01 これは三匹との出会いの話なの
縦5.4cmの横8.5cm。こんな小さなプラスチックのカードに何故そんな力があるのかわからなかった。
トレーナーライセンス。一言でライセンスと言っても種類がある。例えばジュニアライセンス、10歳以上から取得出来るもので、手持ちのポケモン一体の所持を認めたものだ。すべてのトレーナーがまずこれを取得する。
そして次にアマチュアライセンス。この資格は厳密には二種類あり、10歳以上18歳以下の学生が当てはまる学生ライセンスと、学校に通っていない、それ以上の年齢で受けると取得出来る社会人ライセンスがある。手持ちの最大所持数はプロと同じ六体で、危険地域への立ち入りや、ポケモンを利用する職業への従事を許可されない事を除けば、概ねプロライセンスと大差ない。普通にトレーナーとしてチャンピオンやらを目指すのならこれで事足りる。
学生ライセンスと社会人ライセンスの違いは更新期間が学生ライセンスの方が短く、一年で効果が切れてしまう事だ。トレーナー修行の旅に出れば学校も休学する事になるので一年と定められているのだとか。休学しても一年以内にライセンスを返却し、みっちりと補習を入れてもらえれば無事に進級する事は出来るので、小学校や中学校での留年とはあまり見る事はない。
たまに顕らかに9歳以下の子供がポケモンを連れている事があるが、あれはアマチュア以上のライセンスを取得した保護者同伴の元、その保護者の手持ちとなるポケモンを連れ歩く事が出来ると言うもので、手持ちにはならないらしい。
つまり、この四角いプラスチックのカードには、そんな効果があるのだ。僕が手にしているのはアマチュアの学生ライセンス。今年十歳になった僕、黒町冬樹は、一年間……と言ってもポケモンリーグの開催は八ヶ月後、もし勝ち上がれたとしても九ヵ月後にはポケモンリーグは閉幕するので九ヵ月間、ポケモントレーナーとして修行の旅に出る事になっている。
のだが、僕は未だに旅に出れずにいた。昨日、アララギ博士の助手を名乗る女性から、僕のパートナーとなるポケモンを紹介された。
ツタージャ、くさへびポケモン、タイプは草、ジトッとした眼が可愛らしく、ちょっと見つめたら恥ずかしがって隠れてしまった。
ポカブ、ひぶたポケモン、タイプは炎、人懐っこい性格をしてきてさっきから擦り寄ってくる。暑苦しい。
ミジュマル、ラッコポケモン、タイプは水、こいつ、さっきから僕の事指差してゲラゲラ笑ってるんだけど、殴って良いのかな?
そんなわけで、可愛い顔したツタージャと、妙に懐いてくるポカブで迷ってしまったのだ。前情報ではミジュマルにしようと決めていたものの、その個体の性格ってものがある。種族とか、見た目とか、タイプだけではわからない部分が絶対にあるのだ。
それですっかり迷ってしまうと、パートナー候補のポケモンを連れてきてくれた女性がこう言った。
「そんなに迷うんだったら、少し一緒に暮らして見るといいよ、三日くらいしたらまた来るから、それまでに決めておいてね」
こうして、僕は旅立ちを見送り、三日間こいつらと一緒に過ごす事になったわけだ。