#23 一緒に
「お前達…それ…」
俺達の持つオパールのペンダントを指差し、ラペットは目を見開いて呟いている。オパールのペンダントがどうかしたのだろうか。まあ巷では売れば結構な金になるって聞いたことはあるけど…嗚呼、そういうことか。
「お、お前達…それは、かなりの高価な…あ、いや、コホン」
うっかり何かを漏らしそうになった様なラペットは急いで咳払いをした。シズクはめんどくさそうに遠くを見ている。
「ええと…嗚呼、お前達。あのな、このギルドでは高価な物はギルドで預かるというルールがあるんだ。だから、そのペンダントをこちらに寄越しなさい。悪いことじゃないだろ?な?」
昨日の様に見え透いた笑顔でオパールのペンダントを指すラペット。勿論渡すはずもない。でもそんなルールがあったら従わないといけない。それにオパールのペンダントを没収してどうするのだろうか。えっと…
「ここのギルド、赤字なの?」
そう、赤字だ、うん。え?
「い、いやいやいや!べっ、別にそういう訳では!ただここのルールだし?売る…預からないといけないから!だからさっさとそれを寄越しな!」
明らかに本音を剥き出したラペットは羽を伸ばして、ここにペンダントを乗せろ、とでも言うかのように開いている。そんなものに従う訳も無く、俺達は冷ややかな目でラペットを見つめる。だがラペットも諦めない。急かすように、腰に手を当てて体を上下に揺らしている。そんな気まずい沈黙を破ったのは、今さっき梯子を上ってきたのだと推察できる透き通った声だった。
「ラペット、何弟子を脅迫してるんだよ?」
驚いて振り向いたら、そこには昨日俺達の部屋を訪問してきた“チームエメラルド”のフライとサンがいた。声を発したのはどうやらフライで、サンはそんなフライに付き添うように爽やかな笑顔を見せている。
「このギルドにそんなルールは無いだろ?弟子のプライベートを探るような真似をしていいとは思わないけどなあ。それにそのペンダントは実質彼らの物だ」
「うぐっ…うう…わかった、わかったよ!騙してすまなかったな!」
反省しているのかわからないがラペットはそう叫んでペンダントを諦めてくれた。「ありがとう」と頭を下げると、フライは「いいんだよ」と笑う。優しい先輩である。
「ええと…そうだ…仕事だ…うん。あ…おい、エメラルドの二匹」
ぼそぼそ呟いて気を取り戻したらしいラペットは、掲示板を眺め始めたフライとサンを呼んだ。
「お前達、今日はここの二匹の初仕事に一緒に行ってやれ。初めてのことだし、色々アクシデントがあっても対応できるようにな」
「ああ、わかった」
「うん!オッケーだよ!」
サンは相変わらずハイテンションで満面の笑みを見せ、フライも軽く頷いた。まあアクシデントなどはそうそう起きることもないらしいので、実際のところ交友関係を深めるのが目的なのだと思う。シズクは明らかに嫌そうだが。
「じゃあ…よろしく。二匹共」
俺が挨拶するとその二匹は更に嬉しそうに笑った。シズクも少し頭を下げたように見える。