あとがき
「君がいてくれるだけで」、最後までお読みいただきありがとうございます。あとがきを書くのもこれで三作品目……嬉しい限りです。
この小説には、拙作「へっぽこポケモン探検記」のキャラクターが多く流用されており、舞台もへっぽこの未来に当たる世界です。
ですが、私はこの小説がへっぽこの続編だと思って書いたわけではありません。読者さまにも「これは続編ではないですよ〜!!! 一見さんも常連さんもかも〜〜〜ん!!」という気持ちを常に持って書いていました。この小説はあくまで、モズクというゲコガシラの成長物語であると、高らかに主張します。
「君がいてくれるだけで」を書くきっかけとなったのは、3年前に完結した処女作「へっぽこポケモン探検記」の感想を読み返していた時です。ここまで愛してもらった小説を、そのキャラクターをもう一度読者に会わせてあげたい。そして知らない人にもっと知ってもらたいという思いが突如湧き上がりました。
へっぽこを読んでくださっていた方には、再びへっぽこのキャラクターを愛でてもらいたい。
初めて読んだ方には「君がいてくれるだけで」のキャラクターを愛でてもらいたい。
それでいて、私は私で、かつての拙い文章力でしか表現できなかったであろうキャラクターを、もう一度今の文章力の全てを尽くして愛でたい。
その全てを叶えるには、初めて読んだ方でも面白く読んでもらえる、へっぽこの世界観を踏襲した、あらたな主人公の小説を書くことが必要だったので、壮絶なエゴイズム、そして試験的な試みとして「君がいてくれるだけで」が生まれたのであります。
さて、今回の主人公モズクは非常に難しいキャラクターでした。
世の中は常日頃から人間を世代別に分ける風潮があります。ですが私は、俗にさとり世代と言われるなかでも素晴らしい人間はいるでしょうし、「これだからゆとり世代は」とぼやく人間の中にもとんでもない奴が潜んでいると思っています。もちろん、逆も然り。
モズクは俗に見ると典型的な“現代っ子”です。無気力、面倒くさがりや、心を波立たせない。口調は年よりだいぶ大人びており、おじさんたちにも形式的には敬語で話しますが、その実中身はムッとすることも言っています。ですが彼には彼なりの優しさがあり、辛さがあり、そして根性がある。そこに世代の壁はありません。辛い過去のせいで心を波たたせまいと必死になっているだけなのです。
彼は繊細です。繊細さを隠しつつ感情を表に出さないように必死になるキャラクターというのは初めてで、だいぶ苦戦しました(笑)。
本当に、彼はこんなことを言うのだろうか。こんな行動をとるだろうか。こういう感情になるだろうか。書いている間、一度筆が止まるとずっと次の文章が打てないままになったり、各話を書き終えてこれは面白いだろかと頭を悩ませ……いやぁ、こいつ面倒くさかったぜ(笑)
このあとがきを書いている時は、まだ一話目を投稿したばかりなのでこの作品がどのような評価になるのか未知数です。
ですが、これだけは間違い無く言えます。
私は、ここに登場するキャラクター全員を、深く愛していると。
そして、本作を読んでくださった、一度でも目を通してくださった、そして、この作品以外でも拙作を読んでくださった全ての読者様を、深く、深く愛しているのであります。
そう、それこそ“君がいてくれるだけで”、私にとって大きな支えとなるのです。
本作、楽しんでいただけたなら非常にうれしいです。
では、また他の作品でお目にかかりましょう!