#104 違和感と安堵の支え
「はあはあ……やっと……やっと抜けたでゲス!!」
なんやかんやありながらもツノ山を越えたシズク、ケンジ、サン、フライ、ベントゥ五匹のグループは、洞窟から外に出た瞬間目についたプクリンギルドのベースキャンプに真っ直ぐ走ってきた。
五匹ともに傷が目立ってはいたが、誰一人欠けること無く此処まで来れていた。ダンジョンの危険性は遠出なほど高まるが、五匹はしっかりと難関を越えてきていた。
山中や、此処まで来るまでの道中とは違い、此処にはかなりの霧が立ち込めていた。その霧を透かして見えるキャンプ場には、いかにも『プクリンのギルド』と強調しようとしているのかパティの顔がプリントされたテントが張り巡らされていた。そこらに、先についた弟子達がたむろしていてテントに荷物を置いたり、木の実をかじりながら少しくつろいだり思いも思いの時を過ごしていた。
シズク達はまず着いたことをラペットかパティに伝えなければと意見が一致し、その二匹どちらかを探してキャンプ場入り口付近をうろうろとしていた。ラペットとかは何処にいるのだろう、と霧が濃い中でぼそぼそと話していたのだが、その時のシズクの声が妙に虚ろで、動きも何だかふらふらしていたので、ケンジは少し心配になっていた。
「おい、そこにいるのはベントゥ達か?」
「うん、そうでゲス!あ、ラペットでゲスか?」
「そうだ。お前達も着いたんだな。
やけ遅かったな?もう他の皆はとっくに着いて準備してるぞ!!」
すぐ隣からラペットの高めな声が聞こえて、そちらに目を凝らすとあの派手な音符鳥が見えた。到着を確認した途端に遅刻を責め始めるラペットは、やはりラペットであった。
だが周りを見てみれば、まだテントに荷物を置いている段階だったりとそこまで遅れている訳ではなかった。それなのに妙に短気なラペットをケンジとフライは物凄く冷たい目で射すような視線を送っていた。サンも周囲を見渡して反論したげに口をごにょごにょと動かしたが、最終的には呆れた表情で溜め息をつくに留めた。
けれど……いつもならこんな理不尽なラペットの言い分には真っ先に反論して論破する筈のシズクが、なにも言葉を発さなかったのだ。何処か上の空で、目線は宙をぼんやりと漂っている。こんなシズクは正直見たことがなかった。常に彼女の傍にいたケンジはその違和感をどうしても拭うことが出来ずにいた。
「さあさあ、早く荷物を置いて。お前達で全員揃ったから作戦会議をやるよ。
テントの前には名前が書いてある看板が置いてあるが、念のため先にそれぞれどのテントか言っておくぞ。ベントゥは一番奥のところ……そう、ノンドがいるところだ。チームエメラルドとガーネットは左奥の同じテントだ。それぞれのテントに荷物を置くんだぞ。じゃあ、準備が出来たら森の入り口辺りに来てくれよ」
言い終えたラペットはすたすたと皆が集まっている辺りに向けて歩き去ってしまった。ベントゥもエメラルドの二匹も談笑しながらテントの場所に行ってしまう。それでも、シズクは動いていなかった。
何なのよ、此処は一体。
ベースキャンプに辿り着いてから、シズクの頭の中をその疑問が埋め尽くしていた。濃い霧。緑の薫り。雰囲気。どことなく不思議な感じ。此処に来たときから本当は気付いていた。否、多分遠征について霧の湖と聞いたときから気付いていた筈だ。その不可思議な気持ちに蓋をしていただけだ。
彼女が今現在持っている記憶を探っても、この場所の詳細を生み出してくれるものは一切無い。此処に来たことは一度もない___筈なのに。
