#15 新たなる探検隊
「さあ、チームの登録はこっちだ。ふざけないでちゃんと着いてこいよ」
梯子を降りた後、そのペラップはピンクとクリーム色の煉瓦で縁取られた豪勢な扉の前まで私達を案内した。地下でも窓があるのは、崖に造られているからだという。若干どうでもいい。
「さあて、ここが、このギルドの親方の部屋だ。いいか、くれぐれも粗相がないようにな。特にお前」
そう言ってペラップは私のことを睨んだ。確かにさっき「小さい」と言ったのは失言だったかもしれないが、事実だ。受け入れろ。ぷい、とそっぽを向いているとペラップは私を説得するのを諦めたように前を向き、扉をノックした。コンコン、と無機質な音が響く。
「親方様。ラペットです。入ります」
ラペット、というのがこのペラップの名前なのだろうか。考えると扉が開き、件のペラップが私達を招き入れた。中は、他の部屋と比べ物にならないくらい豪華だった。赤いラグや傍にある松明に宝箱。親方に見えるそのピンクのポケモンは、黄色く、装飾が施された椅子にどっかりと座っていた。
「親方様。こちらは先程弟子入りを希望してギルドに入ってきた者でございます。チームの登録をお願いしたく…あの、聞いてます?」
つらつらと喋ったペラップは、未だにこちらを向いていない親方にひっそりながら声を掛けた。しばらくの沈黙。そしていきなり、椅子がこちらを向いて親方と呼ばれていたポケモンが姿を現した。ピンク色のふさふさの体毛を身に纏った、プクリンである。『プクリンのギルド』と呼ばれているので当然といえば当然だろうが。
「やあ!僕がこのギルドの親方だ。よろしくね。探検隊になりたいんだったね?じゃあ一緒に頑張ろ!そうだ、まだ自己紹介してないよね、ラペットも」
怒濤の勢いで喋ったプクリンは自己紹介まで一気に持ち込んだ。ケンジも変な顔をしておどおどしているし、私はもう相手にもしていない。
「えーと、僕はプクリンのパティ・アール。改めてよろしく!」
「私はペラップのラペット・ルーヴ。パティ親方の一番弟子で情報通だ。これからよろしくな」
「あ、えっと、俺はケンジ・リウェルジーア。よろしくお願いします!」
「…シズク・サファイア」
一通り自己紹介を終えると、パティは早速本題に入る。
「チームを登録したいんだよね?じゃあチーム名を教えてくれる?」
「え!?チ、チーム名!?」
「…まさか考えてなかったの?」
冷めた目でケンジを見つめると、俯いてしまった。チーム名なんてそんなもの、別に決めなくてもいいじゃないかと思うがそれが手続きならば仕方がない。私も考え始めることにした。
「うーん…あ!ポケモンズとかは?」
「は?ださ。あんたネーミングセンスの欠片も無いわね」
「うぐっ…」
私の言葉が突き刺さったようにケンジは小さく声を漏らした。それにしてもチーム名。何か良いのは無いだろうか。あ、待て、そういえば。
「そういうシズクは何か案あるのさ?」
「…ガーネット」
「え?」
「ガーネットよ。宝石の一種。『実りの象徴』って言われてて、努力の成果だとか成功へ導いく意味があるの。探検隊にはぴったりだと思うけど」
「へえ、ガーネットか。いいね!じゃあチームガーネットで!」
私は知っていた。ガーネットにはもう一つ、こんな意味があることを。
“ずっと、一緒にいてください”