第壱章 ヒノマル地方にて
▼第3話 清らかに戦え、初めてのジム戦!
ワカバタウン。春になると町の至るところに埋めてある桜の木が咲き誇り、絶景のひとつになっている。二人は洋館で一夜を過ごし、何事も無くワカバタウンへと着けた。
「ここがワカバタウンかぁ…。」
「ここにオダマキ博士がいるみたいだね。」
「うん、じゃあ探そうか。…あ、そうだ。その前に僕はポケモンセンターに行っておくよ。卯月はオダマキ博士を探してて。終わったら電話なりメールなりするから。」
ちなみにこの地方の通信技術は郡を抜いていて小型のタッチパネル式の携帯(iPhoneと考えてくれればよい。ただしこの世界での名前はFin Touchという。)
を老幼問わず持っている。
「わかった。」
秋雨はポケモンセンターのある方向へと去っていく。この地方もトレーナーであれば無料でポケモンセンターに泊まったり、ポケモンの回復が出来る。秋雨の姿が見えなくなり卯月は早速オダマキ博士を探そうと歩き出す。だが卯月は重要なことを思い出す。
「…オダマキ博士って…誰?」
卯月はまったくもってオダマキ博士の容姿を知らない。小さい頃からポケモンの知識に豊かな秋雨なら知っていただろうが、秋雨は今ポケモンセンターにいる。
「仕方ない、秋雨を追うか。」
卯月は闇雲に探しても意味が無いと悟り秋雨のいるポケモンセンターへと走り出す。足元に着いていたイーブィも一緒に走る。だが周りをちゃんと見ていなかったせいか少し太った男の人とぶっかってしまい、空壬博士から預けられた荷物を落としてしまう。
「いたた…す、すみません!」
卯月は落とした荷物を拾おうとした。すると、
「…君は卯月君か秋雨君のどっちかかい?」
その男の人が自分と自分の親友の名前を言う。
「俺は卯月ですけど…。」
「それはよかった!私はオダマキ。少し話でもしないかい?」
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オダマキ博士と卯月の二人は近くにあった喫茶店で向かい合うように座っていた。卯月の膝にはイーブィが座っている。
「いやぁ、助かったよ。私が作るある物の完成にはこれが必要だったからね。」
オダマキ博士はそう言い預かっていた荷物の中に入っていた何かの部品を取り出す。そして自分のバッグから赤い箱のような物を取り出し、先程の部品を取り付ける。
「これで完成だ。」
「それは何ですか?」
「ポケモン図鑑、のつもりなんだけど。私はオーキド博士と違って優秀じゃないから…。例えばこの機械を君のイーブィに向けてごらん。」
卯月は差し出された機械を受け取りイーブィへと向ける。すると機械の画面に