何故だろうか。何故こんな気持ちになってしまうのだろうか。来たこともないのに。記憶にも残っていない筈なのに。なのに、なんで。
今感じていることが本当に可笑しいと感じる。興奮とも取れるような、背筋がぞくっと逆立つような変な感覚。不意に起こる動悸に意識が持っていかれそうになるが、彼女はそんな状態でもはっきりと言えることがあった。
___この場所は、知っている。
理由は分からない。見たことも聞いたことも雰囲気も知らない。知らないのに知っている。自分自身知らないと思い込んでいるが、実はそうではないのでは、と思えるほどにも感じるもの。何も知らない筈なのに、此処に来た瞬間に『知っている』と思い浮かんだのだ。
ふと、この感覚は過去の自分が此処に来たことがあるから感じたのではないか、と頭に浮かんだ。記憶は確かに無いけれど、一度感じたことのある『感覚』なら身体が記憶している可能性だってある。その『感覚』が、強く強く彼女に語りかけている。
だが……もし過去の私が此処に来たことがあるのなら、それは何故だ?霧の湖は今まで探検隊達が挑戦しては挫折し、霧により他のポケモンを寄せ付けない『伝説』とまで言われた場所。そこに、なぜ私は訪れたのか?過去の私は探検隊だったのだろうか?いや、それにしては探検隊という単語を聞いてもそこまで反応するものは無かった。なら……何故?何のために、何の目的をもって私は此処に来たのだ?その時私は独りだったのか?それとも誰かいたのか?もし目的があって来たのならその目的とは一体なんだ?過去の自分が残した軌跡を見つけたような気がして嬉しい筈なのに、数え切れないほどの『分からないこと』が頭の中で反芻されて、そのせいで今まで振り払っていた事実が目の前に突きつけられて。
記憶を無くす前……私は何処にいた?誰といた?それに私は一体___何者だったんだ?
「シズク?……シズク、大丈夫?」
少し低めのテノールの声。続けてぽんぽんと肩を叩かれる感触。それらにより目を覚まされたシズクは一瞬呆然として辺りをきょろきょろと見回した。漂っている濃い霧は変わらずに流れていて、わいわいと楽しそうに会話を交わすギルドのメンバー達。彼女に声を掛けたのは他でもないケンジである。
「大丈夫?なんかさっきからぼーっとしてるし……疲れたならオレンあるよ」
「だ……大丈夫。心配しないで」
「そう?ならいいんだけど。
説明されたんだけど、俺達のテントはエメラルドと同じで……左奥の方。そこに荷物置きに行こ。置いたら作戦会議だって」
溌剌と話す彼を目にして、今はケンジに従おうとシズクはゆっくり身体を方向転換させた。まだ脳内では激しく疑問のぶつけ合いが沸き起こっていて自分でもどうしようも出来なかった。この感覚についての説明が欲しいのは彼女自身なのだ。考えないようにしたくとも、ベースキャンプにいる限りどうしても浮かび上がってしまう。そのせいでぼんやりしてしまうのも悩みの種だ。
「シズク、気分悪い?なんかふらふらしてるよ」
「大丈夫……気に、しないで」
テントに荷物を置いたあと、シズクはふらーっとケンジと共に皆が集まっている場所に歩いてきた。シズクの行動の可笑しさを目敏く察知したサンはシズクに労いの言葉をかける。だがシズクは相変わらず『大丈夫』で済ませてしまう。明らかに大丈夫ではなさそうなほどふらふらしているが。
「もしかして、霧のせいとかじゃないか?」
「霧?霧がシズクに影響してるの?」
「霧って電気タイプに結構影響するんだよ。天気が霧の時は電気技の威力落ちるし。体調も悪くなっちゃうのかなあ……?」
