#41 夢とロマンと
「へえ、かなり賑わってるのね」
中は、かなりポケモン達がいて、わいわいと賑やかな音を奏でていた。地下だが暖かみがあり、広い。ぐるぐる模様のフローリングが、何だか味を出しているなあ、と無意識に考えた。奥のカウンターにいるのはパッチールのサマルだ。客の要望を聞きながら飲み物を作っている様子である。
二匹用の机を見つけ、とりあえず腰かける。辺りを見回すと、警察やトレジャータウンの住人など、かなり見知った顔が多かった。看板娘、なのかどうかはわからないが接客をしているのはソーナノとソーナンス。若い子供達には若干引かれていたりもしていたが、何故だか馴染んでいる。
「いつから開いてたのかしら。全然気づかなかったわ」
「いっつも帰ってくるのが夕食ギリギリで焦ってたからね」
「うっさい」
久しぶり、というかほぼ初めての、のんびりとした“休憩”だ。存分に楽しもう、と椅子に座った状態で伸びをした。
「おや?あれ、あなた達は確か……ケンジさんとシズクさんですね!?来てくれたんですかー、嬉しいですねぇ〜」
「あ、サマル。ごめん、カフェ開いてるとこ気付けなくてさ、来るのが遅れちゃった……のかな?でも、凄いね。一匹でこんなお店開いちゃうなんてさ」
「いえいえ、全てが私だけの成果ではありせん。手伝ってくれた彼ら……達のおかげですよ」
そう言ってサマルは客の間をすり抜ける様に歩いているソーナノとソーナンスを指差した。“彼女”なのか“彼ら”なのかはよくわからない。
「えっと、ここには何かメニューが無いみたいなんだけど……どういう感じでやってるの?」
「嗚呼、ここのカフェはですね、お客様から食材を頂戴いたしまして、それでドリンクを作る、というシステムになっております。お二人様も、何か作られますか?」
「うん。ええと……何か食料あったっけ?」
サマルの至極丁寧な説明に頷いて、俺はシズクに聞いてみた。シズクは無言で自分のバッグを漁り、中から林檎やグミ、木の実を取り出す。
「じゃ、私はモモンのジュース」
「ええと……俺は空色グミにしよっかな」
「はい、了解しました〜」
サマルは一度深く頭を下げると、急いでカウンターの方に走っていった。どんなドリンクが出てくるのか、楽しみだ。