へっぽこポケモン探検記




















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間章1
出会い
 モモンの実に垂れる一筋の朝露が、朝日に反射してきらきら光った。
私はそのモモンの実を摘むとき、美しく、たくましく育った木の実たちに感謝を忘れてはならない、と思った。私は、今日この命たちを朝食に使うわけでね……。って、柄にも無いことは考えないことにしよう。
もしも、私が誰かと聞きたいのなら、その質問はちょっと早すぎる質問だと思います。後々嫌でもわかるんだから、今は『私』で勘弁してね?
 それで、今私はなにをしてるかというと、朝食に使う木の実たちを積んでるの。え? さっきそれは聞いたって? まあ、いいじゃない。改めていったんだよ、改めて。
 ここは私の家から少し歩いた森の中。この森は木の実のなる木がいっぱい生い茂っている。ここにきて数ヵ月がたつけど、この森はやっぱり一番いい。この森には茂みをカサカサと鳴らす小さいポケモンしかいなくて、ガサガサと草を鳴らす大きくて狂暴なポケモンはいないから安全なんだよね。

 ――ガサガサ!

「ひゃっ!?」
 な、なななな何!? 私はびくりと肩を震わせて茂みの方を見た。ちょっと、今ガサガサって言わなかった!? 狂暴ポケモンはいないんじゃなかったの!?
「だ、誰……!?」
 茂みを鳴らすなんて姑息な手を使うじゃない! 私はこんなことじゃ怯まないよ!?……と、悔しいけど心のなかだけで叫んでおいた……。
 ガサガサはどんどん大きくなった。いつなにがきても大丈夫なように身構える。そして、茂みから出てきたのは――。
「……え、君は……!?」
 現れたのは、青を基調とした体に、黒い足。耳の下には、ふさのようなものがついている――リオルというポケモンが、茂みから私の前に現れた。
 この地域にはリオルはいなかったはず……いったいどこから?しかもこのリオルは全身が痛々しい傷だらけだった。どうしてこんなに怪我を?
 と、私の姿に気づいたリオルは、危なっかしい足取りでこちらに近づいてきた。
「……よかった。やっと助けてくれるポケモンに会えた」
「き、君は一体、誰……?」
 私がおっかなびっくりそう言うと、リオルは急にこんなことを言い出した。


「今の私ではもう限界なんだ。すまないが、この子を頼む……」

「は……?」
 自分のことなのに“この子”って、このリオル大丈夫……? 私はそんな場違いなことを考えていたが、リオルが意味不明な発言をした瞬間、彼の体が傾き始めて……。
 前乗りに倒れ込んだ――。
「ちょっ……ちょっと! 大丈夫!? ねぇ! ねぇってば!!」
 私はリオルに駆け寄った。どうやら、気絶したらしい。……いや、これはただ気絶じゃない!
「体が……冷たい……! これはまずいかもしれない……!」
 私は改めてリオルの体を見てみた。全身が傷だらけってさっき言ったけど、そんなやさしい言葉で片付くような傷じゃなかった。致命傷の一歩手前と言っていいほど深い傷だ。なんてこと……!!
 とにかく、応急処置をしなくては!私は、リオルを刺激しないように気を付けながら、体を背負って移動した。
 り、リオルって意外に重い……!
「……こんなところで流血沙汰なんて、許さないから!!」
 私は、自分にゲキを飛ばすのもかねて叫んだ。単語の使い方が間違ってるのは、今は指摘しないでほしい!!
 一刻を争うんだから!

ものかき ( 2014/01/18(土) 11:06 )