#35 トゲトゲ山
ルリアとギルナが進んでいった場所は、ラルからの情報ですぐさま判明した。ギルドから一番近い山で、名前からしてトゲトゲした岩がそこら中に並んでいた。かなり危険な場所であることは明白だ。何故ギルナはルリアをここへ連れてきたのか、それはわからないがとにかく進むしかない。どうやらトゲトゲ山は不思議のダンジョンである様で、縄張りを持つポケモン達が敵意を持って迫ってくる。
「岩タイプが多いね。俺は大丈夫だけどシズクは無理しないでね」
「いちいちお節介ね、あんた。そのくらい平気だし」
イトマルの毒針を回避してはっけいを叩き込む。シズクはニドランを電気ショックで撃退していた。岩タイプも多いが毒タイプもいる。モモンはあったかな、とバッグの中を確認した。敵を倒せてはいるものの、海岸の洞窟や湿った岩場に比べたらレベルも高いし、強い。手っ取り早く進まなければ体力もすり減ってくる。
「あんた遠距離技とかないわけ?物理ばっかやってると毒タイプに引っ掛かるわよ」
「まあ遠距離技は欲しいと思うけど……あんまり沢山覚えられる種族じゃないんだよ」
「わかってるわよ」
現段階ではシズクの方が強いんじゃないか、と思う。ギルドに入る前ダンジョンには潜っていた俺だが、シズクは技の威力と頭の良さを生かして狙った敵は逃がしていない。俺なんてただ手当たり次第攻撃を当てているばかりだし。強くなりたい、という思いは何処かにあった。
七個目の階段を登るが頂上にはまだ着かない。山だから階層はかなりあると思っていたが先が長いとその分不安になる。ルリアが傷つけられていないか、ギルナが勝手な事をしてないか。ラルにギルドと警察への連絡は任せてあるが出来るならば救援が来る前に片付けておきたいのが本心だ。
「階段八個目……あと大体一、二個かしら」
遠距離技が使えないため『鉄の棘』という飛び道具で離れた場所にいるイシツブテを撃ち、階段へ近づく。とっくに階段を登っていたシズクを追い八階に到達する。ムックルの翼で打つが辺りに蔓延していた八階で、シズクの電撃が飛ぶ。近くにいたら巻き込まれそうな感じだったのでここはシズクに任せて俺は一歩退く。丁度襲いかかってきたイシツブテをはっけいで打ち倒す。イシツブテを倒し終えた時、いきなり俺の方向へムックルが飛んできた。否、吹っ飛ばされたというべきか。シズクの電気ショックの爆風でムックルがこちらに飛んできたのだ。シズクはあっさり「あ」と呟いたがあの勢いでぶつかられたら俺は大変なことになっていた。本当、こんなコンビでこの後大丈夫なのか。
「シズク……もう俺に敵飛ばさないでよ……」
「別にあんたなら避けられるでしょ」
頼んだつもりがふい、と顔を背けられる。前まではこんな絡みはなかったから少しくらい変わっているのかと思うが今の時点ではよくわからない。
「階段」
「あ、本当だ」
登ってきた階段からすぐ近い所に、九階へと続く階段が見えた。今までの階よりも風が強そうで、太陽が近いような光が溢れ出ていた。多分ここを登れば頂上へ到達するのではないか。やっと着いた、と急いでその階段を駆け登る。鋭い岩が並ぶ広い場所で、ギルナとルリアが向き合っているのが見えた。