第四話 VS! ガブリアス&カイリュー
…と言うわけにはいかないようだ。
「あれ、俺たちを信じてくれるんじゃなかったっけ?」
「いいや、お前達を信じる事なんてしねぇよ」
目の前にはガブリアスが立っている。そして後ろにはカイリューが立っている。
「お前らだろ?俺たちの部下を蹴散らして行ったのは」
「「「「?」」」」
俺たちはそんな事知らないので首を傾げる。
「とぼけるな!てめぇらだろ!」
「いや、知らねぇ。あの見にくい存在なら知っているけど」
俺はドガースとズバットの二匹を指差す。俺が指差している所をガブリアスとカイリューの二匹は見るが、すぐにこちらに目を戻した。
「違う!あんな見にくい存在ではない!」
「そうか…」
「まあいい!竜の息吹!」
「竜の波動!」
早速二匹の竜の波動と竜の息吹がこちらに向かってくる。人の話も聞いてくれないのか…。てかやばい、避けられるスピードじゃねぇ…。
「まもる!」
当たる!…そう思った瞬間、目の前に緑色の壁が出来上がった。
「行くわよラウル!」
「うん!」
俺が「うおっ、すげぇ」と言っている間に、ルミアとラウルは同時に、電光石火で近づいて行った。
「「ぐっ…!」」
攻撃が終わったばかりだからか、ラウルとルミアの攻撃は二匹の腹に直撃した。
「ぴ、ピカチュウさん!攻撃してくださいよ!」
急に横から叫ばれた。いや、でも俺技なんてできないし…。できるのはたった一つなんだよなぁ…
「まあいいや」
俺は一気にガブリアスの前に行く。喰らえ!俺の…
「パンチ!」
俺はガブリアスの腹にパンチを喰らわせる。
「ぐふぅ!」
そしてその場で膝をつく。相当痛かったようだな。
「き、貴様ぁ!!」
「がはっ!」
急に起き上がりやがったガブリアスに思いっきり殴られる。だが俺は空中で姿勢を立て直す。
「ちっ。まだ気絶していなかったか」
「俺がただのピカチュウのパンチ一発とリオルの電光石火一発で倒れるとでも?」
いや、実際俺はただのピカチュウじゃないけどな。元人間だから。にしても今のパンチ痛いなぁ…。さすがガブリアスだな。
「俺を忘れてないか?」
「!?」
急に後ろから声がしたから振り返ると、其処には既に技を溜めているカイリューがいた。だがその後ろにはラウルが来ていた。
「悪いな、すっかり忘れてたぜ。…俺だけな」
「電光石火!」
「パンチ!」
「な!?ぐふっ!!がはっ!!」
カイリューはラウルに気付いていなく、そのままラウルの攻撃を受ける。そしてさらに俺が一発殴った。
「テメェらぁ!」
ガブリアスが一気にこちらまで近づいてくる。だがガブリアスも後ろの二匹に気がついていない。
「手助け!」
「喰らいなさい!火の粉!」
「な!?ぐうぅ!!」
手助けで威力が上がった火の粉を喰らってガブリアスは少し辛そうだが立っている。
「ちっ。結構強いわね」
「うん。でもまさか海岸の洞窟にこんな強い敵がいるなんて…。あの噂は此処の敵ポケモンじゃなくてあの二匹だったのかもね」
あの噂…? …ああ、この洞窟に入る前に言ってたあれね
「…ふう、ただの雑魚共かと思っていたが、結構やるじゃねぇか」
いつの間にかガブリアスとカイリューの二匹は俺たちから少し離れていた。…! この状況なら…
「あれ?あんたらビビってんのか?こんなに距離置いて」
「ああ?」
「やめろ。ただの挑発だ」
俺の挑発にガブリアスは乗ったがすぐにカイリューに抑えられる。
「ただのピカチュウ一体、リオル一体、ロコン一体、イーブイ一体、合計たったの四体。しかもあんたらより断然と小さい。さらに弱い。そんな奴らに負けるのが怖いから、そんなに距離を置いてるんだろ?」
「「きっ…! 貴様ぁ!」」
よし、二匹が挑発に乗った…。後は隙を見て攻撃を仕掛けるだけだ。それにしても案外簡単に挑発に乗ったな。
