#80 フォーチュンクッキー
トレジャータウンは、今日もいつも通りの賑やかさを見せたいた。珍しい商人の噂が広がったのか、他の探検隊も見受けることが出来る。
「なんか、いつもよりポケモンがいっぱい……」
「楽しそうだねえ。商人さんが来るって、こんなに大騒ぎすることなんだ」
そこまで大騒ぎな訳ではないきがするが。店を利用しているポケモン達が大半で、そのついでのように商人の所に行っている感じだ。人混みが嫌いであろうシズクは、相変わらずの不機嫌オーラ全開で、歩いていた。
「とにかく、最初に荷物の整理済ませない?なんか混んでるし、一番の目的からちゃっちゃと済ませておきたい」
「そうだね。じゃあ俺達は倉庫行ってくるけど、フライ達は?」
「……んー、僕達はカクレオン商店に行くよ。じゃ、この広場で落ち合おっか」
一通り話をすると、俺達は倉庫へ、フライ達はカクレオン商店の方へと足を運んだ。サンは、何処か早く商人見てみたい、みたいな顔をしてフライをチラチラ見ていたが、やがて無駄だと分かると渋々フライに着いていった。
「商人商人って……そんなに騒ぐことなの?」
「さあ。俺もよく分かんないし……」
「まあ、結構珍しいからねえー」
俺らの話を聞いていたのか、倉庫の番をしている、ガルーラのダルナが話し掛けてきた。そういえば、この辺で店を開いているポケモンはトレジャータウン付近出身だ。きっと詳しいのだろう。
「ここは都市からも随分離れた場所だからねえ。都会や王都付近には連日商人ってのがやって来るんだよ。ポケモンがいっぱいいた方が売れるからね。だから、人口が少ない田舎に来るってのは、まー珍しいもんでさあ」
「へえ、そうなんだ」
此所は確かにポケモンの数が少ないし、旅人は見掛けたこともないが、そういう理由があったのだろう。俺は他の大陸から此所に来たわけだし、この大陸の事を知らない。都市、とかはどんな感じなのだろうか。興味があるような、無いような。
「で、用件はなんだい?」
「あ、嗚呼、とりあえずこの穴抜け玉とスタミナリボンをしまって、縛り玉を引き出してほしいんだけど」
「はいよー」
陽気にハスキーな声を響かせ、ダルナは俺から受け取った穴抜け玉とスタミナリボンを倉庫に入れ、縛り玉を取り出してきた。
「毎度ご苦労様。依頼、頑張ってね」
「はい!」
縛り玉をバッグに入れながら、気軽に返事をして広場へと戻る。フライ達はどうやら、先に来ていたようだ。先走りそうなサンを止めているフライは大変そうである。
「ごめん、待った?」
「いや、僕達もさっき来たばっかりだから」
「サン……落ち着いたら?」
「ねえねえ早く!早くいこ!」
暴れるサンに着いていく形で、広場の左端の群衆に突っ込む事になった。まだどんなポケモンかは分からないが、群衆の奥にいるポケモンが構える移動式屋台みたいな物はかなり立派だった。材質は白木、しっかりとした造りの屋根と土台。下にはタイヤが着いていて、転がして運べる様だ。前には看板が置いてあるみたいだが、見えない。
「んー……何売ってるのか見える?」
「まだ分からないよ。とりあえず、並ぼう」
長い列の最後尾、ヒメグマとリングマ二匹の後ろに並ぶ。どれだけ人気なのだろうか。言ってみれば期間限定発売みたいな物だから、こんなに並ぶのだろうか。
暫く並んでいると、前のヒメグマとリングマが退き、商人と呼ばれている店主が見えた。見たことのない種族だった。水色を主体とした身体をしていて、棘棘した白い髭が両頬から二本ずつ生えている。下半身は藍色で、足の外側にはクリーム色の貝殻がくっついている。頭には、ハチマキをしていた。
「いらっしゃい!」
「えっと、あの……ここでは一体何を売ってるんですか?」
「あれ?看板、見なかったのか?あー、その位置見にくいかあ……。あとで直しとくよ!で、この店は、フォーチュンクッキーって言うもんを売ってるんだ」
「フォーチュン……クッキー?」
「そうだ。まあ見た目的にはクッキーだな。その中に、運勢って言うのかなあ……そんなのが書かれた紙が入ってるんだ」
「何それ面白そう!私買いたい!いいよね、フライ?」
サンが弾むようにフライに問い掛けると、商人であろう水色のポケモンが僅かに肩を揺らした。何故だか、目を丸くしている。
「は……フライ?」
「お前、まさか……」
「え?何?なになに?」
さっきまで呆然としていたフライが、呟くように声を上げた。水色のポケモンを凝視している。商人のポケモンも、フライの事をじっと見ていた。
「えっ、じゃあお前がフライ!?」
「お前、まさか……クラウか?」
全く、理解できない状況に陥った俺達であった。