#25 炎と水の集合所
「いやあ、順調だねー」
「今は階段六個目…。後一つね」
湿気の漂う岩場を、俺達チームガーネットとエメラルドはぶらぶらと歩いていた。エメラルドの二匹がいて、本当に順調だった。サンは近距離、フライは遠距離専門のような技を使う種族なので近くにいても遠くにいても関係無しだ。ここのダンジョンは岩タイプが多いようでシズクはどっちかというと不利だが電気ショックの威力が強いので一、二回で倒すことはできている。俺は電光石火と噛みつくで突撃しているし、何ら問題は無いと言える。
B6階であと一つ階段を下れば最奥部に辿り着ける筈だが、ここに来て階段が見つからない。ダンジョン内のマップがあるはずもなく、同じ場所をぐるぐるしているという可能性も拭えない。実際、ここに来るまでの間、早々に階段を見つけたはいいもののもう少し道具集めの為にフロアを回っていると、どこに階段があるのかわからなくなったりもした。それがダンジョンの怖い所だ。
「ねえ、ここ階段あるの?…っと、」
無意味な質問をしたシズクは、脇から滑り出てきたアノプスを避け、電気ショックを繰り出そうとする。しかしその時、何故かシズクが「うっ」と呻いて膝を付いてしまった。シズクの後ろを見るとそこにはカラナクシがいて、背後から体当たりを仕掛けていたようだ。援護に行こうと走った時、何かが俺の足を締め付ける。すぐそばにはリリーラがいる。絡み付く、だ。敵ポケモンの巣窟に入り込んでしまったようで、そこかしこに敵ポケモンが見えた。サンもフライも戦っている。でもまあ、すぐに片付けられるだろう。リリーラを倒して絡み付くの呪縛を解こうと噛みつくを繰り出そうとしたとき。
「シズク!?」
シズクに避けられたアノプスが、自分の鈎爪みたいな部位をつきたたててシズクに突進していた。当のシズクは頭をぶつけたようにふらふらしている。このダンジョンに来て、初めて恐怖を感じた。素早くリリーラを倒して足を解放し、あと少しでシズクに到達する鈎爪を思い切り蹴った。アノプスはぶっ飛んで岩にぶつかり、動かなくなる。
「だ、大丈夫!?」
「…まあ…。危なかったわね」
軽々しく言うが本当に危なかった。あの鈎爪がシズクに当たっていたら、俺が一秒でも遅れていたらと思うとぞっとする。あの獰猛な爪はきっとシズクを抉っていた。そしたら死ぬことだって捨てきれない。今まで簡単なダンジョンにばかり潜り込んでいた俺は、やっと世間で噂されるダンジョン内での死亡率の高さを実感した。
「大丈夫か?」
いつの間にか敵を倒し終えたサンとフライが近付いてくる。大丈夫だ、ということを話し、また先へ進むことになった。その場所から少し歩いたところに階段は見つかった。あまりにも見つかりにくかったので皆気を揉んでいたが階段が見つかってほっとする。
「やっと見つかったあ…。行こっか」
俺は階段に足をかけ、下ろうとした。が、その時、シズクがいきなり俺を突き飛ばしたのだ。滑って擦り傷を負ってしまうが今はそんなこと気にする時じゃなかったようだ。
燃え盛る、炎。咄嗟に目に入ったのは、それだけ。