撃ち放とう、その矢先、エナジーボールの先を流れ星がきらめいた。がそれだけで互いに意図を汲み合えた。エルファはまっすぐに軌跡を目で追い、それをさらに草木色の双弾が走る。
「ぎゃああああぁ!!」
殻の中から反響した叫びが響く。エルファはにっと口元を上げると、その場で半回転して流れ星の生まれ空に左手を挙げた。
「ありがとね、リズム!」
「いえいえ〜、手出しちゃってごめんねぇ?」
「いいや? 助かったよ。俺一人でって言ったのはふたりに間違って当てないためだしさ」
そんな会話さえもカブトプスは待たない。狙う相手を切り替え、鎌を後ろに引く。
「貴様からやってやろうじゃないか!」
「言ったじゃん〜、僕は戦いたくないんだって、もうー……」
向こうの素早さは高い。避けたところで追われ、切られるのが筋だ。だからリズムはその場で高熱を起こし、炎として撃つ。
「効くわけねぇだろうが!」
「わかってるよ〜。でも、少しは動かしづらくなったんじゃないかなぁ」
リズムはにこっと笑うと、スピードスターを置き残して走り抜ける。
カブトプスは苦い顔をする。利き手はじりじりと蝕まれるように熱をもっていつ。いくら炎タイプに強い岩・水タイプとて、やけどくらいはするものだった。
「クソがっ!! こらえる!」
「うえぇ、そんな技使うの!? ――おいうち!」
息が上がりながらも、まだ戦意は失っていないようだった。厄介だ、と三名の意見が音もなく一致する。この効果はしばらく続くだろうから、つまり、技を当てようとも何度でも立ち上がる。たとえ利き手をやけどしようと、それに体力を蝕まれようと、屈することはない。
「うおおおおぉぉっ!!」
「本っ、当にアルトたちに先行ってもらってよかったよね!!」
「こんなんで足止めくらいましたーなんて、笑ってすらいられないからねぇ」
シイナ、リズムと思わずそんなことを口にする。向こうの方がタイプ相性が良いとしても、「こらえる」は構わずに不屈の体を生むわけで。
エルファはちらりと奥への道を見やってから、深くため息をついた。
「いつになったら折れてくれるかだけ教えてもらっていい?」
「ハン、貴様らをたおすまでだよ!!」
「うわぁカッコイイ。……俺たち、そこまでアンタを本気にさせるほどのことをした記憶ないんだけどね?」
向こうの燃えるような瞳とは反対に、エルファの表情は温度がなかった。左手でもてあそぶようにエナジーボールを作り、落とすように投げる。そのまま身をかがめ、もう一度エナジーボールを放つ。
だいぶん手慣れ、いつも通りに戻りつつある感覚とともに、着弾点は定めた狙いへと近づきつつある。
「いいリハビリになってよかったよ。……エナジーボール!」
掲げた左手の上に乗った宝玉は輝く。それは弾け、光を散らし、カブトプスの目に焼き付いた。
「ひ、ひぇ……」
目がくらんだカブトプスも、顔を出してぽかんとしているオムスターたちも、それ以上技を繰り出そうとはしない。互いに顔を見合わせると、一目散にどこかへと去って行った。
元々戦わねばならぬ相手ではなかった。誰もそれは追いもしない。むしろ、それより先に行くべき場所が、相手がいるのだから。
「……大丈夫です? チャトさん」
その声を聞いて、マルスは顔を上げた。いつもぴんと元気に立っている耳は力なく垂れていて、風船ポケモンらしい丸い体は今にもしぼみそうだった。
「うん、大丈夫だよ。……ごめんね、チャト。僕がもう少し早く来ればよかったんだけど……」
「そんな、親方様……。しかし、情けないですよね。同じ相手にやられるだなんて」
途切れ途切れの言葉も、荒い呼吸音の混じる声も、うっすらと開いた苦し気な目もいつもの彼とは真逆だった。
そんな顔をマルスはじっと見つめていた。翡翠の瞳を湖のように涙で満たして。
「そんなことないよ。チャト、あのときはすぐにやられちゃったから憶えていないかもしれないけど……でもね。カブトプスたちに襲われそうになった僕をかばってくれたのは、チャトなんだよ」
チャトの瞼がわずかに持ち上がる。記憶のどこにもなかった、その事実が、親方様の、マルスの口から語られていた。
「カブトプスたちは僕が追い払ったけど、チャトがいなかったら僕はやられていたんだ。チャトは、命の恩人なんだ。恩人で、一番の相棒なんだよ」
「そう、ですか……」
それだけ言うと、桃色の瞳を黒い瞼の中に隠した。
「親方様にそう言っていただけて、とても幸せです……」
