第壱章 ヒノマル地方にて
▼第1話 選択権はありません
ヒノマル地方。カントー地方とジョウト地方の少し離れた所にある島国、だがその存在はあまり知られていない。そのヒノマル地方はと言うと、ポケモン同士で戦わせるポケモンバトル。ホウエン地方お馴染みのコンテスト、イッシュ地方お馴染みのポケモンミュージカルが流行っている。即ち、ヒノマル地方は様々な地方の文化が集まっている、ということだ。そんなヒノマル地方に研究所をおくのは21才にして“博士”の名を貰った賢凪空壬(かたなぎそらみ)。目立った功績は残していないがあのオーキド博士の助手をつとめたことがあるくらいだから研究者としては優秀の分類にはいる。では彼女は何故こんな地方に研究所を置いたのか?一つは彼女の生まれ故郷だということ。そしてもう一つは、稀にポケモンと意思疎通がはかれる人が生まれるという話を聞いて。生まれ故郷だと言うのに博士になるまでそんな話を聞いたことが無い、というのは些か恥ずかしい話ではあるが仕方ない。彼女は研究者だ、研究以外に興味は無い。そんな彼女は研究所の外、シンメタウンの夜を一人電話しながら散歩をしていた。
「…あ!オーキド博士ですか?お久しぶりです、はい、はい。元気してます、はい、はい。」
まだ冬の寒さも抜けていない時期なので夜風はとても冷たい。だが彼女は他の研究者に迷惑になるからと、外で電話をしていた。
「オーキド博士はご存知ですよね?はい、ヒノマル地方に伝わる話です。それでですね、私は今シンメタウンに研究所を置いているんですけど二人、いたんですよ。私としては彼ら二人を旅に出したいと思って。………そうです!話が早いですね。ちゃっちゃとポケモン三匹送って下さい。」
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所と場所変わってとある一軒家。
「卯月!さっさと起きなさい!!」
その一軒家に住む母親であろう声が轟く、響くじゃない。轟く。卯月と呼ばれた少年は飛び起きる。少年の名前は宵月卯月(よいつきうづき)。卯月はクローゼットから洋服を取りだし着替える。青の帽子を浅めに被り、黒のジャージの前は全開。下に着るTシャツは赤と黒のギンガムチェックでズボンはジーンズ。
「…よし、行ってきます!!」
卯月は朝食をすぐに食べ終え、黒のスポーツシューズを履いて外に飛び出す。靴底がすりへっているところから長い間愛用していたことが窺える。
「今日は、ポケモンが貰えるんだ!」
卯月は走りながら空壬博士の待つ研究所へと向かう。卯月は10才になりポケモンと旅が出れるようになった。そこに空壬博士からポケモンをあげる、というお便りが来たのだからうかれるのも無理は無い。卯月の視線に研究所が見えてきた頃。
「随分とうかれてるね。うーづーき。」
「ん?ってうおぉ!!」
卯月は何者かが足をかけたことにより思いっきり転んでしまう。
「いつつ…秋雨。止めるには他の方法があるだろ…?」
卯月を転ばしたのは卯月の隣に住む鼎出秋雨(かなえであきさめ)。2、3才くらいからの友達でジャージ仲間。男のくせにポニーテールで中性的な顔立ち。青いジャージを羽織るように着て、下は無地のワイシャツ。ズボンは卯月と同じようにジーンズ。そして秋雨が抱き抱えるのは秋雨の相棒であるツタージャ、現在就寝中。秋雨曰く「ポチエナに襲われてた所を助けた」と言うが卯月の記憶ではそれは4才くらいの頃だったと思う。
「今日はポケモンが貰えるんだぜ!?俺は楽しみでしょうがないよ!」
「あ〜良かったね。ほら、研究所着いたよ。」
卯月は上機嫌で研究所の扉を開ける。
「…あら、卯月君と秋雨君。よく来たわね、さぁ入って入って。」
空壬博士に入るように促され、中に入る二人。そして卯月は感嘆の声をあげる。空壬博士とは顔馴染みだったが研究所には一度も入ったことがなく、とても新鮮だったからだ。
「さ、これが貴方達のポケモン…ああ、そうね。秋雨君はいらないって言ってたわよね。卯月君、この中から好きなのを選んでね。」
空壬博士が持ってきたのは三つのモンスターボールが入ったバッグ。卯月は期待を胸にそれぞれのモンスターボールを掴む。

▼卯月は一番右のモンスターボールを掴んだ。
▼それは進化ポケモンイーブィよ
▼卯月は真ん中のモンスターボールを掴んだ。
▼ごめんなさい、それ空なの。
▼卯月は一番左の…
▼それも空よ。

