旋律における原作解釈・考察
☆探検隊シリーズ、および旋律本編のネタバレを含みます
ここでは星の停止世界の旋律的解釈についてまとめていきます。
・一個人の解釈であること
・「旋律では」の話であり、私自身もこれに沿わない考察を他所で語る可能性があること
・原作設定と異なる可能性があること。特にリメイクなどで新情報が出たらそっちが正しいです
・文字数は本文だけでも5000字超あります
以上を踏まえた上で、よければお付き合いくださいませ!
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1.星の停止とダンジョンについて
原作情報
・時が狂っていることでダンジョンが増えている(しめったいわばに行く前のペラップ)
・時の歯車を取るとその地域の時が停止
・未来でも水路は水路、歩くと波紋が生じる=水は液体
・未来でもリンゴやタネなどが入手できる
・時が止まると水も停止、石のようになる(Chapter-14 くうかんのどうくつ後)
1.1 ダンジョンそのもの効果
旋律では星の停止に巻き込まれないための避難場所となっていました。
これは本編でも言った通りになります。原作アニメ(空)では、トレジャータウンにいた皆が星の停止に巻き込まれている。世界中ほとんどのポケモンはこの石化のような状態です。でも未来世界に生存ポケモンは一定数いるため、何かしらの回避策があるのは確か。それでダンジョンが避難場所という話が浮上しました。
さて、なぜダンジョンかと言いますと、上で述べたペラップの発言です。時が狂っていることをなぜ彼が知っていたのかが甚だ疑問なので信憑性には欠きますが、貴重な原作情報……。
時の歯車を取ることで停止するのはあくまでその地域のみです。たとえばキザキのを取ればキザキ周辺の一定地域までしか時間停止の波は進行しません。また、本編でユクシーたちが時の歯車を戻したり、主人公たちが訪れたりが可能でした。したがって、時間停止の波の進行が止まっていれば、星の停止に巻き込まれず停止地域と通常地域とを行き来できます。
上記を踏まえれば、そこにあらかじめ逃げ込んでおくことで星の停止の未来が確定しても生き残れます。でも、時の歯車が他の大陸にあるとは限りません。じゃあ救助隊など他作の子たちは為すすべがない、生存ポケモンは草の大陸だけか? これもまた違うんです。根拠はSE5、氷塊の島(旧:ふぶきのしま)での生存ポケモン。ほとんどは元からこの島にいたポケモンたちでしょう。ノクタスのように星の停止後に現れた可能性のある、雪山らしからぬ種族もいますが、みんながみんな時の歯車周辺地域に避難して生存、ここに移住してきたとは考えにくい。つまりは時の歯車には何ら関係のないふぶきのしまでも生き残る術がある。
そこでダンジョンです。時間が狂うにつれて増えるのは、生き残るポケモンを増やそうという防衛本能(のようなもの)のため。原作の範囲内であれば、未来の生存ポケモンの多くがダンジョン内やその付近にいたこともあります。以上から、ダンジョンにいれば星の停止には巻き込まれない、という解釈に至りました。
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要約すると、不思議のダンジョンだし不思議だし、時間や空間ちょっと歪んでそうだし生き残れるっぽいっしょ! ということです。
1.2 食料供給とダンジョン
原作の通りであれば、水は止まって石になっていますし(※未来で時空の叫びを試みるシーン)、木は育つことはないとされています。しかしダンジョン内には水路ありますし、落ちているリンゴやきのみは入り直せばまた新しいものが出てきます。
これはそのまま作品に活用しました。九章にあった「星の停止を生きるならダンジョンはむしろ恵みの土地」ってわけです。
これもまた、ダンジョンにいれば星の停止をやり過ごせることと原理は同じです。未来でジュプトル(アニメの声だと大人?)などが生きていることから、何らかで水・食料は継続的に得られるはずで、ゲームの状況からそのアテはダンジョンだろうとなるわけです。
その他、たとえばトロピウスの顎のバナナだとか、水タイプがうまく生成してくれた水なども食料にはなるでしょうが、ジュプトルの身内にはいなさそうなので、少なくとも彼ら一行はダンジョンで食料調達していたと思われます。
1.3 その他個人的に気になる点
そもそも、時限の塔の中にリンゴの木はなさそうなのにリンゴは落ちてます。その他きのみも同様です。ディアルガやダンジョンのポケモンが生きていくので食料あるのはわかるんですが、どこから調達されたものなんですか……。
こうした明らかに植生無さそうなダンジョンの食料論、考えはしてますが、まだ自分で納得いく考察ができていないので今後の課題です。