「さあな。なんか湿気とかが関わってんのかな?とにかくこの先のダンジョン霧っぽいからシズク要注意だな」
自分がふらふらしているのは霧のせいではないと分かっていたシズクだが、考えてみれば確かに少し息苦しい気もする。これが霧のせいなら、この中を探索するのはかなり気が引けた。攻撃力が下がるというのも考え物だ。
「もしキツかったら早めに言ってね」
「……分かったわ」
今日は妙にシズクが素直なのは、霧のせいではないだろう。
「………よーし、皆どうやら無事にベースキャンプに着いたようだな。ではこれより……霧の湖の探索を行う♪
見ての通り、此処周辺は深い森と濃い霧に覆われている。そして、この森の何処かに霧の湖が存在するはずなのだが……今のところは噂でしかないのだ。これまで色々な探検隊が挑んだがまだ発見もされていない」
「他の所でも駄目なのに此処で発見できるのか?」
「ヘイヘイ!!そもそも、霧の湖って本当にあるのか?」
「まあフライ、ヘイライ。そんなこと言ったら夢が無いですわ。私達は探検隊。未知の場所に夢を持って挑む職業ですわよ」
「そうだそうだ!今更そんなこと言ってどうするんだ!!」
「ヘ……ヘイヘーイ……」
霧の湖についての有無を議論し合う弟子を眺めながら、ラペットはそう思うのは仕方ない、と内心頷いてはいた。噂だけがあるのなら、そもそも存在自体が曖昧だ。今回の遠征だって霧の湖が存在しない、ということさえ考慮してはいる。
そうしてラペットが話を進めようとした時、澄んだ綺麗な声が聞こえてきた。その方を見てみれば、ウェンディが白い小さな手を挙げて意見を述べようとしていた。
「ん?どうした、ウェンディ」
「あの……私、此処に来るまでに、ある伝説を聞いたのですが………」
伝説という言葉に、霧の湖在るか無いか論争(主に一方的にヘイライがシニーに責められていたが)をしていた者達も反応してウェンディの方に顔を向けた。
「……伝説?」
「はい。此処……霧の湖にまつわる伝説です。
道中、旅の者から聞いたことなんで信憑性は薄いかもしれませんが……何でも、霧の湖には『ユクシー』という、とても珍しいポケモンが棲んでいるらしいのです。
そして……そのユクシーには、目を合わせた者の記憶を消してしまう力があるそうなんです」
記憶を、消してしまう力。それには皆がどういうことだ、とざわざわしてしまう事を止めさせる事など出来なかった。ラペットだって、そんな力の話は聞いたことがなかったし、ユクシーなんてポケモンの名前も、今まで耳に挟んだことがなかった。
「記憶を……消す……」
「なので、もし霧の湖を見つけても、訪れることが出来た者がいても……ユクシーによりその記憶を抹消されてしまうので、霧の湖の存在を伝えることが出来ないそうです。つまり、もしかしたら此処に来たポケモンがいたかもしれないけれど……自分では覚えてない、そういうことです。
そういう力を駆使して、ユクシーは霧の湖を守っていると。こんな伝説が残されているそうなんです」
「ちょ……ちょっとおっかない話でゲスね……」
ベントゥの言葉を皮切りに、ユクシーや『力』についての話し合いの輪がどんどん広がっている。その中で、驚ているように見えるが、少し目が表情とかけ離れているような……まるで全く驚いていないような感じがする相棒であるフライの事をサンは不思議そうに見つめていた。
そして、今暴露された伝説について、最も衝撃を受けたのはシズクであった。
(ッ………どういうこと?)
