第十話 依頼完了
《あっ、ごめんね☆一番大切な事を言い忘れてた☆》
「なんだよ。また時間止めやがって。今良いとこだったんだけど?」
《ごめんってば。で、一番の本題はその本についてねさっきも言ったように、あの本にはほぼ全ての技が乗ってるんだ》
「それは知ってる。だけど、それがどうしたって思って話をそらしたよ。何か、どうでも良さそうだったからな」
明らかに苛ついている感じで会話するライト。それに対して夢に出てきたピカチュウは冷や汗をたらしながら会話する。
《ど…どうでも良い…?ま、まあとにかくね。全ての技とタイプを、もう覚えなくても良いって事だよ。僕たちが見つけ出してあげたからね》
「じゃあ、俺はもう力を好きな様に使えるってことか」
《そう言う事だね。ライトはもうピカチュウが覚えられる技は覚えたみたいだし》
ライトは自分の手を少し見た後。夢に出てきたピカチュウにまた目を向けた。
「…ところで、全てのタイプになれるって言ったけど、どうやってなるんだ?さっきの本はただタイプが乗ってただけだぞ?」
《お、良い所に気がついたね☆》
その言葉にイラっと来たのか、ライトは電気袋の電気をパチパチさせる。
《すいませんでした!!…で、その店なんだけどね。僕たちもよく分かってないんだ☆》
「じゃあ帰れ。もうお前目障りだ」
冷たく言い放つ言葉に、夢に出てきたピカチュウは、少し泣きそうになりながら《分かったよ…ウッ…ウッ…》と言った。
《じゃ、じゃあ…僕行くね…》
「とっとと行けよ」
それだけ言うと、夢に出てきたピカチュウは泣きながら消えた。もちろん。それと同時に周りの時間が動き始めたので、ライトは早速技を放つ。
「十万ボルト!」
ライトは早速使えるようになった十万ボルトを使う。だが、まだ一度も使った事のない十万ボルトだから電気袋が焦げると思い、少し弱めに放つ。いつの間に十万ボルトなんて覚えたの?っとでも言いたげに少し驚いた顔でこちらを見たシフォン達三人だが、すぐにカラナクシ達に目を向けて、攻撃を放つ。
「電気ショック!」
「炎の渦!」
「手助け!」
炎の渦と電気ショックを簡単に避けるカラナクシ達。だが、ライトの十万ボルトはかなり早く、西のカラナクシは避けられずに正面から喰らった。
「ぐう!?」
少しだけよろめいた西のカラナクシだったが、すぐに体勢を立て直し、技を放った。
「「水鉄砲!」」
カラナクシ達は水鉄砲を放つ。水鉄砲と言えば弱いイメージだが、このカラナクシ達は高レベルなので威力はかなり高い。
「電気ショック!」
それに対して、ライトは電気ショックで水鉄砲を抹殺する。そして、小規模な爆発が起きる。
「…っ!」
カラナクシ達は煙で回りが見えなくなり、動く事ができない。だが、ライト達はその煙を利用して、攻撃を仕掛けた。
「電撃波!」
「電気ショック!」
「火の粉!」
「て、手助け!」
ココアは遠距離攻撃技を持っていないので、咄嗟に手助けを発動する。するとライト達の身体が少し光りだした。実際、今まではライト達の身体が光る事は無かったが、ココア事態が少しだけ強くなったからか、光る用になったんだろう。いや、もしかしたら今まで出ていたのかもしれないが、ライト達が気付いていなかっただけだろう。
「!? ぐあっ!」
ライト達の技が一匹のカラナクシに当たったのだろう。小規模な爆発と同時に痛々しい声が響いた。
「おい!大丈夫か!?」
「よそ見はいけないねぇ?」
「!?」
急に煙の中から飛び出してきたライトに、東のカラナクシは対応できず、闇雲に水鉄砲を繰り出した。
「当たるかよ!アイアンテール!」
「がはっ!」
ライトは、水鉄砲を簡単に躱し、カラナクシの背中に金属の様に固くしたアイアンテールを打ち込む。
「「ぐぅ…!」」
東のカラナクシは、西のカラナクシが居る方へと飛んで行った後、ぶつかったのか、二匹が呻き声を上げた。
「…ふぅ。…やったか?」
