#40 パッチールのカフェ
「はあー……疲れたあー………」
「全く、情けないわね」
新しくお尋ね者の捕獲依頼を許された俺達は、普通の依頼とお尋ね者の依頼合わせて八件をこなすことになった。それもこれで三週間目である。ダンジョンを越えるだけでなく、連続でお尋ね者とバトルだ。もう恐怖は無いが、異常に疲れる。その分報酬はおいしいのだが。
「一日くらい……!休憩の日があっても……!」
「駄目」
ほんの一縷の望みもシズクに一蹴されて砕け散った。シズクは真面目なんだか熱心なんだか。だが疲れた様子も見せないから、本当に凄いと思う。
「私、喉乾いた。ちょっと水飲み場に寄るけど、あんたは?」
「あ、じゃあ俺も行くよ」
俺達は、ギルドの傍にある井戸の様な形をした水飲み場へ足を運んだ。小さめな屋根が日陰を作り出し、近くにベンチもあるから休憩するにはぴったりの場所だ。シズクは溜まった水に口を付け、啜るように飲んでいる。俺も少しだけ飲んだが、そこまで喉が乾いていた訳ではなかった。しばらくするとシズクは、溜まっている水に映る自分の姿を眺めていた。何をしているのか、と訝るがすぐにシズクは口を開く。
「……何か……」
「ん?」
「何か、もうこの姿に慣れちゃった様な感じがするわ。もう何も違和感とか感じないし、生まれた時からこんなだった、みたいな感じになってる」
「へえ……?」
元々人間だった筈のシズクは、いきなりポケモンになって最初はその姿におかしいところ、違和感だとかを感じていたのだろう。でも今は、もう何も感じない、と。
「そっか。じゃあ人間に戻った時大変だね」
「まあそうね」
今日は依頼量は多かったのだがかなり早くこなせることが出来た。なので今、空はまだ夕暮れではなく、青い空と白い雲の浮かぶ風景が見えた。昨日の嵐が嘘のように、今日は輝かしいほど晴天だ。所々水溜まりはあるものの、もうほぼ嵐の名残は消え失せていた。早く帰れるので、部屋に戻って夕食までゆっくりしていよう、と歩き出すがシズクがすぐに足を止めた。
「……ねえ、あそこ」
シズクが指差した先は、確かギルナを倒した後に会ったパッチールのサマルがうろついていた場所だった。もう岩は撤去され、下に続く階段と穴が掘られている。
「サマルがいた所だよね?じゃあ、なんか施設が完成したとか?」
「そうみたいね。今日はちょっと時間あるし、寄ってみない?」
「そうしよう」