第二話 海岸の洞窟
「手助け!」
「火の粉!」
「電光石火!」
此処は“海岸の洞窟”。その洞窟の中で三匹のポケモンがどんどん敵を倒していく。
「結構弱いのね。此処の敵」
「だね。僕でも簡単に倒せるよ」
「でも油断は禁物だよ?」
そう、たとえ敵が弱いとはいえ、油断はしてはならない。だから三匹は洞窟に入ってからずっと気を引き締めて歩いている。
「でも結構奥まで来たよね」
「そろそろあいつらに会ってもいいと思うけどね。見つけたらラウルと一緒にボッコボコにしてやるんだから!」
「何で僕まで入れるの!?ルミア!」
「ははは…」
三匹がそんな事を話していたら周りに沢山のポケモンがゾロゾロと出てきた。カブト三体、カラナクシ一体、サニーゴ二体にシェルダー二体だ。
「めんどくさいわね…」
「ココア、手助けをお願い!」
「分かった!手助け!」
ココアは頼まれた通り手助けをする。
「「電光石火!」」
二匹はココアの手助けで威力が高くなった電光石火で敵ポケモンに迫る。が、それは簡単に避けられる。
「ちっ!」
そして二匹はすぐにココアのもとへと戻る。
「あ、…に、逃げられない…!」
「何で逃げる気満々なのよあんたは!」
逃げようとしても前も後ろもはばかれて逃げられない。そして敵ポケモンは…
「「「ひっかく!」」」
「どろかけ!」
「「「「体当たり!」」」」
一斉に攻撃を仕掛ける。合計八体だ。もちろんそんなの避けられるわけが無く…
「うっ!」
「きゃ!」
「くっ!」
ラウル、ココア、ルミアの順に吹っ飛ぶ。
だが三匹も負けてばかりじゃない。空中で姿勢を立て直し、すぐに攻撃を仕掛ける。
「手助け!」
「電光石火!」
「ぐあ!」
「くらいなさい!炎の渦!」
ルミアは炎の渦で相手の動きを止める。敵はそのせいで身動きをとれずにいるが、相手は水タイプ。いつ消されるか分からない。
「さ、逃げるわよ!」
「「え!?」」
ルミアがとった行動に二匹は驚く。普段逃げるなんて行動をとらないルミアが逃げるという行動をとったからだ。何故と思う二匹だったがすぐに分かった。今回の目的はドガースとズバットの二匹に追いつく事。普通にダンジョンを探検する為じゃない。そんなことをしていたらあの二匹に逃げられてしまうからだ。だから炎の渦で相手の動きを止めている間に先を急ぐ事にしたんだと。
「ほら早く!」
「「う、うん!」」
炎の渦に囲まれて動けない敵ポケモン達を後目に、ココア、ラウル、ルミアの三匹は先を急いだ。
〜〜〜☆〜〜〜
「なんだ、結構あいつら強いじゃないか」
俺はあの三匹の後をつけている。今までの会話によると、イーブイの名はココア、リオルの名はラウル。そしてロコンの名はルミアというらしい。
「え。逃げるのかよ!」
ちょうど目の前であの三匹は沢山の敵を残して奥へと逃げて行った。やばい、すぐに炎の渦は消される!
俺はとにかく炎の渦が消される前にそこを切り抜けようとする。もちろん三匹にもバレないようにだ。
「あ」
後ちょっとの所で炎の渦が消された。クソ!