チャトの首がかくんと揺れる。翼は今にも折れそうなほどにしおれていた。でもその口元は笑っていて、あれほどまでに苦しそうだった顔はどこか安らいでいた。
マルスは、チャトのくちばしから聞こえる呼吸音を胸に、ぐいと涙をぬぐった。チャトを抱えて立ち上がると、純黒のバッジをその手でしっかりと握る。
「ギルドに戻るよ。僕たちがここでできることはもうないんだ。……あとは、アルトたちに託すだけだよ」
異論はなかった。それ以上何の言葉も残さずに、全員が光に包まれて磯の洞窟を後にする。
ただ、向こうは無事に出発できたのだろうか。そんな心配だけ抱えたままに。
先に奥地へと到達していたメロディは、ある一面の壁に目を奪われていた。
壁画だった。ところどころかすれてはいるものの、力強い筆跡も、深い色彩も、悠然とそこに残っている。
何よりは彼らを引き付けたのは、そこに描かれていた絵だった。遺跡の欠片に描かれている模様そっくりなのだ。しかし、それ以上に緻密で繊細で、雄大だった。
壁画の向かい側は、まるで洞窟の出口のような顔をして海へと繋がっていた。ラピスは吹き抜ける潮風を浴びながら、横目で壁画を見上げた。
「他に仕掛けはなさそう、だから……。いせきのかけらをここに近づければ、行ける、はず」
「うん。間違いなさそうだよ。でもふたりが来るまでは待った方がいいよね?」
リィはいせきのかけらをぎゅっと抱いたまま、そう答える。ラピスはそっと目を閉じてから、きらめく海を眺めていたもう一人を見やった。
アルトはそれにさえ気が付かないまま、胸元のペンダントを握ってさざ波に見とれていた。
なんとかまとまったとはいえ、ぐちゃぐちゃの感情が完全にひとつになったわけではない。千切った長草を片手で乱雑に掴んだような気持ちは、どうしても残ってしまう。それもこれも――。
『あんまり、楽しみじゃないの?』
考えないようにしたって頭に残るから。何も知らない目が、高揚感に踊る顔が、どうしても、よぎる、から。
ちらり、覗き見た先にいる彼女は、自分よりも大きな壁画を前にきらきらと目を輝かせていた。ぶんぶんと揺れる葉っぱが、彼女の感情の全てを物語っていた。
やがて、足音が聞こえると、リィははっとそちらに目をやった。
「シュトラ、ラスフィア!」
「ようやく追いついた。時の歯車は?」
ようやく合流できたと思えばこれだ。さすがシュトラ、質問に移るまでが早い。アルトはバッグから時の歯車を取り出すと、外から差し込む日差しにきらめかせた。
「あと、ちゃんといせきのかけらもあるよ」
ラスフィアは静かに壁画を見上げた。リィはその横に立って、えへへと笑ってから、いせきのかけらを壁画に近づけた。
「わっ……!?」
「……眩し」
瞬間、遺跡の欠片は光り出して、呼応するように壁画も輝き始める。思わず目をつむりそうになる本能と、起きていることを見届けたいという思いが、それぞれの中で格闘する。
形を為した光の帯は、弾けながら海へと消えていった。それだけだった。
「え、えっ……?」
一番困惑していたのはリィだった。まばゆさを失い元に戻った遺跡の欠片と壁画とをきょろきょろと見比べて、視線だけで周囲に「どうしよう」と訴えてきた。
でもそれも杞憂に終わる。
「あれは……!」
光の抜けていった海の向こうから、一つの影が悠然と泳いできた。そのポケモンは顔がはっきりとする位置まで泳いでくると、にこりと微笑んだ。
優美なる曲線を描く、澄んだ青色の体が美しかった。
「はじめまして。アルトさんにリィさん、ラピスさん、ラスフィアさん、そしてシュトラさん」
よどみなく言い切る、歌うような中性的な声に、一同は「えっ」と声を上げる。
「なぜ俺たちの名前を知っている?」
「マルスさんから聞いていましたから」
いつの話だ。遡って、ようやく目星がついた。磯の洞窟に行くと決まったときに親方様は外出していて、だから時の歯車が奪われたときには後から話に混ざってきた。おそらく、あのときだろう。
「申し遅れました。僕はセイラといいます」
そう述べたラプラス、ことセイラは、ぺこりと頭を下げる。リィは慌てて、ラスフィアは戸惑いながらも静かにお辞儀を返した。
「キミたちは模様の光を放った。それこそが幻の大地へ渡る印なのです。さぁ、僕に乗って、海を渡りましょう」
「……お前は、いや、お前が」
聞いていた話と、目の前のポケモンが、アルトの中でぴったりと重なる。
「ええ。――幻の大地へ、誘う者」