#22 初依頼
「さて、お前達にはこの仕事をやってもらおう♪」
梯子を上がった先、昨日見たように他の探検隊がたむろしている場所で、彼らの注目を浴びている紙の貼られた掲示板のような物をラペットは羽で指した。
「何これ」
「これはな、掲示板といって各地のポケモン達の依頼がここに集まっている。…お前達、最近悪いポケモンが増えているのは知ってるか?」
掲示板とやらの説明をしながらラペットは徐にそう聞いた。ケンジはこくん、と頷く。
「うん、知ってるよ。新聞でもトップニュースになることは多かったし。確か…時が狂い始めた影響で増えてるんだよね?」
さらりと言われたその事実に、驚かなかったと言ったら嘘になる。時が狂い始めた?どう意味だ?時というのは時間のことで、一時とか二時とかそういうことを言うのだろう。それが狂い始めたというのはつまり、時間が狂い始めた?でも、それと悪いポケモンが増えていることに何の関係があるのか皆目見当もつかない。そんな私の心の中での葛藤を知らずにラペットはいかにも深刻そうな表情で重々しく頷く。
「そうだ。時の影響で悪いポケモンが増えているせいで、この掲示板に載る依頼も数が多くなってきている。そしてこれも時の影響なのかどうかはわからんが…不思議のダンジョンというものが各地に広がってきているのだ」
「不思議のダンジョン…昨日行ったところね」
それは知っている。ケンジの遺跡の欠片を取り戻すために向かった不思議な場所だ。ケンジ曰くいきなり敵ポケモンが襲ってくるとか何だとか。入る度に地形が変わり移動手段が階段のみという私にしてみればめんどくさい地域だ。
「おお、知ってるのか。それなら話が早い♪依頼の場所は全てが不思議のダンジョンだ。さあて…じゃあどの依頼を受けるかは私が決める。んん…どれがいいかな…」
さっさと本題に入ったラペットは私達に背中を向け、掲示板に貼られた紙を吟味している。しばらくその状態で待っていると、ラペットは「よし、これがいいな♪」と独り言のように呟いて、下の方に貼られていた小さな紙を剥がした。
「これをやってもらうよ♪」
ラペットが差し出した紙切れをケンジが受け取って、私にも見せてくる。依頼人はバネブーからで、ある日突然盗まれた頭の上の真珠が危なくて行けなさそうな場所で見かけたという情報があったので取ってきて欲しい…ということらしい。まあ確かにレベルは低そうだし初心者にはピッタリだったりするんじゃないだろうか。でもケンジは、どことなく不満げな表情だった。
「これ…ただ落とし物を拾ってくるだけじゃないか。それより俺、もっと探検隊らしいことやりたいんだよ。ほら、お宝を探すとかさ…」
「はあ…あんたの思考単純じゃない?初心者の私達がいきなりでしゃばったって失敗するだけよ。新入りは下積みが大事っていうじゃない」
私が正論を話すと、ケンジは「そっか…」といって口を閉じた。
「うん、よくわかってるな。じゃあ早速仕事に…ん?」
ラペットは、私達の首から下がっていた、オパールのペンダントに目を留めた。