第五話 ライト
あのあと、ライト達は“海岸の洞窟”から脱出した。そして、今は最初であった所へと戻ってきていた。
「えっと…。じゃあ改めて。有り難う御座いました」
「いいって。いいって。別に対した事はしてないから。それとお前、敬語なんか使わなくていいよ。普通にこいつらと同じように接してくれても」
「え…?」
「あ……。い、いや。だ、だってお前、俺が起きる前は普通にこいつらには敬語なんか使っていなかっただろ?」
襤褸を出したライトはあわててそれを隠す。本当に喋っていたかは分からないが。
「あ、なるほど…」
それに納得するココア。本心ではあまり信じていなかったが、それを表情に出す事はなかった。
「それで、あの続きは?」
「え?…ああ」
「うん。ねぇ、気になるから早く教えてよ!」
急かすラウルに少しライトは戸惑うが、一息置いてから口を開いた。
「俺さ…
元人間なんだよ」
「「「!?」」」
「さらに記憶喪失」
「「「!?」」」
その言葉に驚かない者はまずいない。もう三匹は頭が混乱していた。元人間と言ううえに、記憶喪失だと言い出すのだ。そして、その場はしーんと静まり返った。長い沈黙の後、最初に口を開いたのはラウルだった。
「ほ、本当に…も、元人間で…記憶喪失なの…?」
「いや、信じてくれとまでは言わねぇよ?もしかしたら記憶の入れ違いかもしれないしさ」
「そ、そう…」
また長い沈黙が流れた。そして、「あっ」とココアが呟いた。
「何?」
「え、えっとね六年前にもこんな感じなのがあったの」
「「「え!?」」」
今度はココア以外が驚く。ちょっと戸惑ったココアだったが、すぐに「た、たしか」と話し始めた
「その時も元人間のピカチュウが来たらしいよ。何でもそのピカチュウはこの世界の危機を救ったんだって」
「「「「………」」」」
ココアとラウル、ルミアはライトを見つめる。そして…
「「「ないない」」」
「酷くない!?」
はっきりとないと言われたのでちょっとムカついたライトだったが、ため息をついてすぐに落ち着いた様子で口を開いた。
「で、それから戻ったのか?」
「ううん、そこまでは分からないんだ…」
ライトは「そうか…」と呟いた後、「ありがとな」と言った。それにココアは「どう致しまして」と返した。
「ところで、ライトはこれからどうするの?」
「分かるだろ?元人間で記憶喪失。どこにも行く宛なんてある分けないだろ。旅するくらいしかさぁ」
ラウルが問うが、すぐにライトが答える。
「「「………」」」
ココア、ルミア、ラウルは顔を合わし、少しこそこそと話した後、少し頷いてライトを見た。
「じゃ、じゃあ僕たちと…探検隊やらない?」
「探検隊?」
探検隊というのは、その名の通り探検する隊の事だ。
「うん。ライトは行くところないんでしょ?」
「まあ、そう言う事だな」
「じゃあ行こう!」
「はぁ!?えっ…ちょ!!」
そのままラウルはライトを連れて来た道を戻って行った