怪盗“黒影”3 あとがき
3では、1、2では触れることの無かった仲介の秘密、彼らの住む町に根付いていたインボウ(あえてかたかなでいってみる)、そして、今まで晴れることの無かったナイル自身の悩みと葛藤を中心に描いていきました。
三を書き始めたのは、実のところ2016年の3月ごろです。一度、全く別の角度から書き始め、四話ほど書いたところで、行き詰まり、即没。そしてプロットを大幅に改定したのが、7月頃。その時に三話ほど書き溜めておりました。
そして、行き詰まる。
にもかかわらず、どういうわけか黒影3を書き上げるまでの期間は10月に入ってからたったの5日間です。何が揮発材になったのかは定かではないのですが、一つ確実に執筆の影響を受けたと思われるのは、黒影3を書く直前にプレイしていた某裁判ゲームの最新作だったのでは、と思いますwww インプットは大事。ほんと(笑)。
さて、3ではナイルの前に“風錐”が現れます。これが彼にとっては困ったもので、今まで自分よりも優れた怪盗などいなかったはずなのに、腕っ節でも、口喧嘩でも、精神的にも一枚上手な奴がいきなり土足で自分の中に入り込んでくる。
そしてまさかの、実の父親。ワタシハオマエノチチダ。うそだぁあ(以下自粛
まさに晴天の霹靂だったでしょう。
そして、ナイルの中の奥底にひそんでいた正反対の気持ちが浮き彫りになっていく。
今すぐ逃げ出したい。だが一人では逃げられない。
もっと力を試してみたい。リスクが強大すぎて失敗できない。
寂しくて誰かに助けてほしい。誰にも寄りかかれない。
本当は生きたい。でも消えてしまいたい。
ナイルの中には強大なエネルギーが潜在しています。彼自身のスペック自体はものすごく高く、少年アニメで言うところのスポーツ万能、頭もキレて、女子に持てる二枚目。主人公の前に立ちはだかる“完璧なライバル”ポジションなのです。
ですが、本来なら発揮されるべきそのエネルギーは、ベクトルが相反するためにお互いに相殺してしまうのです。エネルギーの引っ張る方向が正反対なら、どこにも動けなくなるのは当然です。
そんな彼に必要だったもの。それを“風錐”は全て持っていたのです。
先輩としての経験値。父としての包容力。そして、悪い大人としての遊び心。
私が少し前に参加したセミナーの受け売りなのですが、人は、相反するエネルギーが統合され、一つのベクトルに向かうようになった時。本来ではあり得ないほどの莫大なエネルギーが発揮されます。そのエネルギーが発揮されることが、楽しくて楽しくて仕方が無くなるのです。
ナイルはこの物語を通してそのエネルギーが統合され、ベクトルが同じ方向を向き、一流の怪盗へと進化したのです。
この、怪盗“黒影”は、彼が一流の怪盗になるまでの物語だったのです。
彼が一流となった後の物語は、気まぐれにまた皆様の元へ語られる――かも知れません。
ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。
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