[イーブィ Lv13
技 体当たり
   砂かけ
   電光石火
   手助け         ]
と表示される。
「そのように自分のポケモンの使える技が表示されるんだ。名付けて【ポケモン技早見図鑑】。よかったら君にあげるよ。」
「え?いいんですか?」
「もちろん。君みたいな少年に使ってもらえるなら私としても嬉しいからね。」
オダマキ博士がそういうと卯月の懐の携帯が振動する、メールが来たようだ。そのメールは秋雨の部屋の登録が終わった、という内容のメールだった。
「秋雨君からかい?」
「はい、じゃあ俺は行きます。図鑑ありがとうございます。代金はここに置いとくんで。」
「…ちょっと待ってくれないか?」
店を出ようとする卯月を制するオダマキ博士。オダマキ博士は卯月の足元に寄り添うイーブィを見る。
「君のイーブィ、とてもなついてるね。これを持っていきなさい。」
オダマキ博士はCDみたいな物を卯月に渡す。
「えっと…これは?」
「技マシンという物だ。君のイーブィに覚えさせておくと心強い筈だよ。」
「何から何までありがとうございます!それでは!」
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「遅いぞ、卯月。」
『遅いぞー!』
卯月がポケモンセンターの前につくと秋雨とツタージャが不機嫌そうに迎える。
「ごめん…道に迷って。」
「一本道だよ?未知に迷ってんじゃないの?」
『上手いような上手くないような。』
「それで、オダマキ博士は見つかったんだろ?」
「おう!」
「じゃあ今日はのんびりこの町を散歩しようか。」
『さんせー!』
卯月と秋雨の二人はこれといった予定も無く先程の喫茶店とは逆方向に歩き始める。少し歩くと卯月は人の写真が貼ってあるポスターを見つける。
「何だろ、これ。」
ポスターにはショートヘアーの女の子がこちらに指をさす、という決めポーズをとっていてポスターの下の部分には来たれ、挑戦者と書かれている。
「何これ?」
「それはジムリーダーの一人だね。」
ジムリーダーとは、わかっていると思うが説明させていただこう。とある町にはジム、という建物がある。そのジムの中で待ち受けるのはジムリーダー。ジムリーダーは普通のポケモントレーナーより優れた人が担っている。そしてジムリーダーは挑戦者と戦い、ジムリーダーが認めた者にはバッチを渡す、という取り決めになっている。一つの地方に八つジムがあり、ジムリーダーに認められた証のジムを八つ集めると、そのジムリーダーよりも強いといわれる四天王に戦う挑戦権を得られる。ちなみにこの規則に穴があるとすればバッチはジムリーダーが認めた者渡されるのでジムリーダーが故意に渡さないなどそういうことがあるかもしれない。
「どうやらこの町にはジムがあるらしいね、行く?」
「もちろん!」
『絶対勝つよ!』
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大体のジムリーダーはどれかのタイプのエキスパートでそのタイプを知っていればその弱点となるタイプを連れていくことで攻略できる、のだが予測していなかったことが起きるのがポケモンバトルなのでそれだけで攻略出来たらせわしない。
「ワカバタウンジムリーダー、沢成小町(さわなりこまち)は水タイプのエキスパートだよ。君はロトムを持っているから平気だと思うけど。」
「たのもー!」
秋雨の話を聞かず、ジムの扉を思いっきり開ける卯月。
「あら?挑戦者かしら?」
二人を出迎えたのは色っぽいお姉さん。だがポスターにのっていたあの女の子とは全く違かった。
「あれ…?」
「安心しなさい、坊や。私の名前は沢成色舞(さわなりしきぶ)。ここのジムリーダーは私の妹よ。それで坊やは挑戦しにきたのよね…二人共?」
「あ、いえ。僕は違います。」
「そう、じゃあそこの坊や。私に着いてきなさい。」
卯月は言われるがままバトルフィールドにつれていかれる。
「お姉さんが相手してあげるわ。使用ポケモンは二体。全てのポケモンが戦闘不能になった方が負けよ。いいわね?」
「ええ、はい。」
「じゃあ、行くわよ!コアルヒー!」
『出番っすか?』
「いけ!ロトム!」
『レッツゴー!』
「コアルヒー、水鉄砲!」
コアルヒーはロトムに向け、水鉄砲を放つ。
「ロトム、かわせ!」
ロトムは迫り来る水鉄砲を右に避けることで回避する。
「そのまま電気ショック!!」
ロトムが放った電気ショックはコアルヒーに直撃する。
『もう出番終わりっすか…?』
「よくやったわ、戻れ。コアルヒー。言っておくけど次のポケモンはとっておきよ。」
「いや、最後のポケモンだし。」
『最後のポケモンはとっておきだよね?』
色舞の言葉に秋雨とツタージャのツッこみがとぶ。
「…行きなさい!シャワーズ!」
「電気ショック!」
シャワーズが出た瞬間にロトムは電気ショックを放つ。シャワーズは反応出来ずに電気ショックが直撃する。だが、何故かシャワーズにはダメージの色が見えなかった。
「ええ!?」
「普通効果抜群だよな…?」
「だから言ったでしょう?とっておきって。知ってる?よく水は電気を通すっていうけど本当は水の中の不純物が電気を通すの。シャワーズは水で出来てるのは知ってるわよね…?」
「…即ち、シャワーズを構成する水は真水ってことか。」
体の成分が水であるシャワーズ故の電気技の対処法に二人は言葉を無くす。
「シャワーズ!アイアンテール!!」
困惑するロトムにシャワーズの渾身のアイアンテールが決まる。ロトムは成す術無く戦闘不能となる。
「くっ…頼む!イーブィ!」
『ロトムの分も!』
「…あら、貴方も持ってるのね。でもね、進化形には大抵敵わないのよ?シャワーズ、ハイドロポンプ!」
「イーブィ!避けろ!」
「ふふ、冷凍ビーム!!」
ハイドロポンプをどうにか避けたイーブィだったが冷凍ビームが直撃し、卯月の近くまで吹き飛ばされてしまう。
「…アイアンテールにハイドロポンプ、そして冷凍ビームか。」
『もしかしたら最後の一つは…。』
「シャワーズ!とっておき!!」
吹き飛ばされたイーブィにたたみかけるかのように威力が強くなったとっておきが直撃する。
「イーブィ!」
『う……ぐ…!』
「あら、無理なら降参してもいいのよ?坊や。」
「……………じゃねぇ。」
「え?」
何かを呟いた卯月は顔を上げ色舞を睨み付ける。
「…俺は卯月だ!イーブィ!恩返し!!」
『う、おおおおぉぉぉぉ!!』
「え!?」
イーブィの信頼と友情がこもった、恩返し。色舞もシャワーズも何も出来ず、その攻撃はシャワーズに当たり、卯月は勝利した。
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「まさか負けるなんて思わなかったわ。妹に怒られちゃう。」
「俺も学ばせてもらいました。」
「坊や…いえ、卯月君。ワカバタウンジムリーダー代行の名のもとに貴方を認め、バッチを授与します!」
卯月は色舞からきれいな水色をしたバッチをもらう。
「やったな!イーブィ!」
『うん!』
「それと、これも持っていきなさい。」
色舞は水色の石を持ってくる。
「これは水の石。別にシャワーズにしろって訳じゃないけど持ってて損じゃないはずよ。」
「ありがとうございます!」
「さて、卯月。ジム戦も終わった所でポケモンセンターに戻るよ。」
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深夜。二人はとっくに寝静まっている。そんな中、三匹のポケモンの影が。
『とりあえずおめでとうって言っておくよ。』
『ありがとう、ツタージャ。私はようやくマスターの力になれたと思って嬉しいよ!』
『それにひきかえ僕は…。』
『いや、ロトムもコアルヒー倒したでしょ?あれだけでもお手柄だよ。』
『うん。でもさ…。』
イーブィは水の石の入った卯月のバッグを見る。
『私、進化するならどうしようかなぁ…。』
『敵方であるあのシャワーズの電気技対処法には驚いたもんね。』
『まだ決めるのは早いよ。君には無限の進化の可能性があるんだから。』
『うん、そうだね。今日はそろそろ寝ようか。』
三匹は頷き、各々自分の寝る場所へと戻っていく。ロトムはボールの中。イーブィはソファーの上。ツタージャは秋雨の毛布の中に。こうして夜はあけていった………。

To be contiuned...

■筆者メッセージ
うーん…あれ?とっておきってそんな技だったっけ?と、たまにあやふやな知識を出してるので間違いがあるかもしれません。その場合はヒノマル地方特有の効果と思って下さい。そうしないと話変わってしまうんですよね…。
みすりる ( 2013/04/04(木) 21:48 )