最初聞いたときはどういうことなのかが直ぐに理解できなかった。徐々に意味を理解していって……そして、頭の中で何かがぴったりと嵌まってしまった。
記憶を消す力を持つポケモン、ユクシー。そして此処に来たとき感じたこと。この二つを足し算すれば、簡単に答えが出てしまう。私は此処に来て……そしてユクシーに会い、記憶を消された。ポケモンになってしまった説明はつかないけれど、私は記憶を無くす前人間だった。だから、記憶を消されたあとユクシーに何らかの操作をされて……ポケモンになってしまった可能性だって拭いきれない。
それなら。何故私は此処に来たのだろうか。伝説や噂しか残されていなくて……今まで探検隊が探索の目的で入り込んでいたはずのこの場所で……探検隊でもなかった筈の私は一体、何をしていたんだ?本当に、これほどまでに願ったことはない。私が何者なのか、知りたいと思った。記憶が戻ってほしいと思った。そうすれば、簡単なのに。そうすれば、あっという間に答えが導き出せるのに。
でも、本当に知りたいのだろうか。もし知ってしまったら……私はどうなってしまうのだろうか。
「わし、記憶を消されたらどうしよう!!」
「あら!あなたは心配ないですわ!だってそうじゃなくても物忘れが激しいじゃない」
ノンドとシニーが口論しているのが、その口論の内容が、すごく平和に聞こえた。目を見開き、この伝説に尋常じゃないほどの驚きを示しているシズクの気持ちを唯一理解できるケンジは、彼女に心配そうな目を向ける。
「シズク……この話……」
「っ分かっ……てる……ッ」
答える彼女の声が震えていた。まるで彼女の心臓が波打っている音が聞こえてきそうなほどだ。シズクの不安に比べれば、事情を知っているだけのケンジにしてみればその不安の僅か十分の一くらいしか分かることができない。それでも、彼女の不安を和らげることは、出来るかもしれない。ケンジはシズクの肩に手を置き、自分の方に寄りかからせるような形にした。シズクはそれに従い、ケンジの肩に頭を少し持たせかける。
「ノンド、シニー、いい加減喧嘩は止めなさい、いいとししてみっともないぞ。
……まあ、こういった謎めいた場所には大抵言い伝えや伝説が残されているようなものだ。そして我がギルドはこれまでもそういう困難を乗り越えて探検してきたのだ♪」
「その通りですわ!」
「それこそが親方様のギルドが一流とされる由縁だからな」
「フフフ。心配いらないよ。今回の冒険も成功を信じて……頑張ろ♪頑張ろ♪」
パティの独特な応援に和んだのか、先程までユクシーだの記憶を消されるだの不安の種が有り余っていた筈の皆にも笑顔が垣間見れていた。
「それでは今回の作戦を説明する。
まず、私と親方様は此処ベースキャンプに残り皆から探索の情報を集める。そして皆は各自森に入り中やその奥を探索してくれ。ただし、見ての通りこの森は奥へ進むにつれ霧が深くなっていってるいるから非常に分かりにくい。多分この靄のせいで霧の湖が発見しにくくなっているのだと考えられる。もしかしたらこの霧を取り払う方法があるかもしれない。なので、もし探索中に霧の湖を発見する、もしくは霧を取り払う方法を見つけたら一旦ベースキャンプに戻り私か親方様に伝えてくれ。
以上だ♪それでは皆っ♪頑張って行こー!」
おおーっ!!と、元気のよい掛け声が響いていく。その声は、これから進んでいく霧の湖、そしてユクシーに伝えるように響いた掛け声でもあった。そして皆は散り散りになっていく。
「シズク、大丈夫……?」
「はあっ……大丈夫……大丈夫よ……」
シズクは悩みすぎなのか若干過呼吸気味になっていた。胸を押さえ、荒い息を吐きながらも頭の中はまだ疑心暗鬼に満ちている状況だ。苦しかった。あまりにも当てはまりすぎるこの状況に。過去の自分の手掛かりに。自分が何者なのかという真実に。鼓動が煩くて、そのせいでもっと苦しくなってしまう。落ち着くなんて無理だった。
「……ケンジ……」
「絶対大丈夫じゃないよね……うん、少しずつ、少しずつでいいからさ」
