#14 ギルド入門
「う、何かいっぱいいる…」
ギルドの中に入った瞬間、シズクは眉をひそめた。芝生の床のその場所はたくさんのポケモンに溢れていて、談話したり張ってある何かを見たりしている様子である。全員探検隊なのだろうか…。逸る俺の気持ちとは正反対に、シズクはさっきから愚痴りまくっていた。
「はあ…だから来たくないって言ったのに」
「えーでもいいじゃん。ギルドの中入ったの初めてだしワクワクするなあ」
「そう思ってるのあんただけ。で?どこ行けばいいわけ?」
もう少しこの風景を堪能していたい俺をシズクは無理矢理引っ張ってそこら辺をうろうろし始める。中に入ったはいいが次にどう動けばいいのか、さっき穴の下から聞こえてきたあの声の主はどこにいるのか、全くわからない。
さてどうするか。思案していると、急に後ろから声を掛けられた。
「おい、さっき入ってきたのはお前達だな?」
低くもなく高くもない、でも男性の声だと断定できるそれの発信源は俺より頭一つ分下の位置にいた。いわゆる八分音符という形の頭をして、首回りは白、他は青、黄、緑の鮮やかな鳥ポケモン、ペラップだ。
「そう、だけど」
「何これ。ちっさ」
出来るだけ穏便に事を進めようとした俺の意に反してシズクは暴言を吐いた。それが癪に触ったようで、というか、何だか短気そうな目をしているペラップはキーキー声で怒鳴り、「勧誘やアンケートはお断りだ。用件が済んだらさっさと帰れ!」とまで言われてしまった。しかし、俺が探検隊になりたくて、ここに弟子入りしようと来たことを伝えると、いきなりそのペラップは見え透いた営業スマイルで対応してきた。シズクもドン引きしているようでもう口を開く様子もない。俺としてはそっちの方がありがたいと言えなくもない。
「そっかそっかあ♪探検隊になりたいのかあ♪よし、じゃあ早速チームの登録を行うから着いてきてね♪」
先程までの、あのキレ具合はどうしたんだ、ペラップ。あまりの変わり身の早さに俺ら二匹が自分を変な目で見ていることに気付いていないペラップは、羽で手招きして下へ続いているであろう梯子を降りていく。
シズクは、「もう何だかわからない」と呆れたように呟いて、さっさとペラップの後を追って行ってしまった。とりあえず俺も向かうことにしよう。木製の梯子を降りながら、これから大丈夫なのか密かに考えてしまった。