鉄のように硬い意志の男
「イワーク戦闘不能!ポリゴンの勝ち、よって勝者!ユウ!」
こうして、ニビジムの戦いがちょうど終わった…
「ユウ、俺に勝った証だ、グレーバッジ…受け取ってくれ!」
「ありがとうございます。ありがたくいただきます。」
戦いが終わるとお互い先程まで戦った者たちと思えないほど緊張感がなくなり、バッジを受け取る。
「タケシさん、ひとつ聞きたかったんです……」
「何だ?何でもいいぞ?俺に答えられるなら、、、」
俺はひとつ疑問を持っていた。その答えを聞こうとしていた。
「タケシさんは、本当にジムリーダーで満足してるんですか?」
「それは、どういう意味だい?」
すごく失礼な質問かもしれない。でも、タケシさんは俺の話を聞こうとしてくれていた。
「いえ、ジムリーダーが悪いというわけではありません。むしろ、俺の夢です…タケシさんは俺と同い年ながら、ジムリーダーをやっている。かっこいいです……ですが、本当は何かやりたいことがあったんじゃないかって…戦ってみてそう思ったんです。ムノーさんの行方が分からなくなってから、タケシさんは家族のためにとジムを続けてきました。だからこそ、本当は何かやりたいんじゃないかって……」
「そうか、じゃあ!その答えを今日は見せてあげるよ。そのために今日はうちに泊まっていってほしい。君のようなトレーナーが来ると知ったら弟や妹たちも喜ぶよ」
「えっ、、、いいんですか?迷惑でなければぜひ…」
タケシさんの話を聞いて、少し驚いた、、うちに泊まれば答えが分かるって、どういう意味なんだろうと思ったが…まぁ、ジムリーダーの家に泊まれるなんてそうそうないことだって少し嬉しかった。そして、そのままジムの裏のタケシさんの実家へと向かった…
「ジロウ、サブロウ、ヨモコ、ゴロウ、ムツコ、ナナコ、ヤオキ、今帰っだぞ〜」
「タケシお兄ちゃんお帰り!そっちの人は?」
「あっ、トキワシティから来ました…ユウです…」
最初は一瞬何かの呪文かと思ったけど、、、よく聞いたら家族の名前か…凄い数いるな…そして帰っだぞ〜と帰ってくると、先程審判してくれたジロウ君しかり、たくさんの子供たちが迎えに来た。ていうかみんな同じ顔?!すごいな…で自分のことを指されたので焦って自己紹介をする。年下でもタケシさんの弟だしなと思いながら敬語を使いながら話す。
「ユウ、もうジムじゃないんだから…気楽にしていいぞ?まず俺にも敬語使わなくていい、同い年じゃないか」
「あぁ…う、うん。」
俺の夢であり、尊敬するジムリーダーを呼び捨てでタメ語で話すだとそんなことしたら、ジムリーダーを目指す人たちにいずれ呪われそうだ…
「タケシお兄ちゃん、お腹すいた〜」
「待ってろ〜今、お兄ちゃんが作ってやるからな!」
帰ってすぐ、子供たちの誰かが、そう話した。俺は兄妹がいないから、羨ましいな。でも、タケシは大変そうだけど…
「あの、ユウさん…ちょっと…」
「えぇと…君は、確かジロウ君、だったよね?どうしたの?」
ジロウ君は、ちょっと俺に話したいことがあるようで、俺をひっそりと呼んだ。
「あ、あの…やっぱりポケモンマスターを目指してるんですか?旅をしてるんでしょ?」
「まぁ、今は、ポケモンリーグ制覇を目指してるよ…でも本当は、ジムリーダーになりたいんだ、、、君のお兄さんのようなね、でも俺はまだ実力が足りなくてね…人としてもトレーナーとしてもまだまだなんだ、だから一流になるために今は、一流のトレーナーが目指す道を目指してみようと思ったんだ。」
「そうなんだ…」
ジロウ君は意外そうな顔していた…
「実は、僕もジムリーダーになりたいんだ…いずれは兄さんの跡を継ぐんだ…兄さんは、実はポケモンブリーダーになりたかったんだ。でも父さんが行方をくらまして、家族を養うために今は、ジムリーダーをやるしかないんだ。いずれは、僕がジムリーダーになって兄さんには夢を目指してもらいたいんだ」
そうか…タケシにそんな事情が….家族のために頑張ってるんだ。ジムの経営と共に家事までやって、、、本当に凄い人だ……
「ほら、ジロウ!ユウ!ご飯できたぞ!早くしないとなくなっちゃうぞ〜!」
タケシの呼ぶ声を聞いて、ジロウ君との会話をやめ飯に向かった…そうして、タケシの家族と楽しいひととときを過ごして、次の日を迎えた…
「そろそろ行くんだろ?答えを言ってなかったな。」
「いや、わかったよ…タケシにはあの子たちがいる。あの子たちと一緒にいるから…あの子たちを幸せにしてあげたいから…タケシは、ジムリーダーであることに何の不満ももっちゃいないんだろ?」
「分かってるじゃないか…俺は、本当はポケモンブリーダーになりたいんだ。でも、こいつらのためなら俺はジムリーダーでもいいんだ。この職も嫌いじゃないしね。人の成長に立ち会えるし、俺はジムリーダーも好きだよ。俺は、あいつらがいるから頑張れる!あいつらがそれぞれ幸せで行けるなら俺は……それでいいんだ…」
タケシのジムリーダーへの思い、家族への思い。全てを聞くと俺は、とっさに口が開いた…
「タケシは、、、ジムリーダーとして、これ以上ないほど、、、いい人間だと思う。家族を愛し、ジムリーダーという職を愛し、ポケモンを愛し、ジムリーダーとして最高の人だと思う。でも……なんでかな、、、俺にはポケモンブリーダーを目指してほしいと思う。家族のこともあるから俺があまり突っ込める話じゃないけど、タケシはポケモンブリーダーが似合ってると思う。タケシほど努力してる人こそ、夢を追ってほしいと俺は思うよ。」
失礼かもしれないけれど、俺が思ったことを全て口にしたつもりだ。タケシには夢を目指してほしい。それが俺の思いだ。
「ありがとう…気持ちだけで充分だ。お前ならいいジムリーダーになると思うし、カントーリーグ制覇もできるさ…ここを先に出れば、おつきみやまがある。その先にハナダシティがある。そこが次のジムの場所だ、、、ユウ!頑張れよ!」
「あぁ、頑張るよ。」
俺とタケシは熱い握手をかわし、ニビジムを後にした……
2年の月日が経った時、ピカチュウを相棒とした1人の少年が…タケシの元を訪れたとき、、、タケシの父も帰ってきて…その少年と共にポケモンブリーダーを目指す旅に出たことは…ユウのまだ知らない話。
「よし、次はハナダジム!引き締めていくぞ!」