▼第4話 悪
朝になった。ワカバタウンに住む者は誰でも知っている行事が木曜以外の毎朝行われる。それは【朝市】。6時頃から10時頃の4時間行われ、とても苦い漢方や家に置くポケモンのフィギィア等が売っている。そんな話を聞き付け卯月達一行は朝市に来ていた。
「うわぁ、色んな物あるじゃん。」
『マスター!サイコソーダがあるぞ!サイコソーダ!!』
「はいはい、あとでね。」
腕の中で暴れるツタージャを秋雨はどうにかおさめる。
「漢方か〜。」
「漢方はとても苦くて大体のポケモンはあまり好きじゃないらしいよ。ただ良薬は口に苦しって言うし効果はいいんだけどね。」
「へぇ〜…あれ?」
卯月は漢方薬を売っている出店の近くで4歳位の女の子が一人でいるのを見つける。その女の子は何かを探すようにあたりをずっと見回している。
「…どうしたんだろうね?」
「探し物じゃないか?」
卯月はそう言うと女の子へ近付く。
「こんにちは。君、どうかしたのかな?」
「あのね、ミカのポケモンがどこかに行っちゃったの。」
「それは大変だ。俺の名前は卯月、こっちは秋雨。よかったら探すのを手伝ってあげようか?」
「ミカは
鰻篦親華!ミカって呼んで下さい。そしてお願いします、お兄さん達!」
こうして彼らはミカのポケモンを探すことになったのだが。秋雨の表情は。また厄介事に巻き込まれた、という顔であった。
「じゃあミカちゃん。君のポケモンはどんなポケモンだい?」
「ミカのポケモンはチラーミィです。いつも一緒に遊んでいたんですけど…どこ行っちゃったのかな…。」
ミカの顔に影がかかる。その表情を見てそれほどミカがチラーミィを可愛がっていたことを二人は感じる。朝市の場所を一通り探したが見つからず、三人はワカバタウンの方を探すことに決めた。
「ワカバタウンはそんなに広くないからね。ワカバタウンの中にいれば見つかると思うよ。…そうだね、ミカちゃん。君はこの町でチラーミィとよく行く場所を覚えているかい?」
「う〜んと…。確かミカとチラーミィは良くあそこの高台に行ってました。」
あそこの高台、と言いながらポケモンセンターの屋根の後ろをさす。確かにそこには高台があった。だがその言葉を聞き、ほんの少し秋雨は顔をしかめる。
「行ってみるに越したことは無い。とりあえず行ってみよう。」
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その高台からはワカバタウンを一望出来て此処こそが桜の絶景ポイントとなっている。ただ何度でも言う。今は冬の抜けたての時期なので桜はつぼみすら咲いてない。よって朝市の影響もあり人数は少なくなっている。
「いないね…。」
「何処行ったの…?」
秋雨は高台からワカバタウンを一望する。
「ん…?」
「どうした、秋雨?」
「彼処にマンホールを開けてポケモン持った人が入っていくのが見えた。よく見えてないけどあの尻尾はチラーミィかな…?」
秋雨は朝市が行われている場所から少し離れた部分を指す。卯月はどこらへんかわからなかったがとりあえず秋雨の言う通りに行動をする。
「着いてきて!」
「ああ!ミカちゃん、ちょっとごめんね!」
卯月はミカを抱き抱え二人一緒に飛び降りる。二人は幼少時代、様々な遊びで身体能力は長けていたため無事に着地する。イーブィはと言うとツタージャの蔓のお陰でどうにか着地出来た。二人はそのまま秋雨の指した方へと走り出す。
「ここだ!マンホールが少しずれている。」
「よし!行くぞ!」
重いマンホールを二人でどうにか持ち上げそのまま下へと降りていく。すると。
「おっと、何やら侵入者がいるよぉ?」
マンホールの下は大ホールとなっていて降りてきた三人を様々なトレーナーがポケモンを側に待ち構えていた。
「待ち伏せか。」
「どうする?」
「決まっている。」
秋雨はツタージャを降ろす。卯月は戦うのだろうと予測し、ロトムを繰り出す。
「………ツタージャ、後ろのポケモンに向かってグラスミキサー!」
『マスターも気付いてた。』
いきなりの変な行動に卯月は面をくらう。後ろにはポケモンがいないはずじゃ、とゆっくり後ろを振り向く。するとそこにはグラスミキサーを受け、ダメージを受けているモルフォンがいた。
「え!?」
「鰻篦、これはお前の策略だろ?」
「……………。」
秋雨と卯月の視線はミカへと向く。
「バレちゃいましたかぁ…。いつから気付いてた?」
「いや、まぁぶっちゃけ言うと結構偏見になるかも知れないけどね。君の言動一つ一つ4歳児の立ち振る舞いとは思えなくてね。敬語を使ったり、高台って言葉を使ったり。あと自分のポケモンにニックネームをつけない所かな?」
「へぇ、今回はそれがいい方向に働いたようだ。その通り。私達は【ゴウマ団】。」
『どの地方も悪の組織はつきものなんだね、マスター。』
「そうだね。カントージョウトを拠点としたロケット団は世界の支配。ホウエンを拠点したアクア団、マグマ団は海地の拡大と陸地の拡大。シンオウを拠点したギンガ団は新世界の創造。イッシュを拠点としたプラズマ団はポケモンの解放、という名のポケモンを使った世界の支配。お前らは…何が目的だ?」