「博士、嫌がらせですか?」
「私もその気は無かったんだけどね。…あのオーキドのジジィが…。」
自分の上司であるオーキド博士をジジィ呼ばわりした空壬博士を二人はあえてスルーした。
「だけど卯月。イーブィは色んなタイプに進化出来るんだ。貰っても損じゃないと思うよ?」
「そうなんだ…じゃあ、イーブィ!出てこい!!」
卯月はモンスターボールを上に放り投げる。するとモンスターボールの中からイーブィが出てくる。卯月はイーブィに視線を合わせるように腰をかがめる。
「俺は卯月。よろしくな!」
『卯月…うん!よろしく、卯月!』
どうやら二人は相性がいいらしくすぐに仲良くなった。
「(ふふふ、やはり卯月君がポケモンと喋れると見た私の目に狂いは無かったわ。じゃあ秋雨君はどうなのかしらね…そうだわ!)」
「ねぇ二人共。ポケモンバトルをしてみたらどうかしら?」
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研究所横のバトルグラウンド。秋雨と卯月の二人は対峙していた。
「なんか凄い巻き込まれた気が…。」
「いいじゃん!はやくやろうぜ!秋雨!いけ!イーブィ!」
『まかせて!』
「ああ、もう!やればいいんだろ?起きて、ツタージャ。」
『ふあぁぁっ。』
二人と同じように戦う気満々のイーブィと寝起きのだるそうなツタージャが対峙する。
「これよりシングルバトルを始める!
審判は私がやるわ。使用ポケモンは一体!戦闘不能になったら負けよ。それでは試合…開始!!」
「先手必勝!イーブィ!体当たりだ!」
イーブィはツタージャに向かって走り出す。
「…ツタージャ、かわしてリーフブレード。」
ツタージャはイーブィの攻撃をぎりぎりまでひきつけ、当たる寸前に跳躍してかわす。そして無防備となったイーブィの背中にリーフブレードをあてる。
「イーブィ!」
『大丈夫だよ…!』
「よし、じゃあイーブィ!体当たり…
からの砂かけ!」
卯月が小声で話したため体当たり、という命令しか聞き取れなかった秋雨だが先程と同じようにツタージャに向かって体当たりをしようとしてるイーブィを見る。
「…何を考えてんだか。ツタージャ、同じようにむかいうて。」
イーブィの体当たりをまた跳躍で避けるツタージャ。そしてまたリーフブレードを決めようとする。が、イーブィが後ろ足を使いツタージャに砂をかける。いきなり砂をかけられたツタージャは怯む。
「よし、今だ!イーブィ、体当たり!」
怯んだツタージャに体当たりをきめるイーブィ。
「ツタージャ、大丈夫か。」
『む〜…。』
ツタージャはダメージよりも体についた砂を払っていた。
「大丈夫と受け取った。ツタージャ、地面に向けてリーフブレード。」
ツタージャは秋雨の言う通り、地面にリーフブレードを決める。すると砂塵が舞い、砂埃がたち視界が悪くなる。
「くっ…。これじゃあ…ん?」
卯月は砂埃にうつったツタージャの影を見つける。
「イーブィ!あそこに向かって体当たり!」
イーブィはそのツタージャの影に向かって走り出す。だが、いきなり転んでしまう。先程のリーフブレードで土が抉れ、そこに足を引っかけたようだ。
「これで仕舞いだ。ツタージャ、グラスミキサー!」
『決めるぞー!』
転んだイーブィにツタージャのグラスミキサーが直撃する。その攻撃の衝撃で再び砂埃がたつ。そして砂埃が晴れるとイーブィは倒れていた。
「イーブィ戦闘不能。秋雨の勝利!」
「イーブィ!」
卯月はすぐにイーブィへと近付き、抱き抱える。
『ごめんなさい、卯月…。』
「いや、イーブィは悪くないよ。相手が悪かったんだ。」
「僕のツタージャは強いって意味?」
『マスターの策略が酷いって意味。』
「(やっぱり、やっぱりだわ!卯月君も秋雨君も二人ともポケモンと喋れる!こんな二人を旅に出したらどんなことが起きるのかしら!)」
「さて、初バトルが終わった所でふたりにお願いがあるの。」
「どうしたんですか?」
「ワカバタウンにいるオダマキ博士って人にこの荷物を渡してほしいの。」
空壬博士は卯月にちっちゃい箱を渡す。
「今すぐ、じゃないわ。貴方達旅に出るでしょ?そのついでにね。」
「はぁ、わかりました。」

▼卯月は箱を開けようとした。
▼人の物取ったらどろぼう!

「ということで宜しくね。」
「わかりました。」
空壬博士は研究所へと去っていく。
「…さて、卯月。僕は準備がある。君も準備が出来たら研究所前で待ち合わせだよ。」
「わかった。………。」

▼卯月は箱を開けようとした。
▼人の物取ったらどろぼう!

To be contiuned...


■筆者メッセージ
初めて書きます。稚拙な文かもしれませんがよろしくお願いします。
みすりる ( 2013/04/03(水) 23:20 )