ケンジはシズクの背中を優しく擦り、どうにか落ち着かせようと頑張っていた。そんな彼の気遣いに気付いたのか、シズクは深呼吸でどうにか動悸を収めようと頑張る。だがそうすればそうするほど脳内に疑問が浮かび上がっては消えを繰り返してしまう。彼女は一瞬足の力が抜け、かくんと地面に座り込んでしまった。
「ケンジ、私が考えてること、分かるわよね」
「分かるよ。俺も気付いた。衝撃だった。でも、シズクはそれ以上だったと思った。なにしろ自分の事だもんね」
「うん……そうね………」
彼の言葉を聞き、シズクは少しほっとしたような気持ちにもなった。そうだ、私には私の気持ちを理解してくれるポケモンがいるんだ。私の悩みを理解してくれるポケモンがいるんだ。私だけで抱え込む必要はないんだ。そう考えると、少し楽になった。
「私は……私が分からない。あんたに会う前に私が何者だったのかも全く分かんない。だから、過去の私を知りたいと思った。そしてユクシーはそれを知っている可能性があると思う。でも……知ってしまったら、私、どうなるか予想つかなかった。そもそもこんな未開の地に来たことがあるのなら……私は一体何なのかもわかんなくて……私もう、どうしたら……!」
彼女の苦しみを、ケンジは痛いほど理解できた。シズクのことを一番知っているのは、彼らが知っている段階ではケンジだけだ。だからこそ、彼女の悩みを、苦しみを分かり合えた。
「……でもさ、霧の湖はあるかも分からない。ユクシーだっているか分からない。全部一応伝説だ。そうでしょ?だからさ、そこまで悩まないで。
霧の湖を見つけるってことが探索だけじゃなくてシズクの真実について知るためなら、俺百倍頑張れる!……だから、そのことは解決するまで……一旦、置いておこう。忘れるって訳じゃないけどさ」
「そうね。……ユクシーが犯人だって、決まった訳じゃないしね」
「うん、そうだよ、大丈夫!それでもまだ苦しかったら、何でもいいから言ってね。俺、シズクの為ならなんでも頑張れると思う……から!」
「そう。……ありがと」
ケンジがそんな風に考えてくれていたことがシズクにとって嬉しかった。自分はずっと独りよがりで強がっていた。でも、独りなんかじゃなかった。こんな風に一緒に悩んで一緒に苦しんで一緒に笑い合えるような……そんな仲間が、いるんだと。改め彼女は実感していた。その嬉しさに、シズクはふっと口角を上げて微笑んだ。それが、ケンジに見せた初めての『純粋な笑顔』だった。苦笑いでも作り笑いでもない、心からうれしいと思って見せた笑顔。シズクがサンを見てひたすら羨ましげに思っていた、そんな笑顔を。彼女は今初めて、顔に浮かべてくれたのだ。
「やっぱりシズク笑うと可愛いよー」
「うっさい。そういうの余計よ。
でも……あの、本当にありがとう。あんたがいてくれたから、随分気持ちが楽になったように感じる。全部あんたのおかげよ。ありがとう。……私のパートナー」
「え!?ぱ……パートナー!!?」
「ん、パートナー」
シズクは笑いながら口に出したが、ケンジはずっと「パートナー……」と声にだしその言葉の深さをしみじみと実感していた。彼女が仲間だとかパートナーだとかを信じるのに、かなり時間が経ったように思えた。でも、それでも。今この瞬間、彼女がケンジのことをパートナーとして見てくれたこの瞬間、それだけでもう充分幸せでもあった。
「うん!ありがとう俺のパートナー!!」
「うっさいっての。軽々しく言わないでよほんと!」
こんな言い合いもまたいつものようで楽しかった。彼女も彼も楽しそうに笑い、まるで悩みが解決したように見えた。事実、二匹の心は晴れ晴れしていた。
「いいね、雰囲気がいいねー」
そんな二匹を離れたところから眺めていたサンは一匹笑みを溢していた。そんな甘酸っぱい和やかな感じにほのぼのと笑っている。
「……どっちみち……勝負はここからだ」
真実は話された。場所も、人数も、必要なものは揃っている。あとは発見し、突破し、警戒し、乗り越え、見つけるだけだ。あるものはユクシーの能力に好奇心を抱きながらも恐怖も感じて探索へ乗り出そうと準備をし、あるものは真実へ向かうために未開の地へ挑む決意を固め、あるものはその真実を探す手伝いをするために進むことを決め、
____そしてあるものは、真実を見据えながら望みの為に歩み始める。