「お望み通り近くまで行ってやろうじゃないか!喰らえ!ドラゴンダイブ!」
「ドラゴンクロー!」
「お前ら!避けろ!」
二匹の攻撃を俺はラウル達三匹に避けるよう指示する。そして俺たちはガブリアスとカイリューの二匹同時の攻撃を避ける。ドラゴンクローなら耐えられるかもしれないがドラゴンダイブを喰らったら耐えられるわけがない。
「喰らいなさい!炎の渦!」
ルミアの炎の渦に二匹は閉じ込められる。その間に俺は戦っている間に考えた作戦を三匹に教えた。
「いいかお前ら、あいつらはちょっとやそっとで倒せる相手じゃない。だから最大火力の攻撃を打て。今あいつらは身動きが取れないから、今のうちに技を溜めるんだ」
「わっ、分かった」
「了解」
「え、でも私は遠距離技持ってないですよ?」
「じゃあ手助けをしてくれ」
「はっ、はい!」
そう言ってラウルとルミアは技を溜める。ココアは手助けを発動する。
さて、俺はどうするかな。ピカチュウの主な技と言ったら十万ボルトだが、多分この体の弱さじゃ無理だろう。精々電気ショックができるくらいだろうな。でも俺は元人間。そんな電気の出し方が分かるわけ
《両方の電気袋に電気を溜めてから、狙いを定めて打つだけだよ》
…なんだ?今の…?まあいいや、今の声が本当なら…
「ライト。いつでも行けるよ」
ラウルが技を溜め終わり、何時でも発射可能と言った。ルミアは火の粉、ラウルは波動弾…あれ?…リオルって波動弾覚えたっけ?
「親が教えてくれたんだ」
「なるほど。てか、人の心読むなよ」
そう言い終わった瞬間、電気袋に電気が溜まったのを感じた。
「…よし。いいか?お前ら。さっきのルミアの炎の渦でギリギリまであいつらの体力を減らす。そして、炎の渦が消える瞬間に思いっきり放て」
「うん!分かった!」
「ふん…!あんたに命令されなくてもそうするつもりよ」
「分かりました」
そう言ってココア、ラウル、ルミアの三人はガブリアスとカイリューの二匹に目を向けた。それを見ると俺も二匹に目を向ける。その時にはもう炎の渦は既に消えかかっていた。
しばらくすると、ガブリアスとカイリューはお互いに少し頷くと、腕を上に上げた。
「打つぞ!お前ら!電気ショック!」
「え!?うん!波動弾!」
「は!?ちょっ!火の粉!」
そして、あの二匹は自力で炎の渦を消した。だが、俺がとっさに指示をしたので、もう俺たちの技は二匹の前に迫っていた。
「「な!?」」
そしてその瞬間、爆発音が響いた
「…終わったな」
「やった〜!!」
「ふぅ。疲れた〜」
「終わった〜…」
俺たちはその場でぺたりと座り込む。あ〜疲れた。
「有り難う御座いました」
そう隣で言ったのはイーブイ。ココアだ。
「有り難ね」
「有り難」
「いや、俺は何もしてないよ。」
有り難うかぁ。何か実際言われてみると結構気持ちいいな。
「ねえ。君名前は?」
ラウルが俺に名前を聞く。名前ねぇ。答えられるけどさぁ…。やっぱり…
「人に名を聞くときはまず自分が名乗れ」
…既に知ってるけどね。やっぱり知ってたらおかしいと思われちゃうし、後をつけていたのもバレちゃうしな。
「あ、うん…。僕はラウル・シーラ。見ての通り種族はリオル」
「私はルミア・ミクル。ロコンよ」
「え、と。私はココア・フルートです。種族はイーブイです」
「俺はライト。…名字は覚えていない。それと…」
「それと?」
信じてくれるか?…こいつらの事だからな…信じてくれるよな…。でもいったん此処を出よう。
「続きは外に出てから話すよ。ちょっとめんどくさい事になりそうだからな」
「えぇぇぇ。気になるなぁ」
そして、俺たちはガブリアス、カイリュー、ドガースにズバットの四匹を残して、元来た道を戻って行った