ダイヤモンドダスト
「はーあぁ」
(未希?どうしたの?)
未希の盛大なため息に、きんが反応した
「だってさー、こんな寒い所、嫌だもん。早く降りたいな」
(それなら、早く☆PEACE☆を見つけよう?)
未希達は今、二手に別れてチーム☆PEACE☆を探している
見つけたら山を降りれることになっていて、もしいなかったら、二時間後に山頂に集まろうということになったのだ
「もし私が見つけても、二時間たたないと、セイにわからないじゃん」
お互いの様子がわからないので、片方が見つけても、もう片方は見つけたかどうかわからない
だから自然と二時間後じゃないと山を降りれないのだ
「セイは寒くないのかな?さっきくしゃみしてたのに、早く降りたいって考えないのかな?」
(それよりも☆PEACE☆が気になるんじゃない?)
「うーん、どうだろう?でも、セイ、なんか、あの人達のことになると、すぐに食いつくよね」
(確かに…、ボクもそれは感じてたよ)
「……………きん、『かえんほうしゃ』」
きんは、未希の横にある木に『かえんほうしゃ』を繰り出した
「ハックション!!ぎん、ブースターになってくれよ…」
(えー、やだよ)
「なんでだよ…」
(だってさ、雪が溶けちゃったら遊べないもん)
「ちぇ、良いだろ?そろそろ他のこと出来んだからさ」
(でも…、バトルは楽しいけど、たまにヒヤヒヤするんだもん)
「そうだよな…、トレーナーよりもポケモンの方が大変だよな…」
(私には星夜の方が大変そうに見えるよ?)
「そんなことないよ、戦う方が大変だろ」
(作戦考えたりする方が大変だよ)
「戦う方が大変だって」
(考える方!)
「戦う方!」
(考える方!)
「戦う方!」
星夜とぎんの言い合いが始まった
その時、星夜の持っているタマゴが光っていたのには、誰も気がつかなかった
「よくわかったわね、私がいること」
「だって、視線感じたもの。私、見られるの嫌いだから」
未希は、少し怒っている様子
「こわーい、性格キツイと、嫌われるわよー?」
「余計なお世話です。さっさと片付けないと、この山降りられないんだから、早く帰ってください」
「私達も早く降りたいわよ。それで、暖かい私達の島に帰りたいわ。そこの本部で、優雅にティータイムしたい…。だから、あなた、負けてくれない?」
女がそう言うと、周りからたくさんの人が集まってきた
全員、手にモンスターボールを構えている
「ここにいるチームメイト全員を倒すのは、無理よ?降参しない?」
「降参するくらいなら、仲間を呼んだ方がマシよ。私も、早く帰れるし、一石二鳥ですね」
「ここから、どうやって仲間を呼ぶの?私達に囲まれてるのよ?」
未希は、スカイのボールを構えた
「敵の事、知っておくべきよ?一緒にいるポケモンとか」
ボールから放たれたスカイは、エスパーの力も借りて、飛んでいった
「スカイ、よろしくねー!」
「あらら…、仲間を呼ぶのね。まぁ良いわ、一人くらい増えたって、変わらないもの」
未希とチーム☆PEACE☆との戦いが始まった
「きん、ごめんね?こんなにたくさん…」
(このくらい、対したことないよ)
対話を終えると、未希ときんは戦い始めた
「戦う方!」
(考える方!)
「絶対戦う方だ!」
(絶対考える方…あれ?)
「どうした?」
ぎんは、急に一点を見つめた
何かを見つけたようだ
星夜もぎんの見ている方を見た
「ん?スカイ?」
未希のところから、スカイが飛んできたのだ
「どうしたんだ?未希達、何か見つけた?」
スカイは、エスパーの力で、星夜に未希達の様子を見せた
「へー、すごい数だな。ぎん、行くか?」
星夜はぎんに問いかけた
(え?逆に行かないの?)
ぎんが不思議そうに聞いた
「どっちでも良いかな?オレが行っても行かなくても、勝てるだろ?」
(未希は早く帰りたいと思うよ?)
スカイが言った
(確かに、未希なら思ってそうね。寒いところ苦手だし)
「うーん、じゃあ行くか」
星夜はそう言って、スカイに案内してもらいながら、歩き出した
「きん、『おにび』!」
きんの出した火は、きんと未希の周りを漂って、火のシールドを作った
「『かえんほうしゃ』!」
きんは、前にいたフローゼルに『かえんほうしゃ』を繰り出した
「『アクアジェット』!」
「きん!危ない!」
きんのわざが相手に決まる前に、相手のフローゼルのわざが、きんに当たった
(ぅぐぅ!)
「きん!大丈夫!?」
未希は倒れたきんに近づき、声をかけた
(大丈夫…、危ないから離れて)
未希はきんから離れた
「(きんだけじゃやっぱりキツイよね…。早く決めないと…)」
「やっぱり無理そうね、強がるのもそこまでにして、早く諦めない?」
「きん!『にほんばれ』から『オーバーヒート』!!」
未希達の戦っている場所だけ、雪が降りそうな寒さから、一気に太陽の近くにいるような暑さになった
その暑さが引く頃には、チーム☆PEACE☆の全員とそのポケモン達は倒れていた
「きん?大丈夫?」
(うん、なんとか…ね)
「いつも以上の火力だったよ」
(火事場の馬鹿力って言うんだよね…。でも、流石にもう戦えないかな)
「大丈夫よ。今のわざで、全員倒れたから」
きんの放ったわざは、普通の『にほんばれ』より、初めが強烈なものだ
それと、『オーバーヒート』を同時に繰り出して、急激な温度変化をしたという訳だ
(!、未希、何か来る…!)