「目的か、そうだな。お前らトレーナーのポケモンを全て奪い去り、ポケモンに一番は人間だと思わさせる事だよ!私はその幹部の一人だ!」
「即ち、ポケモンの支配か。」
「尚更ポケモンは渡せねぇな。」
二人は臨戦体勢を取る。
「卯月、鰻篦は任せた。後の雑魚キャラクは任せとけ。」
「ああ、でもお前ツタージャだけじゃ?」
「問題無い。」
秋雨は包囲している人共と対峙する。
「おい、坊主…!俺らを雑魚キャラなんてよく言えるな!てめぇ状況わかってんのか!?」
「…名前が無い奴は雑魚キャラだろ?出てこい!」
秋雨はバッグの中から一つのモンスターボールを取り出す。中から出てきたのは不機嫌な顔で秋雨を睨むイーブィの進化系の一つ、サンダースだった。
『………………………。』
「…サンダース、頼んだ。いや、頼まれてくれないかな?」
『煩い。』
サンダースはそう言うとその場でミサイル針を放つ。サンダースの放ったミサイル針は正確無比でポケモンにあたり、戦闘不能になる。どうにか当たらなかったポケモンはサンダースが秋雨の言う事聞かずに攻撃し、同じように戦闘不能へと追い込む。
「秋雨、ツタージャ以外も持ってたのかよ?」
「見ての通り。ただ、ボールにずっと閉じ込めてたせいで少々不機嫌のようだ。」
不機嫌どころじゃねぇだろ、疾風怒濤のサンダースが相手のポケモンを蹴散らしていくのを見てそう思う卯月。
「卯月、君は人の心配より自分の心配をしろ。」
「そうだったな…。」
「ふん、最後の話は終わったようだな!行け!クロバット!」
『任せときぃ!』
「ロトム!」
『支配なんてさせない、元主人の願いのためにもね。』
「ロトム、電気ショックだ!」
ロトムは電気ショックを繰り出す。クロバットは毒、飛行なので効果は抜群だ。勿論、当たればの話だが。
「くっ!素早い…!」
「私のクロバットは素早さがとりえなのさ!翼で打つ!」
クロバットは自慢の速さでロトムを翻弄し、隙をついて攻撃を仕掛ける。
「これじゃあ、やられてしまう…!」
「ほらほら!さっきまでの威勢はどうした!?」
「………!ロトム!跳躍して…痺れ粉!!」
クロバットの攻撃の瞬間、ロトムは跳躍し、真下にまんべんなく痺れ粉を散らす。いくら素早さが自慢でも痺れによりクロバットは遅くなってしまう。
「今だ、ロトム!電気ショック!!」
遅くなった今、ロトムが電気ショックを当てることは安易な事で電気ショックはいとも容易くクロバットに当たる。
「そ、そんな馬鹿な…!」
「…君のクロバット、君を信頼している。」
「…だからなんだ!」
「君はそれを支配する団に入ってる…。それでもいいのか?」
「黙れ!私は…私の一存で団は動かない!貴様が何を言っても無駄だ!」
「それで君を信頼しているポケモンを傷付けてもか!?」
「黙れェェッ!!」
ミカはもう一つボールを取り出す。
「バンギラス!」
「え…?」「そんな?」「やばくないか…?」
とっくにサンダースに倒された団員達は焦り始める。
「バンギラス…おい、卯月!分が悪い!ここは撤退するぞ!」
「だ、だけど…!」
「卯月の気持ちはわかる!だけど人を正すには命が無くては話にならないだろう!?」
「………わかった。」
二人は自分のポケモンをボールにしまい、急いで大ホールから逃げ出す。そしてすぐにポケモンセンターへと駆け込む。
「卯月、今日はもう休もう。」
「…そうだね。」
二人はポケモンセンターの部屋の受付を済まし、すぐに部屋へと入る。二人はその後特に何することもなく、夜になり就寝した。
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『ポケモン達の〜。』
『ミッドナイットーク!』
『今日は新しい仲間のサンダースさんがいるよ。』
『…言っておくけどこの中で一番古参は私よ。あとサンダースさんなんて止めてくれないかしら?』
『じゃあなんて言えばいいのかな?』
『…さん付けじゃなかったらどうでもいいわよ。』
『じゃあダース?』
『最初のサンは付けなさい。』
『じゃあサン姉は?』
『…まぁ妥協点ね。』
『サン姉はどうやってマスターに出会ったの?』
『そうね。私が貴方と同じイーブィの頃で…彼奴が二才の頃ね。』
『僕、4才から一緒だけどサン姉と全然会ってないよ?』
『だからずっとボールに入れてたのよ。私をあんな所に閉じ込めて。私の心分かってなくて、いつも私に優しくて、不器用で、でもボールごしに毎日話しかけてきたりしてる酷い奴なのよ。』
『…ごめん、サン姉。酷いとは思えない、かな?』
『(ツンデレ?)』
『…ああ!もうこの話は終わり!もういい時間だから!私はもう寝る!』
サンダースはそう言いながら秋雨に寄り添うように寝始める。
『(やっぱりツンデレだね。)』
『(私も卯月と…。)』
『(僕、マスターの毛布の中〜。)』
そして各々自分の寝場所に戻るのであった。
To be contiuned...