▼第2話 旅にハプニングは憑き物
シンメタウンとワカバタウンの間には【霧の森】という森がある。いつも霧がかかっていて視界が悪いとこから名付けられた安直な森。ただ名前の由来と間逆にその森の鬱陶しさは格別だった。ゴーストタイプのポケモンが人を驚かすことがあると言う。そんな森を卯月と秋雨、イーブィとツタージャの二人と二匹が歩いていた。
『うぅ〜…怖いよぉ…。』
イーブィは恐怖故に卯月の足にぴったりとつき歩く。それとは逆にツタージャは秋雨の腕の中で悠長に寝ていた。
「なぁ秋雨。ちゃんと道わかってんのか?」
「大丈夫だよ、卯月。」
親友の頼もしい顔にひとまず安心する卯月。
「もうすぐ古びた洋館があるから。」
「泊まる気か!?」
「だって今日中には出られそうにないもん。」
「で、でも古びた洋館でも誰かが使ってることもあるだろ!?嫌だよな?イーブィ。」
こくこくこく、と凄い速さで頷くイーブィ。
「安心しろ、誰も使ってない。」
「そういう問題じゃない!」
『そういう問題ならすぐに解決できる!』
「じゃあお前らは一日ジメジメした外で過ごすのか?」
「『うっ…」』
秋雨の言葉に二人(正しくは一人と一匹)の言葉がつまる。
「ほら、そうこう言ってる内に着いたぞ。通称、【不気味な洋館】だ。」
「そのまんまだね!」
『そのまんま故に恐怖心がもっと強くなるね!』
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「お、お邪魔しまーす。」
卯月もジメジメした外で寝るのは嫌らしく渋々と中に入る。
この洋館は昔、富豪の
金春座禅という人が持ち主であったが突如の失踪。洋館は妻である
金春清美に渡ったが、同じように失踪。その後、洋館は様々な富豪によって買われたが一人として例外無く失踪。最後の主、
雨銛慰芽の失踪でこの洋館は誰にも買われなくなった。
「以上【不気味な洋館】、別名【失踪の館】の説明だ。」
「あ、ごめん。用事思い出した。」
▼卯月は逃げ出した。
▼しかしまわりこまれてしまった!
「不気味な洋館とか失踪の館とかどうしてそんな所に泊まろうとするんだよ!?」
「いや、ほら。………楽しいじゃん?」
▼卯月は逃げ…
▼捕まってしまった!
「わかった。観念したよ。さっさと寝よう!」
「じゃあ僕はそこらを散策するよ。」
『ここで待ってる。絶対動かないからね!』
秋雨は震える二人(正しくは[略])をおいといてツタージャと共に洋館を見てまわる。卯月のいる部屋から少し歩くと上へと続く階段があった。秋雨はそれを使い一気に最上階までのぼる。
「4階、か。洋館にしては高いのかな?…おや?」
秋雨はドアが空きっぱなしの部屋を見つける。秋雨は慎重にその部屋へと近付きそっと中をのぞく。
「…ただの部屋か。」
警戒心を解いて秋雨はその部屋へと入る。すると秋雨は机の上にボロボロになった日記を見つける。秋雨はその日記のページをめくる。
「汚れがひどくて見えにくいな。」
慰め程度だが秋雨は日記の汚れを払う。するとほんのすこしではあるが所々読めるようになった。
「これは
金春座禅の日記だね。」
日記の一番はじめのページに
金春座禅の名前が書いてある。
「どれどれ…?」
■月31日
私の洋館がよ■やく完成した。この洋館のある場所に財産を隠した。忘れないようにメモをし■おく。
7月1日
嘘を見つ■たら全てが嘘だ。
7月2日
地下室■とても安全だ。私は■こでいつも癒される。
7月3日
見つけられない…ロトム。見つけたら地■室のTVに■れてあげよう。
追伸 財産はちゃんとあげよう。
「…
金春座禅。お前の挑戦状受け取った、僕の親友がな。」
秋雨はその日記を手に卯月のもとへと戻る。
「卯月、これ見て。」
「え?何これ?」
卯月は言われた通り、日記を見る。
「………財産はもらっていいの?」
「そう書いてるじゃん。」
「…ちょっと怖いけど、イーブィ!いくよ!」
『ひぃ〜…。』
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先程とは違う階段で地下へと降りる二人。イーブィはもう歩ける状態じゃないらしく卯月に抱き抱えられている。
「よかったよ、卯月。君が怖さで判断力を失ってたらどうしようかと。」
「最初はえ!?と思ったんだけどね。そんな上手い話は無いよ。」
そうこう言ってる内に二人は地下室の扉の前につく。二人は顔を見合わせ頷くと扉を開ける。中にあったものとは…。
「さ、さすがにこれは…。」
秋雨も声を失う。床一面に骸骨が落ちてあるのだ。だが二人は躊躇せず中に踏みいる。するといきなり地下室の扉がしまる。
『ふえっ!?!?』
「イーブィ、出番だ。あのテレビに向かって体当たり!」
『う、うん!!』
イーブィは震える体に鞭を打ちテレビに体当たりを決める。すると倒れたテレビからポケモンが出てくる。
『………ようやく、主人の挑戦状を突破した人がいたよ。』
出てきたのは日記にも書いてあったロトム。ロトムは二人を見て嬉しそうに笑う。
『でも、ちゃんとした解答を教えて?』
「勿論。まず、注目してほしいのは最初のページは何月かってことだ。これは意図的に汚されてる。そして次のページには7月と書いてある。なら最初の日記の日付は6月31日だ。だけど、6月に31日なんて無い。これが嘘なら
金春座禅はロトムをとっくに手に入れてこの地下室のテレビに入れている。多分この骸骨は
金春座禅以外の失踪した人々だろうね。」
『せいかーい!僕はここでずっと待っていた。主人はね、失踪したんじゃなくて死んだの。誰にも知られない所で。そして最後に主人が僕に「君の新しい主人は確かな知恵をもった人がいい。」って。だから新しき主人、僕を捕まえてくれないかな?』
「わかった。」
卯月は空壬博士から貰った空のモンスターボールをロトムにむけて投げる。だがモンスターボールはロトムには当たらず明後日の方向に飛んでいく。
「ノーコンだね。」
「い、今のは失敗したんだ!」
モンスターボールを拾い直し再びロトムへと投げる。今度はちゃんとあたり、ロトムはボールに入る。
▼やったー!ロトムを捕まえたぞ!
卯月はすぐさまロトムを外へと出す。
「よろしくな、ロトム!」
『こちらこそ、御主人!』
卯月のパーティーに新しい仲間が加わった。そして卯月達はこの後、怯えながら洋館に泊まったのだ。(卯月とイーブィだけだが。)
To be contiuned...