ムオオオオオォォォォォーーー!!!
「何だ!?今の!」
(すごい声ね、なんか、怒ってるみたい)
「早く行った方が良いのか?」
(もし星夜が良い人なら、走って行くところよ?)
「別にオレは良い人なんかじゃないぜ?」
そう良いつつも、星夜達は走って、声の聞こえた方に向かった
(未希、大変だ!逃げないと!)
「うん!きん、ボールに戻って!」
未希はきんをモンスターボールに戻した
ムオオオオオォォォォォーーー!!!
「あのポケモンは…、マンムーね」
(気持ち良く寝てたところを効果抜群に起こされて、それで怒ってるみたいだよ)
「そっかぁ、じゃあ、また眠ってもらえれば良いのかな?」
(そうだね、じゃあ、ボクが『さいみんじゅつ』でもする?)
「無理しない方が良いよ?あんなに戦ったのに、これ以上は…」
そのとき、マンムーが未希の方に『ふぶき』を放った
(危ない!)
きんは、ボールから飛び出して、『まもる』を使った
「きん!ごめんね…」
(大丈夫…!)
きんは大丈夫と言っているが、辛そうにしている
未希は周りを見渡した
「あっ!」
未希が何かを見つけた
見つけたのは『オボンのみ』だった
未希は急いで木の実をとって、きんに食べさせた
「大丈夫?」
(うん。これで、『さいみんじゅつ』出来そうだよ)
「一回で決めないとね」
(うん…、大丈夫!)
マンムーが未希達の方に『とっしん』してきた
「きん、お願い!」
きんはマンムーに『さいみんじゅつ』を繰り出した
きんのわざは、マンムーに当たり、マンムーはその場に倒れて寝てしまった
「ふぅー、良かった」
(危なかったね。こんなバトル、久しぶりだ)
ズドーン!
「今度はなんだ?今の音…」
星夜達は、未希達の近くに来ていた
(どっちかが倒れた音かな?)
「未希達がやられたのか?」
すると、今までなにも言わずに、道案内だけをしていたスカイが騒ぎ出した
(未希達が倒れて、あんな音すると思う?)
「そうだな…」
(未希に言ったら、星夜が倒れちゃうね)
「スカイ、今のはオレ達の秘密な?」
(…うん、わかった)
そのあと、少しすると、未希達が見えてきた
「おーい!」
「あ、セイ!遅いじゃない!」
「そうか?うわ、派手にやったな」
星夜は、周りで倒れているチーム☆PEACE☆を見て言った
「いつもより、すごかったわよ」
「きんもボロボロだもんな。お疲れ」
「それじゃ、早く帰りましょうよ」
「そうだな。次はどこに行くんだ?」
「え?知らないよ?」
「そこに倒れてる奴らから、何も聞かなかったのか?」
「あー、そういえば、早く暖かい私達の島に帰りたいわって言ってたっけ?」
「暖かい島か…」
「そこに、本部もあるみたいよ。今度は、船旅ね」
「そうだな」
星夜達が帰ろうとすると、周りに、キラキラした粉が降っていた
「セイ、これ…」
「細氷…、ダイヤモンドダストだな」
「綺麗…」
細氷の山で、ダイヤモンドダストが起こったのだ
ダイヤモンドダストが多く見られる細氷列島だが、星夜達の住んでいたレジェド島は、比較的温和な気候だったから、ダイヤモンドダストを見るのはこれが初めてだった
「前に、セイが私のキラキラパウダーをこぼしたじゃない?そのときみたいね」
「あの時、大変だったな…。長にはめちゃめちゃ怒られたし」
「懐かしいね」
カタカタ…
「あ、タマゴ…」
カタカタ…
「孵るの!?」
カタカタ…
ピシッ…
「ヒビが入ったぞ!」
ピキッ
バリバリ…
そして、タマゴが光り出した
「生まれた!」
タマゴが孵ったのは、オレンジ色の、尻尾に炎を灯したポケモン、ヒトカゲだった
「ガオー」
「かわいいっ!」
「ヒトカゲだ!」
(かわいいっ!私の弟ねっ!)
(同じ炎のポケモンだ!これで火遊びの相手がまた増えた!)
きんもぎんも喜んでいる
「名前はどうするの?」
「オレンジだから、『レン』だ!よろしくな、レン、オレは星夜で、こっちがぎん!」
(よろしくね、レン)
「初めまして、私は未希で、この子はきんとスカイよ。よろしくね、レン」
(よろしく、火遊びしよう!)
(よろしくね、レン。ボクはスカイっていうんだ)
「ガオー」
レンは、全員を見てから吠えた
しばらくして、ダイヤモンドダストが収まると、星夜達は新しい仲間と一緒に、山を降りた
「また来たいな」
「ダイヤモンドダストは綺麗だったけど、私はもう良いかな」
星夜達の旅は、船旅に変わる
そして、旅の終わりも近づきつつあった