序文
緑あふれる豊かなこの国には、空から海から大地から、そして生き物の心から紡がれたおはなしがあります。中には遠く海の向こうの国から、さざ波や大嵐に揺られてたどり着いたおはなしもあります。おはなしたちがこの国にどれくらいあるのかと言えば、ひとつふたつ、みっつよっつ、ああ、とても手のひらの指だけでは数えきれませんでした。いいえ、手が何本あったって、きっと数えることはできないでしょう。夜空にきらめく星の数ほど、そういったおはなしはあるのですから。
いま、そんな星ほどあるおはなしのひとかけらをここにもらってきました。それはたったひとかけらに過ぎませんが、もしそれがあなたの胸の中できらきらと輝いた日には、おはなしたちもきっと喜ぶことでしょう。
これから話すおはなしは、ずうっとむかしの、そのむかし、とおい時代のおはなしです。