第七話 ギルドの朝会
俺はただいま読書中。あの変な夢の後、すぐに目が覚めて眠れなくなったのだ。多分そろそろ朝日が昇る時間だ。
「ふぅん。ピカチュウって最近‘エレキボール’が使えるようになったんだ」
そして、俺が読んでいる本は【ポケモンの技】と言う本だ。そのまんまだ。あの夢で言われた通り、俺はピカチュウが使える技の範囲をしっかり覚えなくてはならない。
「あれ?ライト?」
後ろから声が聞こえた。振り向いてみるとココアが起きっている所だった。
「おはよ」
「おはよう。何読んでるの?」
ココアは俺の隣に座る。…昨日の事は忘れているようだな。よかったぁ。
「【ポケモンの技】って本」
「あ、そっか。ライトは確か元人間だもんね」
あ、こいつ信じてくれてたんだ。俺てっきり信じてもらえていないかと思ってたよ。
「それにしてもこのギルドに本なんてあったの?」
「ああ。ほら、其処の本棚に」
ココアは俺が指差した方を見る。そして「あ、気付かなかった」と言って本棚の所へと歩いて行き、一冊の本を取って戻ってきた。
「お前も何か読むのか?まだ寝てても大丈夫だと思うけど」
「ううん。今寝ちゃったら寝坊しちゃうよ」
クスクスと笑いながらココアは本を広げる。確かに今寝たら寝坊するな。
「ライトこそ大丈夫なの?目の下に隈ができてるけど」
「ああ。大丈夫。ちょっと早起きし過ぎただけだ」
「そう?」
そう言ってココアは本を読み出した。さて、俺も読むかな。
そう思った瞬間。ココアが思い付いたかのように「あっ」と声を上げた。
「どうした?」
「ライトも見てみなよ」
ココアは窓の方へと歩いて行った。「窓の外に何か見えるのか?」そう言って俺は窓の外を見る。
「うん。後ちょっとだよ」
ココアがそう言った瞬間、急に外が明るくなった。
「わぁ…!」
「おお…!」
俺たちの目線の先には朝日が昇ってきていた。そのとき、俺は何だか少し不思議な気分を味わっていた。なにかとても不思議な気分、だがその理由は分からなかった。
「ね?綺麗でしょ。私が生まれてきた時も朝日が昇った寸前だったらしいよ」
「だから朝日が昇る瞬間が大体分かるとか?」
「多分ね」
そして、しばらく朝日を眺めていると、コンコンとノックがなった。
「は〜い」
と、ココアがドアを開けに行った。ココアがドアを開けると、一人のドゴームが立っていた。
「おお、お前達早起きなんだな。感心感心。さ、もうすぐ朝会が始まるからな。いそげよ」
それだけ言い残してドゴームは去って行く。
「もう朝会みたいだね。二人を起こして行こっか」
「そうだな。初日から遅刻なんて嫌だしな」
そして、俺とココアは二人を起こす。
「ルミア、起きて〜」
「う〜ん。…あれ、もう朝?」
「起きろヘタレ」
「グフゥっ!!」
ココアがルミアを揺すって起こしているのを後目に、俺はラウルを蹴っ飛ばす。
「ごほっ、ごほっ…!。ひ、酷いよ、こんな朝早くから急に蹴り飛ばすなんて…」
「ごめんな、ルミアにやれって言われたんだ」
「何で私!?」
「ほらほら!三人とも!朝会に遅刻するよ!」
「おお!お前達!しっかり早起きしたんだな♪感心感心♪その調子で毎日早起きしてくれよ♪ じゃあ皆揃ったし…。親方様!皆揃いましたよ!」
全員揃ったのを確認すると、トークはプランの部屋をノックして声をかける。そして、しばらく経つとプランが出てきた。
「さて、じゃあ皆!昨日のうちに知っているかもしれないが、新しい弟子が出来た! じゃあ早速お前達。前に出て自己紹介してくれ♪」
そう言われて俺たちは前に出る。
「え〜。『レジェンド』のリーダーのライトだ。よろしく」
拍手が上がる。多分一人一人に拍手をするんだろうな。
「え、っと。ココア・フルートです。よろしくお願いします!」
ココアが頭を下げる。すると俺の時よりも大きな拍手が上がった。畜生!
「ラウル・シーラです!よろしく!」
また拍手が上がる。
「ルミア・ミクルよ。よろしく」
ココアと同じように大きな拍手が上がる。…なんかムカつくな…
「…よし♪じゃあお前達は今晩の食事の時に自己紹介だ♪お前達、戻っていいぞ♪」
トークがそう言うと、周りは「え〜」やら「巫山戯んなよ〜」と声が上がった。それを無視してトークは親方の方を向く。そしてその間に俺たちはもとの場所に戻った。
「親方様。終わりました♪」
…………
「親方様?」
…反応がない。ただの屍のようだ。
すると周りからコソコソと話し声が聞こえてきた。
「相変わらずスゴいよな。うちの親方」
「ええ、本当ですわ。何たって目を開けたまま実は寝てるんですもの」
「でもそんな親方様もお茶目…キャっ♪」
…あ、そう言う事ね。つまり今親方は寝てるんだ。じゃあもしかしたら俺たちの自己紹介聞いてなかったかもな。
「…はい♪有り難いお言葉有り難う御座います♪」
いいのかそれで!?
「じゃあお前達!いつものやるよ!」
…?
「「「「いつもの?」」」」
俺たちは全く同じように首を傾げる。
「「「「「「「「ひとーつ!仕事は絶対さぼらない!」」」」」」」」
「「「「「「「「ふたーつ!脱走したらお仕置きだ!」」」」」」」」
「「「「「「「「みーつ!今日も笑顔で明るいギルド!」」」」」」」」
「じゃあ皆!今日も張り切って行くよ!」
「「「「「「「「おおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!!!」」」」」」」」
大声を上げて他の弟子達は皆持ち場についた。なるほど、これを毎日言えばいいだけな。
「おい、お前達」
トークが声をかけてきた。ラウルが「何?」と返事を返す。
「お前達には早速初仕事をやってもらうよ♪ちょっとついてきてくれ♪」
そう言ってトークは上へと上がって行く。俺たちはそれについて行っていった…
「…お前達にはこれが丁度いいだろう♪」
俺たちは梯子を上がってすぐにある掲示板の前にきた。そして今、トークが俺たちに合う依頼を決めた所だ。ラウルが依頼の紙を受け取り、読み出した。
「え〜と…。初めまして。私はバネブーともうします。ある日、悪者に私の大事な真珠が盗まれたんです!真珠は私にとって命。頭の上に真珠が無いと私、落ち着かなくて、もうなにもできません!そんな時!私の真珠が見つかったとの情報が!どうやら岩場に捨てられてたらしいんですが……その岩場はとても危険なとこらしくて…さらに真珠はその岩場の最奥部の地下七階にあるというのです…。私、怖くてそんな所行けません!ですのでお願いします。誰か岩場に行って真珠を取ってきてくれないでしょうか?探検隊の皆様!お願いします! …だってさ」
「なんだ。簡単じゃないか」
探検隊と行っても案外簡単なんだな。
「じゃあ行くか」
「うん!」
そして俺たちは真珠を取りにギルドを出た。