ひとまず、旋律内では前述の通り、水や食料はダンジョンで手に入れるものとしています。要点はこれです。
2.星の停止の諸環境
原作情報
・まっくら(byパートナー)
・岩が浮いているのは視認可能
・気温については言及無し
→桃セレ「太陽ってあたたかいんだ(あさひのなかでシーン)」くらい
・ふぶきのしまは星の停止後「より厳しく閉ざされた場所」と化した ※気候的な意味か単にダンジョンの難易度かは判然としないのでここでは触れない
2.1 気温
旋律では「過去の世界よりは寒い」くらいしか書いてないですね。夕方のまだ暖かい時間帯から未来へ行ったので、それよりは肌寒いだろうという程度です。草タイプのジュプトルが生存できているので極寒ではないです。
一応の旋律設定ですが、「@気温は世界全体でほぼ一定」「Aただし特に氷タイプや炎タイプが多ければそれに応じた気温になる」と考えています。
@準静的過程による
常に熱力学的平衡=温度や体積などが時間的に変化しない(平衡状態)と見なせるほどに、非常にゆっくりと状態が変化する過程。例えば、温度を10℃上げるために1分で0.1℃ずつ上げるような、ぱっと見は変化がわからないけどよく見れば変化している状態です。熱力学でよく出るやつ。
「風が吹かない」という星の停止の原則があるので、非常にゆっくりと熱が伝わって行く、結果温度や圧力はどこでも一定なので風の起こりようがない、という考え方です。世界全体としてはこれで、局所的であればポケモンの力で故意に風を吹かせたり温度変えたりもできるよ、と考えてます。
A特に伝説級ポケモン
ファイヤーのように燃えてるポケモンがいたらその周囲は暖かいよね、程度のふんわり認識です。
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「熱は原子の振動によるもの」という原則の下であれば、星の停止によってそれも停止、すなわち絶対零度になるのではーなんて考えもあるのですが、それを適用すると生存がシビアになりすぎるのでここでは考えてないです。
気温や熱の話は考察TLで定期的に上がっては色んな話が出てくるたのしいおはなしです。個人的には星の停止で一番難しい部分だと思います。
2.2 光量について
浮いている岩が見える、時間停止後キザキも真っ暗闇にはなっていないことから、時が動いているときに比べたら暗い程度だと考えています。グレースケール出力。太陽も月も光っているとは言い難いけどほんのり光は残っている様子です。
2.3 水と植生
1.2参照
3.セレビィについて
原作情報
・桃セレは朝日を見たことがない
・空で仲間にできたり、超で出てきたりするセレビィは通常の緑色であり、話し方も異なる
・緑セレの未来世界での存在は不明
以上より、旋律では「緑セレと桃セレは別個体である」ことを前提にしています。また、セレビィの地力による時渡りだけでは星の停止が起きる前には行けませんでした。
緑セレについては本編では明記されませんでしたが、緑セレが死亡したことにより新しいセレビィとして桃セレ=キルシェが生まれた、として旋律は組みました。
桃セレが生まれたのは星の停止後と推測されます。彼女が朝日を始めて見た(SE5にて)と述べているからです。また、時渡りができるのだから、あれほど興味があるなら見に行けばいいものを行かなかった。行って見るだけであれば歴史改変にはあたらないからディアルガに追われることもない。これらのことより、星の停止前後をセレビィ自身の力で行き来することはできない、という設定になりました。これは後述の時の回廊の項でもまた触れます。
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余談ですが、旋律では基本的に、伝説・幻のポケモンには種族名がありますが、個体名がありません。ダークライもまた「個人を定義する名前はない」と述べていました。個体数が少なく、種族名さえあれば困らないというのが理由です。しかし、キルシェの場合はアルトたちが個体名で呼び合っている様に憧れていて、それを知ったラスフィアが名前を付けてあげた……という経緯で名前持ちです。完全に裏話ですね。由来はドイツ語の桜を示すキルシュバウム(木)/キルシュブリューテ(花)から、語感をアレンジしてキルシェです。
カタカナ表記は目安なので正確な発音は翻訳ツールや辞書など使ってくださいませ。
4.時の回廊について
原作情報
・大きく時間を超える時渡りに必要(森の高台に向かう桃セレ発言)
・セレビィが任意に場所を動かせる
・歴史がまさに変わっているときに壊すと大変なことになる
・↑壊すことは可能。暴走したディアルガは本能的にそこに向かい破壊を狙った