小規模の爆発で出来た煙が晴れると、其処には二匹のカラナクシが倒れていた。すると、ライトは二匹のカラナクシの頭を一、二回ほど蹴った。
「うん。気絶してる」
それだけ呟くと、ココア達の方に目を向けた。ココア達がライトによってきて言った。
「ライト、あんたもうアイアンテールとか使える様になったのね。技マシンでも使ったの?」
と、ルミア。
「でもアイアンテールなんて拾ったっけ?」
次にココア。
「ライトが自分で拾たんじゃないの?」
と、最後にシフォンが言う。
「ん。まあ…話すと長くなるから、帰ったら話すよ」
ライトは話をその場で打ち切る。そして、洞窟の奥の方へと足を動かした。それにココア達は疑問を抱きながらもついて行った。
「ここか?奥地は」
「そうみたいね。だってほら、あそこに真珠が落ちてるでしょ?」
「あ、ほんとだ」
「ついにこの“湿った岩場”ともおさらばね!」
「お前、俺たちがここに来なかったら、他の誰かが来るまで何時迄も此処に居た事になってたな。俺たちが来てくれた事に感謝しろ」
「はいはい。感謝してますよっと」
「お前、何かもう態度悪くないか?」
こんなのんびりとした、ゆとり探検隊でも何とか最奥部に到着した。ライトは、依頼に書かれていた物と思われる真珠を拾い上げた。
「よし、依頼完了だな」
「帰ってモモンの実でも食べたいわ〜」
「何でモモンの実なの?」
「気分よ」
「私は帰られたらそれでいいわ」
「お前ら…」
周りから見たら、この探検隊大丈夫か?とか、すぐに解散しそうだな。などと思われるだろうな。っとライトは心の中で呟いていた。
〜〜〜☆〜〜〜
「有り難う御座いました!このご恩は一生忘れません!死んでも忘れません!」
俺たちは今、依頼主のバネブーに頭を下げさせている…おっと、下げられている。というか、死んでも覚えられると何か怖いんだけど。
「ではお礼はこの袋の中に入っていますので、私はこれで。本当に有り難う御座いました!」
「はいよ〜。これくらいの事なら何時でも頼んでくださいね〜」
バネブーが去って行くと、俺は袋を開けた。
「何だこの栄養ドリンクみたいなの」
俺は三本の栄養ドリンクの様な物を取り出した。
「あ、それはね。タウリン、リゾチウム、ブロムヘキシンッて言ってね。とても貴重な物だから大切に使わないと…って、ああ!」
あれ、何か今とても貴重な物って言った?え?俺、飲んじゃったんだけど?
「あんたねぇ…。それどんだけ貴重か分かっているのかし…」
「おかえり〜!!!」
ルミアが最後まで言い終わる前にラウルが飛び込んで来た。それを俺はグーパンチで受け止めた。
「ふぐうっ!?」
ラウルは地面でゴロゴロとのたうち回った。ざまあ。
「ライトのラウルに対する態度は酷いね」
「ラウルはチームのストレス発散道具だからね」
「ルミア…それは言いすぎ」
明らかにラウルに対しての皆の扱いが酷いのは誰が見ても分かるだろうな。でも仕方が無いだろ。何故か腹が立ったんだから。
「もう…僕泣いてやる…」
「泣け」
「泣けばいいじゃない」
「二人共…」
「それより、この馬鹿みたいなリオルに私がいる事に気付かれていない私が泣きたい」
そのシフォンの言葉で、『レジェンド』のメンバー全員がシーンとする。
しばらくして、ラウルが口を開いた。
「あ、ごめん。全く気がつかなかった」
「ライト。私、このストレスだけがたまるリオルを痛めつけたい。というより、痛みつける」
「ちょ、シフォン!やめろ!これ以上やるとラウルが引きこもりになっちまう!」
俺は明らかにいらだっているシフォンを止める。ココアもシフォンの前に出て説得をする。女ギツネはすぐそばで笑っている。ラウルは怯えている。
「なればいいじゃない!」
「目を覚ませ!シフォオオオン!!」
その後、しばらくの間、何故かラウルの姿を見た物は居なかった。だが、シフォンが清々しい顔をして本を読んでいた。