「あれ、これって…、ヤバくない?」
俺は三匹に見つからないよう、壁にそって通っていたので、壁に追い詰められる。
そして、敵が一斉に襲いかかってきた。
「ど、どうすれば…。お!こいつだ!」
俺は足下に落ちていた大量石ころを拾う。
「うおらぁぁぁ!!!」
とにかく俺は大量石ころを相手に投げつけた。
十分後
「はぁ…はぁ…」
あの後、何とか石ころが底を尽きる前に敵を全員倒した。そして、あの三匹にまた追いつく為に今はとにかく走っている。
「くそ、何処まで行ったんだよ…!」
何度も周りを見渡すが見つからない。此処まですっと一本道だったから道を間違えたなんて事はないはずなんだがな…
「あいつらもまさか走っているとかないよな…」
だがもし走っていれば追いつかないのはあたりまえだ。
「ああ〜もうさすがに疲れたわ」
俺は走るのを辞め、歩いて追いかける事にした。だって仕方ないだろ?全然見つからないんだから。
「! また敵か」
さっきから何度も敵が出てきては襲ってくる。一体どうなってるんだ。この洞窟は…
「まあ、いいさ。何度でも倒してやる!」
俺は出てきたカラナクシに向かって走り出す。そして攻撃を仕掛けようとした瞬間…
チュドーーーン
爆発が起きた。
そして、俺の体はそのまま上へと吹っ飛んだ
〜〜〜☆〜〜〜
私たちは、あの大量の敵に遭遇してからずっと走っている。もちろん今も。ルミアに何を言ってもずっと走り続けたからだ。さすがにもう疲れてきた…。
「ねぇ。もうさすがに来ないよ!」
「え、あ、そ、そうね…!」
ラウルがそう言うと、ルミアが走るのをやめてその場で止まった。
もしかしたらルミアがこの中で一番怖がってたんだろうな。
「はぁ、はぁ、ルミア、もしかして、怖かったんじゃ…」
「ふん!」
ラウルが口に出さなくていい事を口に出したので、ルミアはラウルの頬を殴った。
「怖いわけ無いわよ!」
「わ、分かったよ!」
たとえ怖くてもプライドの高いルミアは弱音を吐く事は絶対にないだろうな。…あれ?
「ねぇ。二人共。あそこ、何か見えない?」
「え?」
「あ、ほんとね」
なんだろう。紫色の何かが見えるけど…。
「! あいつらよ!」
ルミアがそう言った。さすがルミア。視力なら誰にも負けない。
「行くわよ!」
「ま、待って!」
早速飛び込もうとするルミアを私は止める
「まだ向こうは私たちに気がついていない。だから不意打ちを仕掛けよう」
「あ、そっ、そうね」
ルミアは突っ込んでいこうとした自分が恥ずかしかったのかすこし頬を少し赤くしながら岩陰で座った。
「えっとね。まず私とラウルは中距離、遠距離技を覚えていないでしょ?だから遠くの敵に攻撃する技はルミアだけしか覚えていない事になる。ここまではいい?」
「うん」
「ええ」
二人が頷いたのを見ると、私は説明を続ける。
「だから、まず最初に私とラウルが物理技で攻撃するの。私が体当たりで、ラウルが電光石火ね」
「え?でも気付かれちゃうんじゃないの?」
やっぱりそう聞いてきたラウル。それにルミアが対応する
「あんた馬鹿?確かに先に気付かれて避けられるかもしれないけど、急な攻撃にあの二匹が対応できると思う?あの泥棒さんがよ。正義が勝つんだから!」
「最後の方は良いとしてそういう事」
「あ、そういう事」
少し考えたラウルは私が言っている事を分かってくれたのか、「なるほど」と呟いた。
「それで、私がズバットを狙うからラウルはドガースを狙ってね」
「うん。分かった」
ラウルが頷いたのを確かめると、私はルミアに目を移して話を続ける。
「それで、私とラウルは攻撃し終わったらすぐにその場を離れるからルミアは火の粉でさらに攻撃して」
「分かった」
ルミアが頷く。でも一番心配なのはラウル。攻撃し終わったらすぐにその場を離れられるだろうか…。いや、別にそんな事を考えなくてもどっちにしろルミアはラウルに攻撃を当てるよね。
「ラウル。あんた失敗するんじゃないわよ」
「そ、そんな事言われても…! というか火を吹くのは辞めてよ!」
「ははは…」私はそう苦笑いしながら少し考えていた。
…さっきから何か音がしてたけど何だったんだろう。と
チュドーーン!!
「「「!?」」」
「「!?」」
私たちは爆発音がした方に顔を向ける。多分ドガースとズバットの二匹も向いているんだろう。…多分もう今の爆発音のせいでチャンスはもうしばらくは来ないかも。あの二匹は多分もう既に周りを警戒してると思う。だから後ろからの物理攻撃なんてほぼ百パーセントと言ってもいいくらいの確率で避けられちゃうよ。
「何よ今の!」
ルミアがコソコソと呟く。
「分からない。でもしばらくは此処でジッとしておいた方がいいのは確かだよ」
私もコソコソと呟く。
「分かった」
ルミアがそう言たあと、頷いた。でも本当に何だったんだろ…。
それから私たちはしばらくその場で様子をうかがう事にした…。