・過去の世界にあるかは不明
4.1 時の回廊と旋律
「時の歯車を用いて時の回廊を作る」。これは完全に旋律での2次創作です。時の回廊が歯車と同じ綺麗な色をしていたのと、砕けた時の歯車が見たかったからです。
九章で「回廊は使えない」なんて話が出てきました。使えない要因としては
・SE5同様の流れでディアルガが壊した
・星の停止に抗おうと、そこにあった時間のエネルギーを使い切った
・星の停止の方が強く、回廊も巻き込まれた
・そもそも時の回廊は過去になかった
※星の停止を越えるための橋として作られたという可能性です。
旋律ではとてもぼんやりした表現をしていますので、どの可能性も残っています。
ラスフィア「今使える状態にない」
エルファ「新しく作れるの?」
今使える状態にないというのは、このまま未来が進行していけば、いずれラスフィアたちの生まれた未来に漸近していく。そうすれば時の回廊は、過去の世界での有無に関わらず、どこかのタイミングでキルシェとともに存在する。もしあったとしても今すぐに場所を特定できるものではない。これらの可能性を内包した表現です。原作での情報からどの説も可能性があるんですよね、考えるの楽しい。
ともかく、時の回廊を作る必要があるというわけで話は進みます。
時の回廊は結局、緑セレビィの体力 時の歯車の力を使うことで完成します。4つでもできなくはないですが、時渡りを使う力は残らなかった。つまり安全な場所(少し先の未来)で作ったり、その製作時間をスキップさせたかのように時渡りを使いこなすことは不可能でした。これによりセレビィは完全に動かなくなってしまうため、このまま行けば次世代のセレビィ、キルシェにあたる個体が生まれます。
ダークライも原作同様の能力(EDストーリーラストのそれです、旋律では書いていないのでぼかし表現で)があるため、時の回廊がある場所まで追うことや星の停止を迎えた過去に渡ること自体は可能です。しかし具体的に過去のどこに降りたかはわからない。そこで、十章の彼は前者の手段、時の回廊を通って現れました。戦っていたはずのふたりは想像に任せます。
4.2 時空ホール
なんでヨノワールが使えるのかわからないんですよね。たぶん、ジュプトルを捕まえたときのあれは彼が開いたと思うんですよ。捕まえたので帰りますなんてディアルガに通信する術がないし、かといって、ヨノワールが過去に渡ったそのときからずーっとそこに開きっぱなしなわけはなかった。また、いずれもヨノワールが入った瞬間に消えるためです。おそらくは、闇のディアルガに力を授かって使えるようになったのでしょうけど、個人的に制作裏話聞きたいところですね。
原作で使っていたもうひとりの方はまぁ、使えてもおかしくないとは思うのですけど。
原作の情報がもっと欲しいですね。
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さてさて話が逸れました。こちらもまた、時の回廊同様に星の停止を超えられる手段になります。
ヨノワールが使えたことからディアルガの加護を受けた能力と思われます。後天的に身についたもの。
旋律では、セレビィ自身の時渡りでは星の停止を超えられない、としていますので、それよりは強いタイムスリップ手段になっています。時の回廊同様に大きく時間を超えることが可能です。これは一番根拠ある説明が「原作がそうだから」、以上になってしまうのですが……。
個人的な解釈では「時空ホール」という名前から、時間と空間が絡む手段であると考えています。この空間を渡る作用がセレビィの時渡りと異なる点で、単に過去に渡るだけじゃうまくいかないタイムスリップを成功させる鍵、と解釈しています。
時空ホールや時の回廊で飛んだ後って、その前とは明らかに異なる地点に降りるんですよね。たとえば、森の高台→海岸のように。映画などでは同地点の過去、未来へ移動している様子でした(全て検証できてないのですが、このイメージが強く……!)
このことからも、回廊と時空ホールは、空間に多少の影響を受けながら、もしくは与えながらタイムスリップする手段と考えています。
5.結びに
最初にも述べましたとおり、これは一個人、一作品としての解釈・考察になります。粗もありますし、妄想や自己解釈も多いので、ご自身の考察の際には原作情報第一でお願いします。
せっかく星の停止を重視した作品だったので、個人的に考えていたことの覚え書きがてら! もっとゆるく書くはずがかっちりしたなぁ……。
旋律の補足や、探検隊の2次創作や考察に興味のある方の参考になりましたら幸いです。
疑問投げたときに一緒に考えてくれた考察勢の方々ありがとうございました! 一部参考にさせていただいております。
2021.3.30 音々/みくるべ