2 クロリア
あっ、お初にお目にかかります。アシュクロフト家の家政婦をやっております、クロリアと申します!
種族は・・・まぁ、おわかりでしょうけどマリルリです。
ピンクのエプロンはクレアお嬢様がお生まれになった時に、奥様にいただきました。
・・・ずっと敬語なのも堅苦しいですし、日記に挨拶してもあれですしねぇ・・・では次の日からは日記口調でいきますか。
☆
○月○日
クレア様がはいはいで動けるようになった。家中そこへでも行ってしまうので、ご飯の時などにたいへん困る。
が、数分も待っていると、クレア様が自分から出てくる事に気がついた。それがわかってからお世話がずいぶんと楽に。
いや、楽と言うより、無いといった方が正しい?
赤ん坊はもっと、夜泣きしたり、勝手に外へ出て行ったり、物を壊したり、・・・もっと手がかかるはずではなかったか。
クレア様はそれがいっさい無い。
と、いうか、私はいまだかつてクレア様が泣いたところを見たことがない。
不気味、という感じではない。
クレア様は他の赤ん坊とは違う、特別な赤ちゃんなのではないかと考えたことがある。
・・・いや。
いやいやいやいやいや、アシュクロフト夫婦の親ばか(失礼だが)が私にまでかかったか。
○月☆日
ふと思い立って買った本がおもしろい。
時間を忘れてご飯を作るのを忘れてしまわないようにしよう。
前に作り忘れたとき、クレア様が白い目で見ている気がしたのだ。
○月×日
クレア様が図書室にこもるようになった。私が見ている中ずっとである。
さすがに文章を読んでいるかんじではなく、絵をたのしんでいるようだ・・・と、思いたい。
思いたい、というのには理由が二つある。
一つは本を見ながら自分のほっぺに手をふれたことだ。
偶然かもしれない。そのときクレア様が読んでいたのはワザの出し方の本だったのだ。
あんまり早くワザを習得しないでくださいね。私、水タイプですから。
もう一つは絵本をあまり読まないこと。
よく読んでいたのだが、ふと目を離すとどちらかというと厚い本のコーナーへ行っている。
私が見ていると慌てて絵本コーナーへ走る(と、思う)のだが、最近は私がいても分厚い本を手に取ることが多い。
考え過ぎか。
もうすこし様子を見よう。
○月△日
ついに、
ダメだ、手が震えてしまう!
数時間後に書き直す。
三時間たった。
まだあのときの驚きは消えていないが・・・!
ついに、クレア様がワザを使った!
ワザ名は十万ボルト。この年齢で、だ。
二回目はなんだかわからない。発展型だとしたらすばらしい。
今、奥様と旦那様に報告すべきか迷っている。
あれ?私、なんでこんなに興奮しているのだろう。
手の震えがおさまらない。明日にはおさまっているといいが・・・。