#16 波動リボン
結局チーム名はガーネットに決まった。こんな手続きの一つ一つが“探検隊”らしくて何だかワクワクする。シズクは相変わらず真顔を決め込んでいて、こんなでこぼこコンビで大丈夫かな、と思ってしまった。チーム登録後、プクリン親方のパティは、「じゃあ探検隊の為に必要な道具をプレゼントするよ!」と、黄色い箱をどこからか取り出して俺達の目の前に置いた。促されるままに開けると、中にはバッグ、何かの紙、そして憧れのバッジが入っていた。
「これは探検隊キットだよ!一つ一つ紹介すると…まず、これが探検隊バッジ!」
箱の中を探ってパティが取り出したのは、白の丸に羽の生えたバッジであった。丸の真ん中にはピンク色の石のような物が埋め込まれているようだ。
「探検隊の証で、これはダンジョンの中で迷った時に脱出させてくれるワープ機能付きの最新版!で、これは…」
今度は茶色くくすんだ、丸めてある紙を取り出した。広げて見るとどうやら地図になっているようで、この大陸の形をしている。雲によってよく見えない地域もあるが。
「これは不思議な地図って言って、未開の地は雲で覆われている。開拓していくと雲が晴れる仕組みになってるんだ」
「へえ…不思議ね」
パティの説明に、シズクはぼそっと呟いた。
「最後はトレジャーバッグ!ダンジョンで拾った道具を保存しておくことができるよ。中を見てみて」
最後に取り出された大きめな茶色いバッグを一通り眺めてからパティの言うとおり中を覗いてみた。真っ白なリボンのようなスカーフのような物が二つしまってあるのが目に入る。一体これは、何なのだろうか。
「これは波動リボンって言ってね、それぞれのポケモンが発しているとされている波動に色を染めるリボンなんだ。試しに触ってみてよ、ほら」
パティはワクワク顔でバッグを指差し、促した。「じゃ、じゃあ触ってみようか」なんておどおどした俺の声を無視して、シズクはもうとっくにリボンを触っていた。興味のありそうな顔で。シズクの触ったリボンは、みるみる色が変わっていく。その色は、
「…薔薇色ね。これ」
鮮やかなピンク色だ。少し意外だった気がする。ちなみに俺はエメラルドグリーンだった。嫌いな色ではないので文句はない。
「この波動リボンは、身に付けると攻撃力、防御力、特攻、特防が少しだけ上がるんだ。でもこのリボンは、同じ色の波動のポケモンでしか有効にならないから、気を付けてね」
ウインクしながら軽快にアドバイスをしたパティは探検隊キットとかいう箱を俺に手渡した。「これから頑張ってね!」と、応援までしてもらって。かなり嬉しいのは本音だ。
シズクはどうやら、自分の波動が薔薇色という可愛らしい色に納得がいっていないらしく、リボンをくるくる回して眺めている。そんなことしても変わらないから受け入れればいいのにな、なんて考えたが、そこもシズクなのでいいと思った。