#44 ラペットからの依頼
「おい、お前達はこっちに来なさい」
梯子を登ろうとした私達を、ラペットが遮った。羽で自分の方へ来るように手招きしている。
「何?」
「めんどくさいことなら即却下するけど」
ラペットは少しだけ私の事を睨むと、本題に入る、と言葉を紡ぎ始める。
「お前達、今日は別の仕事をやってもらう。もう依頼の仕事には慣れただろう?特にこの前、スリープのギルナを捕まえたのは見事だった♪なので……次は少し、探検隊らしい事をやってもらう」
ラペットの口から出たその“探検隊らしい事”という言葉に、ケンジは目を輝かせ私も少しばかり気になり始める。今までの依頼は大体救助や討伐などで、考えてみればどこかへ探検に行く、なんてこともしたことがなかった。探検隊だというのに。
「へえ!?本当に!?やった、嬉しいなあ!!」
ケンジがジャンプしながら喜ぶ様子にラペットも柔らかな笑みを漏らした。そういえばラペットの純粋な笑みを見たのは初めてかもしれやい。今まで見たのは私欲にまみれた悪そうな笑みぐらいだ。後は何かとキレている様子しか記憶にない。
「では二匹共、『不思議な地図』を出してくれないか?」
ラペットの言葉に倣い、私はバッグの中から茶色く丸まった大きめな紙を取り出した。その時、ラペットの目が一瞬私の首に掛かったオパールのペンダントに走ったのは気のせいにしておく。地図をラペットの目の前で広げると、ラペットはまず大陸の端にある小さな場所を指した。
「ここが、トレジャータウンだ。そして今回お前達に調査してきてほしい場所は……ここ」
ラペットはトレジャータウンから北東にまっすぐ羽をずらし、地図に書き込まれた滝の様な場所へ持ってくる。
「ほら、ここに滝が流れてるだろ?一見普通の滝に見えるだろうが、ここには何か隠された秘密があるのではないか、という情報が入ったのだ。だからお前達には実際そこへ行き、何があるのか探索してきてほしい」
「うん、わかったよ!」
溌剌と返事したケンジに、ラペットは「じゃあ頼むぞ」と頷いて自室へと戻っていく。
「探検かあ……」
ラペットがその場を去ったあと、ケンジが若干夢見がちに呟いた。
「探検とか初めてだから、なんかすっごいワクワクするよ!」
「そうね。ま、失敗はしないように頑張るわよ」
「勿論!!」