#12 星が煌めく漆黒の夜空
「ふうん。その探険隊とやらに私を誘おうとしてた訳?」
「ん、まあ…単刀直入に言えばそうだね」
シズクを見つけて数分後。俺は随分長い前置きをしてから本題に入った。一緒に探険隊になってほしいということ。それが本心である。漠然とした感じだったが、会った瞬間から彼女となら出来る、と思っていた。立ち止まっていた俺の背中を押してくれたのも彼女だし、何だかそんな気がしたのだ。
「嫌に決まってんじゃない。他人の為に働く事でしょ?面倒なだけよ」
「えぇ、でも」
渋る俺に渇を入れるかのようにシズクは手をパンと打って立ち上がった。まるでこの話しはここで終わり、もう一切関係を持つことはやめよう、とでもいうかのように。そんなわけにはいかないのだ。退屈な日々を送っていた俺が、その日常を変えることができるかもしれないチャンスを、放り出してはいけないのだ。俺も立ち上がってシズクと目を合わせた。
「ねえシズク。探険隊に入れば、君の身に起こった不可思議な事も、解けるかもしれないよ。そもそも俺の誘いを断って、これからどうふるつもりだったのさ?調べる方法もわからないだろ?」
図星だったようだ。シズクは「うっ…」と言って言葉に詰まり、脱出口を探すように目をキョロキョロと動かしている。そんなシズクが可愛いなんて思ったことは置いといて。
「だから探険隊をやろうよ。ね?ちゃんと生活する場所もあるし、食料も寝床も困らないよ」
「う…わ、わかったわよ…」
ついに折れた。心の中で「よしっ」と喜んでいる俺は隠しておこうか。そうと決まると今日の内にでも弟子入りしないといけない。俺はシズクに急いで声を掛けた。
「じゃあ、ギルドに行って早速入門申請しなくちゃね」
「は?ギルド?何それ。他人と関わるのは嫌って言ったじゃないの」
いきなり声を荒らげてシズクは反論し出した。このままじゃまた断られかねない…。危機を察知した俺は、食料と寝床の話でうまく行く方向に持っていこうとした。やはりそれにはシズクも反抗できないようで。深々と溜め息をつくと、こう切り出した。
「はあ…わかったわよ。でも私が一瞬でもつまんないって思ったら問答無用で即辞めるからね。そこは覚えておいて」
「う、うん。わかっよ。でも一緒にやってくれるなら嬉しいなあ」
つい本音を漏らすとシズクの顔がまた赤くなり始めた。何に照れているのか男の俺には理解しかねる。
「い、行くならさっさと行くわよ。もうすっかり暗いし」
シズクの言うとおり、空を見るとそこにはさっきまでの茜色の夕日は消え、金銀に瞬く星を浮かべた夜空が迫ってきていた。これは急いだ方がよさそうだ。
「そうだね。じゃ、行こっか」
進みだした俺達に、物語は優しく微笑みかけた。