#11 戸惑う姿
これからどうすればいいのか、ケンジには威勢を張ったくせに全くわからなかった。調べる前に私はどこでどうやって生きていけばいいんだろう。寒さを凌いで寝る場所も、食べる物も無く、知りたいことを知れずに死んでいくのだろうか。案外それでもいいと思っていた。これから行く宛も無くただ放浪するだけなら死んだってさして変わりないんじゃないか。それならここにずっと佇んで衰弱していくのを待つか。でもそれじゃ何だかあまりにも惨めすぎる。
とりあえずこれからどうするか。まず第一はそれだ。
海の向こう側に沈んだ夕日は、依然私を嘲笑うかのように揺れている。木々と草花のざわめきに、心地よいものを感じた。調べるにしろ動くのは明日からにしよう。食べ物だって、一日食べないぐらいならなんとかやれるだろう。寝る場所だって、寒いだけで死ぬわけではない。うん、大丈夫。私は他人の力を借りなくても生きていけるんだ。
意識を固めた時、背後から何者かに肩を掴まれた。思わず電気を流しそうになったが、そう攻撃的になっても仕方がない。落ち着いて後ろを見ると、そこにはあのリオル───ケンジがいた。
「見ぃつけた」
意地悪そうな笑みを浮かべるとケンジはそう言った。来ないでほしかった。私のこれからの決断に干渉してほしくなかった。
「何しに来たのよ。邪魔だから帰って」
「帰れないよ。シズクを残してなんて」
呟くように述べた彼は私の隣に座った。邪魔、嫌だ、どこかに行ってほしい。負の言葉は考え付くが、どれもうまく口から出てこなかった。
「ねえシズク、独りでいいなんて思わないでよ。お願い。俺はシズクと一緒にいたいんだ」
私と一緒にいたい?何よそれ。キザな言葉残すんじゃないわよ。微かに熱くなった顔に蓋をして、私はケンジを追い払えるように挑発するような言葉を言おうとした。でも、うまく言えない。
「あれ、シズク顔赤いよ。もしかして照れてたりするの?」
「ば、馬鹿!そんなわけないわよ!」
否定の合間に力の限りケンジをばしばし叩いた。ケンジは笑いながら「痛い痛い」と声を上げる。暴言、暴力。私にはそれしかできないのかな。
彼の笑顔は何故か私に安らぎを与えた。