#17 遺跡の欠片と贈り物
チーム登録、探検隊キットを貰った後、私達はラペットに連れられてこれから暮らす寮の部屋へ案内された。ついこの前修行が厳しすぎて逃げ出した弟子の部屋が余っていたらしい。ラペットは独り言のつもりみたいだが、駄々漏れである。部屋は通路の一番奥にあり、藁の敷かれたベッドや火の焚かれた暖炉など、まあかなり居心地はよさそうだ。
「さて、お前達はこれから住み込みで働いてもらうからな。規則も厳しいしギルドの掟は絶対だ。わかったな」
そう言い残してラペットは去っていった。とりあえず先程貰った探検隊キットとやらを部屋の脇に置き、積まれていた二枚の毛布を藁のベッドの上に置いておいた。
「ギルドに入ったんだなあ。不安だったけど終わってみたら結構ドキドキするよ」
「あっそ」
ケンジの感想には興味無かったのでそう適当に返しておいた。もうケンジは慣れたようで、にこにこしながら布袋を外して脇に置いていた。
「嗚呼、そうだ。あのね、俺が探検隊を始めようと思ったきっかけなんだけど」
そう言ってケンジは布袋から石の欠片を取り出した。夕方、ドガースとズバットに取られた物だ。ただの石ころにしか見えないが、どこが“宝物“なのだろうか。
「これはね、遺跡の欠片って呼んでるんだ。よくわかんない洞窟で拾った。ただの石ころに見えるけど、ほら、ここ、見てみて」
ケンジが指差す所を見ると、どう表現すればいいのかわからないくらいの不可思議な模様が彫られているのが目に入る。多分これが、ケンジがこの石を“宝物”と呼んでいる理由だと思う。
「俺、昔から伝説とか冒険とかが好きでね、これを見つけたときは本当にドキドキした。いつかこの遺跡の欠片の謎を解くっていうのが、俺の夢なんだ」
「…そう」
私自身もそういう事は嫌いではないので、ケンジの話しには同感できる。と、私はケンジの布袋から覗いていた青のような緑のような光に気を取られてしまった。
「…それ、何?」
ケンジは一瞬「え?」と言っていたが、すぐに「嗚呼」と呟いて布袋からその光の源を取り出した。それは、オパールだった。簡素な鉄の板に埋め込まれたオパールには、麻紐が付いていて首にかけられるようになっている。
「これはね、オパールのペンダント。俺物心ついた時から周りに家族がいなくて、唯一傍にあったのがこのオパールのペンダントだけだったんだ」
「なんだかんだ言ってあんたもずいぶん不思議ね」
そう言って私はそのオパールを手の中で弄んだ。
「あ、そうだ。ねえ、シズク、このオパールのペンダントあげるよ。二つあるんだ。探検隊を一緒にやってくれるお礼だよ」
ケンジは布袋からもう一つオパールのペンダントを取り出し、私に手渡した。くれるというのに断る理由は無い。私は潔く受け取って、首にかけてみた。
「お、似合うよ。ねえこれからこのペンダント付けてくってことにしない?」
「そうね」
ケンジもオパールのペンダントを身に付ける。二つのオパールは、まるで自ら光を発しているかのように煌めいている。